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着ぐるみの着心地はいかが?ロイエド編 前編

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なんとか始まったティッシュ配りだが、なかなか人が近寄って来ない。
確実にこのキャラクターの容姿に問題があると思うのだが…
小学校低学年ぐらいの子供には怖がられ、小学校高学年ぐらいだとキモイの連呼。
だいたい予想はしていたのだが、実際言われると少々ムカつく。
エドはというとムカつきを露にして地団太を踏んでいる。
その拍子に頭部が若干回転し、こちらを向いた。
…あれは俺でもちょっと怖い。

「エッエド、大丈夫か?」

「あんの~くそがき!!ってあれ? 前が見えない!!」

「…顔がこっち向いてるからな。じっとしていろ。」

俺はにゃん子姫の頭を掴み正しい位置に戻す。
エドは前が見えるようになって少し冷静になったかと思うと、今度は落ち込み始めた。

「なんで皆ティッシュ貰ってくれないんだよ…」

「さあな。」

「そうだ!! 体をバンバン叩いてホコリでくしゃみした瞬間にティッシュ!! どうだ!!」

「クビになるぞ。」

「…なんかもうクビでもいい。」

「一理ある。」


二人して逃げ出そうかと考えた瞬間だった。
ロイの目の前にいつの間にか人が立っていた。

その人は大学生ぐらいの男性…
つまりは良い大人なのだが、
瞳をキラキラさせてロイならぬにゃん太王子を見つめていた。
一体何なんだ?と思っていたら、それまで見つめるだけだった男が口を開いた。

「握手しよう!!」

俺が頷く…いや、断るよりも早く男は俺の手を取ってぶんぶん握手をしてきた。
腕が痛い。

そしてそろそろ強引でも何でも離そうと思ったら、
あっけなく手が離れていき、今度はエドならぬにゃん子姫とぶんぶん握手している。
あんなに嬉しそうにしてたくせにあっけなく手を離したこともそうだが、
直接ではないにしろエドに気安く触わる男にイラッとした。
だが、その瞬間男は信じられないことにエドを抱きしめた。



殺す。


俺はエドから無理矢理男をひっぺがして、殺気を向ける。
撫でているかのよう見せかけて力いっぱい拳で脳天をぐりぐりする。
大丈夫。俺は、にゃん太王子はとびきりの笑顔だ。
男の顔は随分と引きつっているがそんなことは知らん。
俺のエドに触れた罰だ。

バンッッッ!!!


背中がジリジリと熱を持つ。
着ぐるみごしにもかかわらずかなり痛い。
その隙に男は逃げて行った。
くそっ・・・


「おい、何やってんだよ。」

「火でも出せたら燃やしてやったのにな。」

「ヤメロ。」


逃げていった男の連れの男がこっちにむかって頭を下げた。

(あれは確か探偵の…)


「ロイ大丈夫か?」

「ん?」

「背中だよ背中、ちょっと強く叩きすぎた。でもロイも悪いんだぞ。」

「あぁ、かなり痛いな。」

「ごっごめん。」

そう言ってエドは俺の横に移動して背中をさすりだした。
エドは時々こうして随分と優しくなる。
少し前まではその度にドキドキとしてしまう心臓に気づかれないように、
怒ったフリや避けたりしたのだが、今はそうする必要がない。
エドと恋人という関係になれたのだから。

確かに世間的にはよろしくはない関係だが、
それでもエドと想いが通じ合ったことだけで満足だった。

「ロイ?」

黙りこんだ俺を心配してエドが下から覗き込んできた。
俺はそのままエドを抱きしめた。

「ロッロイ!!??」

「エドは俺のものだ。」

「・・・ばーか。」

エドが俺の背中をポンポンと叩く。


「もっもういいだろ?離せよ。」

「嫌だ。」

「おっおいロイ、」

「せっかくだ。着ぐるみを最大限利用させてもらう。」

「なっ何考えてんだよ。」

「見ろ。」

「え?」

「ギャラリーが大勢居る。」

「なっなんで!!??」


いつの間にか俺たちを囲むようにギャラリーが大勢居た。