虹の作り方
虹の作り方
聖戦において聖闘士は聖闘士としての役目を果たし、女神は女神としての役目を果たし、地上に平和が訪れた。 冥界の崩壊と女神の奇跡の力によって、本来ならば死者として墓標に名を刻んでいたであろう聖闘士たちも生前の姿で蘇りを果たした。
一様に戸惑いを覚えながらも、日が経つにつれ、騙し騙しではあるのだろうが、各々それなりに現状を受け入れていった。
誰しもがそうだと思っていた。
ところが・・・・。
「・・・・それで、アンタは『はい、そうですか』とあっさり引き下がったワケ?」
渋い顔をしながら端整な横顔の男を睨みつける。厭味なほどに思慮深くて上品な横顔に拳の一つでもくれてやりたくなるくらいだった。
「仕方あるまい。彼がそう望んでいるのだから。アテナもお許しになられたことだ。既に聖衣も返上されている。もう決まったことだ、デスマスクよ」
タンと書類をまとめるとサガは深い溜息を一つついて椅子から立ち上がった。
「教皇も・・・これ以上の関わりは持つなと仰せだ。おまえも―――」
サガの行く手を立ち塞ぐようにダンと机に手を叩きつけ、下から威圧するように睨むが、まったくといっていいほどサガの顔色に変化は見られなかった。
「納得しろってか?わりぃけどよ・・・・俺はアンタと違って、物分りが悪いのが取り柄でな。仮にも一時は教皇として聖闘士の頂点に立っていたアンタがアイツをあっさり手放すとは思いもしなかったぜ。・・・正直、見損なったよ」
「・・・好きに思うがいい」
「ああそうだな!」
半ばやけっぱちの捨て台詞を吐きながら、デスマスクはサガの部屋を後にした。