虹の作り方
最初は何の冗談かと思っていた。
皆、新たな生の中で戸惑ってはいた。
その中で一番現状を受け入れ、達観していそうだったアイツが、実は人一倍受け入れることができず、人知れず苦しんでいたなどとは思いもよらなかったことだ。
プライドの高いあの男は誰にも相談などできず、一人悶々と抱え込んでいたのだろうと今なら思える。
死の覚悟が出来ていた分、今回のような不測の事態に彼の思考がついていけなかったのだろうか。俺なら第二の青春を満喫しようと思うのだが・・・。
「ま、あいつは昔から人並外れた思考回路だから、俺にわかるわけもないがな・・・」
ふぅと勢いよく出した紫煙をぼんやり見つめる。
同年代の者たちの反応もあっさりしたもので、デスマスクからすれば本当に仲間か?と疑いたくなるような冷たい反応であったのも気に入らない。
それだけの人間関係でしかなかったのかもしれないけれど、もし、アフロディーテやシュラが黄金聖闘士を辞めるなどというようなことがあれば殴りつけてでも阻止するだろうと思う。
逆に自分自身が辞めるといえば彼らも同様に引きとめようとするだろう。
生死を共に戦ってきた仲間だから。
かけがえのない友だから。
20歳組はそういった点では仲間意識がやや希薄なのかもしれない。
相手がアイツだから?
違うな・・・ムウにしてもアイオリアにしてもあいつら20歳組はたぶん引き止めるようなことはしないだろう。
「ドライな関係だな・・・」
「なにを人の宮の前でブツブツ言ってるんです?気持ちの悪い」
「―――気持ち悪くて、悪かったな」
両手に荷物を抱えたムウが呆れたようにデスマスクに声をかけた。
「なぁ、ムウ。おまえはあいつのことどう思ってるんだよ」
階段でゲシゲシとタバコを押し付けて消すと、デスマスクはひょいと立ち上がった。