虹の作り方
「お久しぶりですね・・・随分アカ抜けて・・というより、人間っぽくなりましたね」
「人間っぽいって・・・どういう表現だよ・・・」
まるでシャカが化け物かなんかだと思っていたのだろうかとデスマスクは思う。
「だって、“人間になりたーい!”って出て行ったんですから、妖怪人間みたいなもんじゃないですか」
「・・・・それ、たぶん間違っていると思うが。人間になりたいじゃなくて、聖闘士辞めたい、だろ?」
「似たようなもんです」
はぁ、然様ですか・・・と脱力しながら、とりあえず『荷物』を指定位置に運ぶ。
「おお、来た来た。早かったな。蟹さんマークの宅配サービスさん」
にこにこと出迎えたアフロディーテが軽口を叩くのにデスマスクも調子を合わせる。
「迅速・確実・安全が当社のモットーですから、お客人」
―――ところが。
「・・・・どこが安全なのかね?その減らず口を聞けなくしてやろうか?」
どうやらシャカはお目覚めになったらしく、物凄い妖気を放っていた。あながち、ムウが言っていたことは間違っていなかったようだ・・・と思いながら冷や汗をダラダラとかくデスマスクである。
「あは〜〜;お目覚めになりましたか、おシャカ様・・・うごっ!」
「うあっ!」
ドゴっと今度は首筋に肘鉄をくらったデスマスクはシャカを抱えたまま、前のめりになって床に沈んだ。当然の結果シャカは道連れとなり、強かに後頭部を打って、再び星を飛ばしていた。
あまりの間抜けっぷりに、呆れたようにムウとアフロディーテは顔を見合わせると「はぁ・・・」と深い溜息をついた。
「まったく・・・何してんですかね、このコンビは」
「いいんじゃないか?ボケボケで。とりあえずムウ、念力で二人を運んでくれよ」
「エーーーっ!?」
「“エーーー”じゃない、“エー”じゃ!」
「仕方ないですねぇ・・・もう。面倒ったらありゃしません」
ぶつぶつ文句を言いながら、ヒョイとシャカを宙にプカプカと浮かすと、デスマスクはそのまま突っ伏した状態でズルズルと引き摺るようにして運んでいくムウである。
その扱いの差に「デスマスク・・・顔面、終わったな・・・」といささか憐憫の情を見せながら、アフロディーテは呟いた。