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拾う大人、拾われる子供

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 戸惑った様な、驚いた様な、困惑した様な────様々な感情が内包された表情と、声。
 鬼道はそれに気付かぬフリで。
「取り敢えず家着いたら添い寝したるからなー」
「いらんわぁぁーーーっっ!!!」
 本気なんだかなんなんだか、のほほんとした鬼道の言葉に横島はまたもや絶叫。
 しかしふと、声を潜めて。
「………知らねーぞ、どーなっても」
「………どーなるんや?」
「俺はガキの我侭全開にするぞ!!」
「あー、お手柔らかになー」
「………甘えっぞ!!聞き分けの無いお子様の如く!!」
「あー、大変そうやなー」
「本気にしてねーなっ!?俺はタチ悪いぞっ!?小狡い手も得意だっ!!」
「そろそろ着くでー」
「聞けーーーっ!!」
 そんなこんなやってる間に到着。
 ぶーたれていた横島を降ろして、頭を撫でる。
「…まぁ、横島が本気で嫌なら、無理強いはせんよ。…で、どーする?」
「………此処まで連れて来てそゆコト言う?」
 優しく問い掛けてくる鬼道に、呆れた様にそう返して。
「………知らねーからな、本当に…。どーなっても。………文句言うんじゃねーぞっ!?」
「解っとるよ」
 顔を赤くしながらの横島の言葉に、鬼道は相変わらず優しげに微笑って。
「………ところで、布団一組しかないから、必然的に二人で一緒に寝る事になるんやけど………構わんよな?」
「強制的に添い寝決定ーーー!?」


 ──────とにもかくにも、拾われた横島と、拾った鬼道だったが。


「何が悲しくて男と一緒に寝なあかんのじゃーーーっ!!」
「ん~………子供やから?」
「理由になってないッ!?」


 ………取り敢えず、前途多難であるらしい。
 だが──────


「ん~………まぁ、ええやないか。ボクも幼少時代は家出て行く前の母さんに添い寝してもらってたで?………もう遠い記憶やけど」
「いつだよそれは!?」
「………おやすみー」
「逃げたぁ!!」
「…えーから寝ぇや。ほら、ねんねん」
「………いや、子守唄は勘弁して下さい………頭撫でるのもやめて下さい………」
「なんや、我侭全開で甘えるんやろー?」
「………鬼道、結構性格悪いのな………」
「むぅ、心外やなぁ」
「………でも、ま、いいや。………甘やかされてやる………」
「………そうか。ほな、おやすみ」
「おやすみー………」


 ………結局の所。
 そこには、穏やかな表情で眠る横島と、それを優しげに見守る鬼道の姿があるのだから。


「………いつか、ちゃんと………笑えると、ええなぁ………」


 これはこれで、幸せの第一歩なのだろう。