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【ヘタリア・仏&加】イヨマンテ(魂送り)

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 カナダの使う完璧なフランス語に軽い苛立ちを覚えながらも、イギリスはそれに素直に従う。
 案内された大聖堂の内観も既に完成しており、そこは壮大且つ色とりどりの、天井部は濃い青色と金色の星で装飾された、イギリスも息を飲むような出来だった。
 神聖な場所は青、空色、赤、紫、銀、金色といった多色の彩飾が施され、室内であるのにそれらは宇宙を見ているかのような神秘が広がっている。そして窓からはステンドグラスの鮮やかな色彩が、光線のように内部に入り込み照らしている。
 カナダはにこにことイギリスを見た。そして、ゆっくりと歌い始めた。
 音楽は言語を、国の境を越える。その歌はフランス語ではなく、イギリスが初めて耳にする言語だった。イギリスは直ぐに、その言葉はカナダ独自の言葉だと理解した。
 カナダは歌いながら見上げるように喉をそらすと、その歌声をこの濃い青色と金色の星々の天へと拡げる。それはまるで夜空の星々へとその歌を捧げているようだった。
 感嘆した思いでイギリスも天井を見上げれば、そこには光球が遠くに近くにと、無数にふわふわと漂っていた。
「これは……!」
 イギリスは驚きと共にこの“大聖堂”の意味を理解する。
 ――これは、無にすることはできない。ここは、この大地の精霊が静かに眠り憩う場所だ。
 イギリスの心を理解したのか、光球の一つがふわとイギリスの傍に近寄る。イギリスは微笑みをもって、その光球に手を差し伸べる。ティンクも姿を現して、その光球と一緒にくるくると回り出す。
“負けね、イギリス。この大地はもうフランスのものになってる。頑張ればこの子供はイギリス風に成長するだろうけど、根本ではフランスの事を忘れないわ。”
「わざわざ言わなくてもわかってるっつーの。」
 イギリスの胸には、爽快な敗北感が漂っている。この聖堂内には、無数の光が散らばり、その全てがカナダとイギリスと、この聖堂内のみならずこの大地に立つ生命の全てを祝福し感謝するように、漂っている。
 カナダは歌い終わり、最後にフランス語を“ジュテーム”と付け加えた。イギリスはカナダを抱き上げると、その小さな唇にキスをする。
「!?」
「あぁ、そうだな、ジュテームだ。悔しいけど、この場所でのこの気持ちを表すには、その言葉が一番いい。」
 イギリスは覚束ない唇でその言葉をカナダに囁く。カナダは戸惑いながらも、もう一度その言葉を、この建物を贈ってくれたその人を思い出しながら呟いた。