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魔法少女ほむら☆マギカ -その後の世界-

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 青白く輝く光はいつしか、桃色の柔らかな、全てを包み込むような光へと変化していた。その光の中に、倒れたさやかを抱きとめる、可憐な表情を見せる、髪を短くツインテールにした、少女の姿が映る。その髪を留めているものは、赤い、そして可愛らしいリボン。
 『それじゃあ、またね。ほむらちゃん。』
 唐突に現れた少女はほむらに向けてそう言った。懐かしい、そして温かな笑顔を見せながら。そうしてそのまま、少女は桃色の光と共に消えてゆく。いや、帰ってゆく?
 「おい、さやかは、さやかはどうした!」
 光と共に魔獣が消え去った後で、杏子がそう叫んだ。その言葉にほむらは夢から覚めた様子で、驚きのままで瞳を見開く。
 「逝ってしまったわ・・円環の理に導かれて・・。」
 杏子を宥めるというよりは、自分自身を納得させるように、マミがそう答えた。その言葉を耳に受け止めながら、ほむらは震える手で、ポケットに収めていた赤い、二つのリボンを取り出した。そのまま、そのリボンを掌の上に流すように載せて、眺める。先程の、あの少女は。あの桃色の光に包まれた少女は。

 思い出した。

 やっと、思い出した。
 まどか。鹿目、まどか。私の親友。一番大切な人。何度も何度もまどかを失って、何度も何度も、左腕に装備していた時を操る盾を用いて、時間を繰り返して、それでも守れなくて。何度も泣いて、何度も慰めあって、それでもどうにか、僅かに残された可能性を求めて戦い続けたことを。そして、まどかが彼女の願いを叶えたことを。
 『全ての魔女を、生まれる前に消滅させる。』
 そう、まどかは自らの望みを叶えた。自らの肉体と引き換えに。そして、まどかを知るものの記憶と引き換えに。だけど。まどかは言った。
 『ほんの少しなら、本当の奇跡が起こるかもしれない。』
 その奇跡が、漸く、起こった。
 私、思い出したよ、まどか。
 気付けば、ほむらの瞳から大粒の涙が流れていた。止まることなく流れる涙を拭うことも忘れて、ほむらはただ、堪え切れなくなった様子で、声を漏らした。搾り出すように、喉を震わせながら。
 「まどか・・。」
 「ほむらさん?」
 マミが不思議そうな口調で、そう訊ねた。続けて、杏子が首を傾げながら、続ける。
 「まどかって、誰だ?」
 分かっている。皆、まどかのことは覚えていない。でも、私は覚えている。まどかのことを。
 「大丈夫、なんでも、ないわ。」
 声を震わせながら、ほむらは小さく、それだけを答えた。そして、願う。この世界のどこかに、必ず存在しているまどかに向かって。
 まどか、貴女の言ったとおり。本当の奇跡が起きたわ。私、貴女のこと、ずっと忘れない。だって、約束したから。まどかのことを、ずっと、ずっと忘れないって。だから、この身が滅びた時、また貴女と巡り会うまでは、決して、忘れない。
 だから、これからも私のことを見守っていてね、まどか・・。


魔法少女ほむら☆マギカ -その後の世界ー