はじめてついた嘘に君は怒らず泣きました
手に伝わったシャツの下の感触を質せば、相手はただいつものように軽快に笑いながらドアを開け、肩越しに「あばらをちょっとな」と手を振った。
「ちょっと!?ちがうでしょ!それ、『ちょっと安静』にしないといけないってことでしょ?こらあ!!ささがわあ!!戻りなさい!リョウヘイさあん!!」
楽しげな笑い声が聞こえなくなったころ、一人になった病室で、顔の火照りと、動悸を覚える。
あのときを一気に思い起こし、加えて先ほどまでの会話も思い出せば、どうにも耐えられなくて、布団を頭からかぶってしまう。
――― この、胸のさわぎよう・・・まさか・・
「・・・・兄弟で、もっていかれるって・・・・おれ、どうなの・・・?」
嘘みたいな、はなし ―――――。
作品名:はじめてついた嘘に君は怒らず泣きました 作家名:シチ