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【けいおん!続編】 水の螺旋 (第四章 / 真理) ・下

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「つまり、あなたはこの研究を、布教のために利用していたワケだ」
「君は何が云いたいのかな」
 石山は急に真面目な顔になった。
「余計なものには興味を示さない方がいい。君は思考力もあるし、実験センスもある。だが、まだまだ一介の学生であるということを忘れないほうがいいよ。私がその気になれば、君のような学生など、大学から追い出してやることも可能なんだ。それに、君は頭はいいが、社会性に大きな問題のある人間だ。そんな人間がこの世界から追い出されたとき、果たしてどうやって生きていくのかな」
「どういうことですか」
 凜が険しい表情になった。ふたりはしばらくの間、睨み合うような形になった。しかし、すぐに石山はフッと笑った。
「安心したまえ。今のところそんなつもりはない。こちらとしても、優秀な学生を失うのは惜しいからね。ああ、あとひとつ、誤解されるのも心外なので云っておくが、私の興味は飽くまで真理を科学的な視点で追求することにある。宗教の中に身を置いているのは、たまたまそこで興味深そうなテーマが見つかったからだ。決して信者を増やして私腹を肥やそうなどと考えているワケではない。…まあ、私腹を肥やそうとしている人間は、別にいるようだがね」
 凜は石山を睨んだまま黙っていたが、石山は平然とした顔でいる。
「あ、そういえば君、僕に何か用事があったんじゃないの」
「いえ、もういいです」
 凜は踵を返し、教授室を出て行こうとした。凜がドアノブに手をかけた時、石山は再び凜に話しかけた。
「そうだ賭里須くん。君にはまたフィールドワークに出てもらう必要がありそうだ」
 凜は一瞬動きを止め、石山を振り返った。
「フィールドワーク…。どこへ」
「もちろん精神世界へだよ。二葉のやつ、最近何だか様子がおかしい。今回も私に無断で緊急集会を催すみたいだし、何かよからぬことを企てているのかも知れない」
「それを僕に調査しろと?」
「まあ、ね。彼が教団で何をしようと大した興味じゃないが、もしそれが私の進む道を妨げるものであれば、阻止する必要があるからね。やってくれるかな」
「もし嫌だったとしても、眠れば自然に夢に出てきますから」
「そうだね。まぁ、よろしく頼むよ」
 凜は部屋を出た。廊下を歩きながら、彼はポケットから携帯電話を取り出し、電話をかけた。
(もしもし、凜くん?どうしたの)
 受話器ごしに聞こえてきたのは、唯の声だ。いつも通りの、少し気の抜けたような声。
「唯、今夜、また一緒に飛ぶぞ」
(えっ、またデータとるの?)
「いや、今回はちょっとした調査をしたい。詳しくは、会って話そう。夕方5時に、『プレシャス・ブレイク』でいいか」
 凜がそう云った時、受話器から「ふわぁぁぁ」という間の抜けた声が聞こえてきた。唯が大きなあくびをしたのだ。
「どうした?」
(いやぁ、昨日寝てないから、眠くて眠くて…)
「そうか。なら今のうちにしっかり寝て、5時までには頭をスッキリさせておけ」
 そう云って、凜は電話を切った。