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ファーストネイション(北米兄弟)

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 走り抜ける間、ふくらはぎを蹴られたりして、足を取られそうになったが、ぽこぽことする殴りは、時折びっくりするような重たい一発が入る他は、想定通りの子供の駄々っ子ぱんちだった。イギリスはそれを難なく走り抜けたが、走り終わっても、髪をずっと引っ張り続ける何かがある。
 イラッと来てそれを鷲掴めば、それは自分トコの妖精、ティンカーベルだった。
「……お前は、何ドサクサに紛れてやってんだ!!」
 イギリスの怒鳴り付けにもティンクはものともせず、アカンベをして、するりとその手からすり抜ける。
「なーによ! 一緒にアーサーを鍛えていただけでしょ!」
「……もしかして、時折マジ殴りしてたのは、俺ん所のか!?」
 イギリスが呆れて叫べば、わざとらしい口笛が、精霊達から吹き上がる。
「お前らなぁ!」
 先ほどの走りぬけとは違うマジ走りで、イギリスは自分とこの精霊達を追いかける。その光景にカナダはくすくすと笑って、自分の大地の動物達にも笑いかけた。
 一通り走り終わった後、イギリスは精霊達と共にカナダの元へと戻ってきた。
「あー、最後で予想外の運動をしたが、とりあえずお前んちに入って、茶でも飲むか。今回は茶葉だけじゃなく、ティーセットも持ってきてるぜ。」
 カナダははぁいと返事をする。カナダの家に向かう道すがら、先ほど自分達がしていたのと同じ事をする動物達に出くわした。
「……この鍛え方、お前んトコで今流行ってるのか?」
 イギリスの質問にカナダはにっこりと大きく頷く。
「はい、最初は僕だけが皆に頼んで行っていたのですが、それを見た動物達の間に広まったようです。そしてこれは“儀式”になりました。彼らの間では、身体を鍛えるためよりも、他所からの新しい命を受け入れるかどうか、の審査の為に使われています。」
 カナダの言葉にイギリスはぴくりと反応する。“儀式”として思い浮かぶのは、アメリカで行われていたタバコや麻薬作用のあるサボテンの実を使った、危険なものだ。しかしカナダのそれは、それらを全く使用しない、一見遊びとも取れるものだ。……先にフランスの教育を少しながらも受けていた事を思い出し、文化を“儀式”と呼んでいるのだろうと考えを落ち着ける。
 文化というのは、その大地の性格と容姿を形作るもので、何が根付き、どう育つのかは、教育が少しは影響するが、強制はきない。ムリに強制しては、一晩で一変してしまうのも、イギリスは充分に知っている。
 できるだけカナダの気を害しないよう、イギリスはやんわりとそれを聞き込む。
「他所からの新しい命?」
 アメリカからだろうな。とイギリスは思う。去年二人は知り合い、行き来を始めたのだから、それに伴い動物達も移動を始めるのは、自然なことだ。
「はい。丁度去年辺りから、この大陸では見ない動物達が増えたんです。その処遇について話し合った末に、この儀式を行う事になりました。……この大地は雪が深く、冬も長い。ですから、それを乗り越えるだけの体力があるかどうかを、これで試して、生き残った生物だけを、受け入れる事にしたんです。」
 “これ、大概の生き物が耐えられるだろ。こんながばがばな受け入れ方法じゃ、お前んとこの生態系狂わねぇか?”とイギリスは思ったが、口にはしなかった。
 ただカナダの頭をくしゃっと撫でて、忠告だけをしておく。
「体力も大事だが、もっと中身を、友達になる生き物は選んだほうがいいぞ?」
 カナダは軽く首を縦に振る。
「痛さを知ったものは、他へそれをしなくなります。僕達は、ただ自然から生き残る強ささえあれば、いいんです。お互いを食い合う事はありません。」
 カナダのにこ、と笑うその顔は、イギリスが初めてみる、“大人びた”表情だった。
 しかしすぐにえへへと、カナダはいつもの子供らしい笑顔を浮かべる。
「今日もホットケーキがあるんです、イギリスさんの紅茶で食べましょう?」
 イギリスはわずかに頷くと、カナダを抱えて肩に乗せた。と、子グマがぴんぴんと、イギリスのズボンの裾を引っ張っていた。
「おお悪ぃ。」
 イギリスは子グマを反対の肩に乗せる。
「いぎりす、かなだガ鍛エルトイウ事ハ、コノ大地ガ鍛エルトイウ事ダ。コノ大地ノ冬ハ、モット厳シクナルゾ。……ソノ厳シイ冬ヲ乗リ越エラレルモノダケガ、コノ大地ニ根付ク資格ノアルモノダ。」
 イギリスはじっと子グマを見た後、“カナダがそれでいいんなら、いいんじゃね。カナダがそれを選択したんだ。”とカナダの家へ向かって歩き出した。


 この儀式、鍛え方は、新しい動物達がこちらに流れてくるのと似た時期。つまり、アメリカと知り合ってから生まれたという事に、イギリスは気付いてはいなかった。