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【けいおん!続編】 水の螺旋 (第五章) ・上

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 その頃、憂と純はライブハウスの外で通行人にライブのチケットを配っていた。本来は、チケットを購入してもらわなければいけないが、今はひとりでも多くの観客が欲しいという気持ちがあり、彼女たちはまるでティッシュでも配るかのように、無料でチケットを配布しようとしているのである。とはいえ、渡そうとしても素通りしていく人が多く、仮に受け取ってくれたとしても実際に中に入ってくれる人は今のところいない。
「ライブいかがっすかぁ~」
 純が顔一面に愛想笑いを浮かべて、通行人の男性にチケットを差し出した。ところが、その男性はまったく無視、といった風で通り過ぎて行った。男性が通り過ぎた後、純は肩を落として、ぶすっとした表情で男性の後ろ姿を睨みつけた。
 そこへ、「調子どう?」と云って、梓が駆け寄ってきた。「あ、梓ちゃん」と憂が応答する。
「ねぇ、こんなことして、本当に意味があるの?」
 相変わらず憮然とした表情で、純は梓に訊いた。
「危ないところを助けてもらったんだから、文句云わずにやる!」
 梓は少し厳しい口調で云った。
「そりゃあ、あの集会に行こうとしてたのを止めてくれましたから。…てか、あの宗教ってそんなヤバいものだったの?」
「うん。今日行ってたら、純ちゃんどうなってたか分からないよ」
 純の問いに憂が真摯に答えた。
 事実、純は大学の先輩に、コスモライフ教の集会に誘われていた。純は宗教自体に興味はなく、入信する気もなかったが集会が面白そうだという理由で参加しようと考えていた。ところが当日の昼、外出した際に憂と梓にばったり出くわし、その話をしたところふたりにものすごい勢いで止められ、その流れでライブハウスまで連れてこられて、現在に至るのである。
「でもさぁ、こんなところでチケット配っても、誰も受け取ってくれないじゃん。他に何か方法はないんですかぁ!?」
 純は駄々をこねるようにわめいてみせた。
「どうしたらいいのか、自分も考えなよ」
 梓が少し苛立ったふうで云った。
 そこへ、さわ子が自分の軽音部時代の仲間を連れてやって来た。
「みんな連れて応援しに来たわよ。もし、あなたたちで盛り上がり足りないようだったら、私たちをステージにあげてくれてもいいわよ。絶対盛り上げてみせるから」
「先生たちのデスメタチックな音楽じゃ、バンドの路線がまるっきり変わっちゃいますよ」
 さわ子の言葉に、梓が皮肉っぽく答えた。
「その意気だよ」とさわ子の友人である川口紀美は梓に向かって云った。彼女は続けて「もししくじったら、分かってんでしょうねぇ」とドスのきいた声を出し、そして高らかに笑った。彼女の脅しじみた発言は、いつものことであるので、梓は慣れっこだ。
「頑張ってね」とさわ子は云って、彼女たちはライブハウスのある建物へと入って行った。
 さわ子たちが入って行ったのを見届けてから、憂が梓に訊いた。
「梓ちゃん、練習はもういいの」
「今さらやったって一緒だよ。それに、こうしてた方が気も楽だから」
 梓はそうは云っても、やはり本番のことが気掛かりなようで、ズボンのポケットから携帯電話を取り出し、開いて時計を見た。他の出演バンドの出演時間の押しや巻きの関係で前後することはあるものの、予定の出演時間まではあと50分と迫っていた。