ウォルターのいたずら
「そういえば……四番が戻ってきているよ」
書類から顔を上げたカルロが穏やかな笑みを向けてそう告げる。
報告だの確認だの雑談だの、いろいろな用事でカルロの元に足を運んでいたウォルターは、けだるげに突っ立っていたが、その言葉にキラリと目を輝かせた。
「四番……アンディか」
ニヤリとした笑みが口元に浮かぶ。その笑みは、いたずらを思いついた悪ガキそっくりだったので、カルロは困ったような苦笑を返した。
「あんまりいじめてくれるなよ。大切な仲間なんだから。RRの」
「わかってるって。ってか、いじめちゃいねぇよ。大切な弟分を可愛がってるだけだって」
「……なら、いいけどな。頼むから、面倒事を起こさないように。仲間内のもめ事はご免だよ」
パタンと勢いよくファイルを叩き合わせてしまって、カルロはふうとため息を吐く。
四番はいちばん問題アリで、その問題とは、二番のウォルターに関してよりもいくぶん繊細なものなのだ。どのような干渉の仕方がいい方向に働くか悪い方向に働くか、まったくわからない。まだつかめていない。
「大丈夫だって」
わかっているのかいないのか、ウォルターは軽く返して、楽しそうに笑って部屋を出ていく。
後に残されたカルロは、『やれやれ』ともう一度ため息を吐いた。だが、その口元にはやさしい笑みがあった。
作品名:ウォルターのいたずら 作家名:野村弥広