幼かった、あの頃。
ゆっくり、ゆっくり。
まるで何かの儀式かのように、ハニーブロンドの少年は厳かに掌を開く。すると、森の草木をぎゅっと詰め込んだような光が、その小さな掌から浮かび上がってきた。
きらきらと輝きながら浮かぶ石と、二対の瞳。
どうだ、綺麗だろ!
ハニーブロンドの少年が、誇らしそうに話す。
この緑のやつは、なかなか見れないんだ。
少年はあの緑の石を見せたかったらしく、目的を果たせてほっとした様子だった。そのせいか、少年の口から言葉が次々と紡がれる。
ここはフランスにも見せたことがないんだ。
その言葉に、ショコラの少年は驚いた。
フランスにも?
ここはとっておきの秘密の場所だからな。
じゃあ、なんで俺を連れてきたん?
ショコラの少年の言葉に、ハニーブロンドの少年は満面の笑みを浮かべて答えた。
一緒だから。
少年が“一緒”だというその瞳を輝かせ、答える。
だから、お前と見たかったんだ。
興奮しているのか、ハニーブロンドの少年の言葉には大事な部分が欠けてしまっている。けれども、それだけで十分に伝わったのかショコラの少年は少しだけ頬を染めて笑った。
おおきに。
小さな秘密を共有した二人は、それから暫くドームの中で時間を過ごした。二人のまわりを薔薇色の石が漂う。
少年たちの瞳と同じ色をした石は薔薇色の石とぶつかり、小さな音を立てて消えた。