ジェラシーの行方2
<三日目>
「僕一人に任せてくださいと言いましたよね?」
だめだ、止まらないっ!
こんなに責める事はないのに・・・・・・
激しく言い募る僕に、虎徹さんはそれこそ尻尾を丸めて「やっぱり心配で・・・」と、小さくそれは申し訳なさそうに呟いている。
なんてことだ、今にも泣き出しそうだ。
ああ・・・っ!慰めたい。
けれどつい黙っていられず、
「どうして・・・、どうして僕を信じてくれないんですかっ!」
とか、気持ちと台詞が相変わらず反比例だ。
ただでさえ失敗に打ちひしがれた虎徹さんを、さらにブロークンハートしてどうする。
だいたい、元はと言えば虎徹さんの前で何度も暴走した自分も悪いのだ。
実際、両親の事となると冷静でいられないのは事実である。
今回はたまたまPDAの存在に気がついて、却って冷静になったが実際あそこでジェイクが出て来ていたらどうなっていたかなんてわかりはしない。
なのに、僕は全部おじさんのせいにしようとしている。
「自分の事を信じてくれないような人を、信じることはできません」
とどめとばかりに、ぴしゃりと言い放つ。
信じようとしてたのに、と言い訳めいたことを言って。
まったくもって言い訳だ。
だって今まで僕は「信じてない」「頼らない」「あてにしない」と言い切っていたではないか。
なのに実際は、こうして裏切られたと癇癪を起して嘆く。
信じてなかったのなら、こんな風に怒るわけはない。
あの場面でおじさんに信じてくれなんて言うわけもない。
僕はいつも心のどこかで信じているし、頼っているのだ。
わかっていても憤りを抑えられない。
僕はバカだ・・・・・・っ!
睨みつけていた虎徹から目を逸らすと、僕はどうしようもない心の動揺を隠すためにその場から逃げ出した。
背中には、いつまでも虎徹さんの視線を感じる。
でも止まるわけにはいかなかった。
またどんな暴言を吐いてしまうかわからない。
これ以上、ちぐはぐな行動に苦しみたくない。
虎徹がどんな顔でこちらをみているのか手に取るようにわかった。
きっと自分自身をコテンパンに責めているのだろう。
取り返しのつかないことをしたのだと、しおしおと項垂れているに違いない。
どうしても歯車がかみ合わない。
僕はいつも自分が傷ついた分、相手にも同じだけの傷を負わせたいと思っているのかもしれない。
気の毒なおじさんにあたり散らして、僕は精神の均衡を保っているのだろうか?
ネイサンの言っていたのはもしかしたら、このことだったのか。
ある意味、僕はおじさんを誰よりも信じて、頼りきってる?
一人になると、冷静な思考が蘇ってきた。
虎徹さんは誰にでも優しいから?
それも少し違う気がする。
確かにお人好しで誰にでも公平に親切で・・・おせっかいとも言うけれど、わけ隔てがないように思う。
なんというかそういうポジションにいる、というせいもあるのかもしれない。
ベテランとして、先輩として、父親として、年上として・・・・・・
はっきり言って彼の性格では、そのどれもがしっかりとこなせてない気がするけれど、そうであろうとしているのは見てとれる。
もっぱら空回りぎみだけれど。
元来の虎徹のスタイルは甘やかされる側のような気がした。
実際、ネイサンやアントニオと居る時は、虎徹は結構わがままに振舞っている。
それがひどく自然で。
そういえば、虎徹さんには兄がいると言っていた。
ならばがっつり弟属性ではないか。
しかも、愛されて育ちました。と身体全体から甘えん坊オーラが出ている。
そうか、そういうことか。
僕はどこかで、虎徹さんを羨ましく思っていたのだ。
素直に甘える術を持ち、愛されることを当然のように受け入れることのできる彼を。
眩しくて直視できなかったのかもしれない。
それでいつも横を向いていた。
言葉をそのまま受け止められなかった。
僕は貴方のようになんの苦労もなく生きてはいないのだ、と斜に構えていたのかもしれない。
確かに彼は僕のように両親を目の前で亡くしてはいないし、その悲しみを共有できるはずもない。
けれど、彼だって5年前に妻を亡くしたといっていた。
若くして亡くなった奥さんとの別れが辛くなかったわけはないだろうし、その本当の悲しみだって僕にわかりっこないのだ。
今も左手の薬指に輝く指輪がまだ彼女のことを想っている証だろう。
けれど、虎徹さんがその悲しみを僕にぶつけることはない。
なぜなら僕が年下であり、後輩だから・・・・・・
僕が、彼にとって守られる側の立場である限り、その枠から脱出できないのだろう。
本当の意味で相棒になりたい。
対等な立場に立つには、年下や後輩の枠から飛び出さなくてはならないのだ。
僕は、よりによって反発ばかりする手の焼ける後輩そのものだ。
こういうスタイルできてしまった手前、そう簡単に態度を改めるのは難しいかもしれない。
でも、機会があれば逃さず変わる。
そうだ・・・、
変わってみせる。
必ず対等な相棒になってやる。
そしていずれは・・・っ!
扱いにくいけれど可愛い後輩が、よもや壮大な野望を打ち立てたとは露とも知らない虎徹は、その頃、次に戦うバーナビーを思って老体に鞭打ちジェイクの弱点を探そうと躍起になっていた。
一瞬、ゾクっと身ぶるいして躓けたのが後に勝利のきっかけになったのは、果たして神様の気まぐれだったのか・・・・・・
ともかくバーナビーは、虎徹が奮戦しているであろうジェイク戦を観戦すべく皆のいるモニタールームへと足を運んだ。
その前に戦ったスカイハイとロックバイソンがコテンコテンにのされたので少し心配になったからでもあった。
あんまり無茶をしてないといいけど・・・・・・
さっきたくさん責めてしまったから、変な責任を感じて無謀な事でもしてたら、僕はきっと自分が許せない。
おじさん、どうかあまり頑張り過ぎないでください。
今度こそ、僕はあなたに頼られるような相棒になってみせますから。
今度こそ、絶対です。
<4日目>
虎徹のジェイク戦はある意味、バーナビーの心配通りの展開になっていた。
能力が切れているにも関わらず、躍起になってジェイクに挑んでいる。
常人より鍛えていると言っても生身の人間なのだ。あんな無茶をしたら身体がどうにかなってしまう。
やっぱり心配になって見にきたんだ、と皆に言われ相変わらず僕はへそ曲がりなことを言ってしまったが、痛々しくて見ていられない。
ああ・・・、虎徹さん、もういいです。
あとは僕がやります。
これはもともと僕の戦いだ。
虎徹さんがこれ以上傷つくことはないんです。
いつも憎たらしいことばっかり言って、おじさんを罵って、蔑ろにしているのに。
たぶん虎徹がここまで粘るのは、次に戦うバーナビーの為だろう。
どうしてあの人は・・・、
けれど、それが虎徹さんという人だ。
バーナビーは意を決して戦いの準備の為、部屋を出た。
どんなにがんばっても虎徹さんは負けてしまうだろう。
次は、自分の番だ。
「僕一人に任せてくださいと言いましたよね?」
だめだ、止まらないっ!
こんなに責める事はないのに・・・・・・
激しく言い募る僕に、虎徹さんはそれこそ尻尾を丸めて「やっぱり心配で・・・」と、小さくそれは申し訳なさそうに呟いている。
なんてことだ、今にも泣き出しそうだ。
ああ・・・っ!慰めたい。
けれどつい黙っていられず、
「どうして・・・、どうして僕を信じてくれないんですかっ!」
とか、気持ちと台詞が相変わらず反比例だ。
ただでさえ失敗に打ちひしがれた虎徹さんを、さらにブロークンハートしてどうする。
だいたい、元はと言えば虎徹さんの前で何度も暴走した自分も悪いのだ。
実際、両親の事となると冷静でいられないのは事実である。
今回はたまたまPDAの存在に気がついて、却って冷静になったが実際あそこでジェイクが出て来ていたらどうなっていたかなんてわかりはしない。
なのに、僕は全部おじさんのせいにしようとしている。
「自分の事を信じてくれないような人を、信じることはできません」
とどめとばかりに、ぴしゃりと言い放つ。
信じようとしてたのに、と言い訳めいたことを言って。
まったくもって言い訳だ。
だって今まで僕は「信じてない」「頼らない」「あてにしない」と言い切っていたではないか。
なのに実際は、こうして裏切られたと癇癪を起して嘆く。
信じてなかったのなら、こんな風に怒るわけはない。
あの場面でおじさんに信じてくれなんて言うわけもない。
僕はいつも心のどこかで信じているし、頼っているのだ。
わかっていても憤りを抑えられない。
僕はバカだ・・・・・・っ!
睨みつけていた虎徹から目を逸らすと、僕はどうしようもない心の動揺を隠すためにその場から逃げ出した。
背中には、いつまでも虎徹さんの視線を感じる。
でも止まるわけにはいかなかった。
またどんな暴言を吐いてしまうかわからない。
これ以上、ちぐはぐな行動に苦しみたくない。
虎徹がどんな顔でこちらをみているのか手に取るようにわかった。
きっと自分自身をコテンパンに責めているのだろう。
取り返しのつかないことをしたのだと、しおしおと項垂れているに違いない。
どうしても歯車がかみ合わない。
僕はいつも自分が傷ついた分、相手にも同じだけの傷を負わせたいと思っているのかもしれない。
気の毒なおじさんにあたり散らして、僕は精神の均衡を保っているのだろうか?
ネイサンの言っていたのはもしかしたら、このことだったのか。
ある意味、僕はおじさんを誰よりも信じて、頼りきってる?
一人になると、冷静な思考が蘇ってきた。
虎徹さんは誰にでも優しいから?
それも少し違う気がする。
確かにお人好しで誰にでも公平に親切で・・・おせっかいとも言うけれど、わけ隔てがないように思う。
なんというかそういうポジションにいる、というせいもあるのかもしれない。
ベテランとして、先輩として、父親として、年上として・・・・・・
はっきり言って彼の性格では、そのどれもがしっかりとこなせてない気がするけれど、そうであろうとしているのは見てとれる。
もっぱら空回りぎみだけれど。
元来の虎徹のスタイルは甘やかされる側のような気がした。
実際、ネイサンやアントニオと居る時は、虎徹は結構わがままに振舞っている。
それがひどく自然で。
そういえば、虎徹さんには兄がいると言っていた。
ならばがっつり弟属性ではないか。
しかも、愛されて育ちました。と身体全体から甘えん坊オーラが出ている。
そうか、そういうことか。
僕はどこかで、虎徹さんを羨ましく思っていたのだ。
素直に甘える術を持ち、愛されることを当然のように受け入れることのできる彼を。
眩しくて直視できなかったのかもしれない。
それでいつも横を向いていた。
言葉をそのまま受け止められなかった。
僕は貴方のようになんの苦労もなく生きてはいないのだ、と斜に構えていたのかもしれない。
確かに彼は僕のように両親を目の前で亡くしてはいないし、その悲しみを共有できるはずもない。
けれど、彼だって5年前に妻を亡くしたといっていた。
若くして亡くなった奥さんとの別れが辛くなかったわけはないだろうし、その本当の悲しみだって僕にわかりっこないのだ。
今も左手の薬指に輝く指輪がまだ彼女のことを想っている証だろう。
けれど、虎徹さんがその悲しみを僕にぶつけることはない。
なぜなら僕が年下であり、後輩だから・・・・・・
僕が、彼にとって守られる側の立場である限り、その枠から脱出できないのだろう。
本当の意味で相棒になりたい。
対等な立場に立つには、年下や後輩の枠から飛び出さなくてはならないのだ。
僕は、よりによって反発ばかりする手の焼ける後輩そのものだ。
こういうスタイルできてしまった手前、そう簡単に態度を改めるのは難しいかもしれない。
でも、機会があれば逃さず変わる。
そうだ・・・、
変わってみせる。
必ず対等な相棒になってやる。
そしていずれは・・・っ!
扱いにくいけれど可愛い後輩が、よもや壮大な野望を打ち立てたとは露とも知らない虎徹は、その頃、次に戦うバーナビーを思って老体に鞭打ちジェイクの弱点を探そうと躍起になっていた。
一瞬、ゾクっと身ぶるいして躓けたのが後に勝利のきっかけになったのは、果たして神様の気まぐれだったのか・・・・・・
ともかくバーナビーは、虎徹が奮戦しているであろうジェイク戦を観戦すべく皆のいるモニタールームへと足を運んだ。
その前に戦ったスカイハイとロックバイソンがコテンコテンにのされたので少し心配になったからでもあった。
あんまり無茶をしてないといいけど・・・・・・
さっきたくさん責めてしまったから、変な責任を感じて無謀な事でもしてたら、僕はきっと自分が許せない。
おじさん、どうかあまり頑張り過ぎないでください。
今度こそ、僕はあなたに頼られるような相棒になってみせますから。
今度こそ、絶対です。
<4日目>
虎徹のジェイク戦はある意味、バーナビーの心配通りの展開になっていた。
能力が切れているにも関わらず、躍起になってジェイクに挑んでいる。
常人より鍛えていると言っても生身の人間なのだ。あんな無茶をしたら身体がどうにかなってしまう。
やっぱり心配になって見にきたんだ、と皆に言われ相変わらず僕はへそ曲がりなことを言ってしまったが、痛々しくて見ていられない。
ああ・・・、虎徹さん、もういいです。
あとは僕がやります。
これはもともと僕の戦いだ。
虎徹さんがこれ以上傷つくことはないんです。
いつも憎たらしいことばっかり言って、おじさんを罵って、蔑ろにしているのに。
たぶん虎徹がここまで粘るのは、次に戦うバーナビーの為だろう。
どうしてあの人は・・・、
けれど、それが虎徹さんという人だ。
バーナビーは意を決して戦いの準備の為、部屋を出た。
どんなにがんばっても虎徹さんは負けてしまうだろう。
次は、自分の番だ。