ジェラシーの行方2
「僕は来てるんじゃありません、泊まり込んでるんですよ。ちゃんと許可も取ってあります。パートナーが面倒をみるのはあたりまえですから」
「パ、パパパートナーってバディでしょ・・・、それに泊まりってそんな」
「ああ、言い間違えました、すみません。じゃあ、出てってください。では、また」
バーナビーの形をしたブルドーザーに一気に全員押しだされたと思ったら、挨拶もそこそこに目の前でバタン!と扉が閉まった。
カリーナが完全にぽかん、と放心している。
追い出された。
「・・・なんかハンサムったら、タガが外れたっていうか、いきなりデレ期?」
「なんかお前楽しそうだな?」
アントニオが呆れたように言うのに、うふんとネイサンがそれは嬉しそうにウインクを寄こす。
「あら、当然よ。これから楽しみね」
「オレはなんだか虎徹が気の毒になってきたよ」
なにやら放心したようなカリーナを連れて、ネイサンたちは虎徹の病室を後にしたのだった。
「なにも追い返すことないだろう?せっかく来てくれたのに」
あまりの怒涛の展開についていけなかった虎徹は、アントニオたちが退散したあとでようやく口を開いた。
彼らを追い出した恰好のまま、扉を押さえていたバーナビーが、がばっと振り向いた。
ブーツの踵を鳴らしながらスゴイ勢いで近づいてくる。
思わず虎徹はのけぞる様な形になった。
「虎徹さんっ!」
「・・・っへ?」
真剣な顔が、ずいっと寄せられた。
「虎徹さん、好きですっ!!」
たぶん、数秒は確実に固まった。
二人の間に、変な緊張感がピーンと張りめくらされる。
「・・・・・・はっ!?何?」
「だから、虎徹さんが好きです!」
「あ・・・、ああ、いやっ、そうじゃなく・・・」
虎徹が驚くのも無理はない、どう考えても脈絡がない。
いま、そういう流れだったか?と首を傾げたくなるのもわかる。
「お、お前ってあれだな・・・、0か10か、とかそういう感じだな」
いいえ、ずっと10でした。
態度が逆だっただけで・・・
バーナビーはこっそり答える。今となってはどうでもいいことだ。
返事を待っているバーナビーに、虎徹は深くため息をつく。
ここまでまっすぐ気持ちをぶつけてくるとは思わなかったが、むろん虎徹も満更でもなかったから「オレもお前のことは好きだよ」と、するっと言葉が出た。
言ってから、言葉にすると照れるなと思って苦笑した。
けれど次の瞬間、
バーナビーの顔が、ぱああああっと明らかに喜びに輝いた。
えっ、そんなに?
ここで虎徹はなにやら自分がとんでもない間違いをしでかしたような気がした。
戸惑っていると、バーナビーがいきなり抱きついてくる。
「お、おわ!なんだお前、ほんとにいきなりだな・・・っむぐ?」
驚いてかわそうとしたおじさんの顔をむりやり自分に向けると、バーナビーは強引に唇を合わせた。
それはもう、目を白黒させて虎徹の身体が硬直した。
それも、予想の範囲内。
「虎徹さん、勘違いしてるようだからはっきりさせておきます」
バーナビーは唇を離すと、混乱の極地にあるおじさんに向かって宣言した。
「僕の好きは、こういう好きです」
「っっ!?えーーーっ!・・・んぅ?」
あまりに大声を出すのでもう一度その唇を塞いでやると、両手で口を押さえて飛びのくようにベットの上をザカザカとあとずさる。
「そんなに驚かれると心外ですが・・・」
「だ・・・、だ、だって、今までそういう要素あったか?お前、めちゃめちゃオレの事嫌ってただろうがっ!」
「嫌ってませんよ、ただイライラしただけで」
「いつも文句ばっか言って・・・っ」
「全体的に思慮がなさすぎるのは事実ですからね、つい」
「もう構うなとか、信じないとかっ、おまえダメ出しばっかだし」
「褒めると調子にのるでしょう?」
次々憎たらしいことを言いながら、身体は逃げる虎徹を追い詰めていく。
「・・・、ねえ」
「はい?」
「本当におじさんの事好きなの?」
「大好きです」
キラキラと笑顔が眩しい。
おじさん、今どきの若者の感性がわかりません・・・
虎徹は、複雑な表情のまま完全にバーナビーの腕の中に収まってしまった。
取り敢えず、傷が痛いことにしてもう逃げるのはやめにした。
唇にとどまらず顔から首に至るまで、余すところなく吸われたが、・・・まあ、今日のところは激しいスキンシップの延長ということで納得しとこう。
ど、どうしようかな・・・・・・