万能を恋と知る
(焦らないで行こう)
同様に青葉も考えていた。今の状態はただの青葉の横恋慕だ。そう簡単に帝人を奪えるとは思っていない。けれど勝算がないわけではない。普段一緒に過ごせる時間は同じ高校生の青葉の方が確実にとれるだろう。帝人の気を惹く様々な方法を考える。
そうして帝人のことを考えていると、ふいに胸がつまって大声を出したいような気分になった。
(俺は帝人先輩のことが好きだ!)
そう心に思っただけで、頭の後ろがじんと痺れるような気さえした。ひどくドキドキしている。わかっている。初恋だ。これは青葉にとって初めての恋なのだ。
(恋って不思議だ)
今まで折原臨也に似ていると言われると、ひどく不愉快なだけだった。でも今は違う。臨也のことは嫌いだが、帝人が臨也を好いているというなら、似ているという自分にも望みがあるような気がしてくる。もちろん最終的には帝人に完全に青葉ひとりをみてもらうのが目標だとしても、臨也に似ていることを少しでもプラスに考えたのなんて初めてだ。恋は偉大だ。
(今ならなんでも出来そうな気がする)
帝人のことを思うだけで、できないことなんてないような気がした。青葉は自分でも不思議だった。こんな子供みたいな高揚感は、自分には無縁だと思っていたのに。
深海のような夜の街の闇の中で、青葉は一人恋を知った。