シャルルの価値
「……また、ずいぶんと派手にやったもんだな」
すべてが終わったのを見計らって、シャルルはアンディの元に舞いおりる。
マフィアのボスの外出ということで、護衛の数も結構なものだったし、当然武器……言うまでもなく銃……も持っていて、銃弾をかいくぐりながらの戦いだった。刑を執行するために、だいぶん周りの物が破壊されてしまった。それでも、関係のない街の人間がいないのは幸いだった。
アンディがギロチンの刃を振ってカバンにしまい、バサリとコートのフードを払いのける。
シャルルはその肩に降り立った。
無言で踵を返すアンディの足元で、ガシャッと壊れた銃器の破片が音を立てる。あちこち銃器やガラスやコンクリートの破片でいっぱいだった。それを気にする様子もなく、カバンを手にアンディは歩く。後ろを振り向かずに。仕事は終わったのだ。
……ところが、少ししてアンディが足を止めた。
『おや?』とシャルルは首を傾げる。
「アンディ、どうした?」
訝しげに問うと、右を見て、左を見て、上を見て、後ろを振り返ったアンディが、ぽつりと言う。
「看板……ない。窓もない。階段……どこだっけ。あれ……目印なんにも残ってない……?」
「そりゃ、あんだけ暴れれば、な」
呆然としているアンディに、残酷な現実を突きつける。
アンディがふうとため息を吐く。
「……シャルル……」
出番だ。
俺のありがたみが少しはわかったか、と、シャルルはしごくご満悦だった。
(おしまい)