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みとなんこ@紺
みとなんこ@紺
novelistID. 6351
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GOD BLESS YOU

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 結局、その後はなし崩しに宴会モードに突入して散々たかってきた。まぁ普段からこき使われているんだし、上級佐官な上に国家錬金術師の財布だ。多少の事では減った事すら判らないくらい持ってるだろうし、気にしない。
 男におごるなぞ嫌だ、とまた厭な事を散々宣っていた上官は、また書庫に籠もる気なのか、中央司令部への道を淀みなく辿っている。
 そのまま帰っても良かったはずだが、仮にも上司をこんな時にこんな所で放り出すわけにもいかず、結局、護衛もどき2人はある程度の距離を置いたまま、その後についてのこのこ歩いていた。
 既に季節は変わり、夜ともなるとかなり冷え込んでいる。
 しこたま飲んできた為にそれほど寒くはないが・・・、


 ッし


 ・・・何か今、らしくもなく微妙に控えめなくしゃみが前方から聞こえたような。
「bless you」
 笑って、小さく呟く。
・・・少しの既視感があった。
 そう前の話ではないが。何となく同じ事があったような気がする。
「――――くしゃみすると魂が飛び出すって誰が言い出したんだろうな」
「ついでに何でこんなまじないするようになったんだかな」
 昔からの風習なので多分誰も深く追求したりしないんだろう。
 そこに意味はあったのかもしれないが、いつしか言葉だけが残ったのかもしれない。それか、もしくは雑学激しいあの人なら知っているかも、と思いかけて止めた。
 彼ら、錬金術師は神を認めない。
 それでも目に見えないものの大きな流れを知っている。
 形を持たない魂の存在は信じている。
 それは何だか不思議なものだと思った。
 自分にはそこの区別が一体何処にあるのか、どう線引きされるのか、そんな事は全く考えた事もなかったので。

 神は何だ。
 人は何だ。
 魂は何処にあるんだ。
 そして死ねば魂は何処へ行くんだ。

 そんな事は考えた事がない。そんなふうに思った事がなかった。



 空を仰げば、中空に金色の光を落とす月が見えた。
 ・・・ああ、そうだ。
 あの時だ。彼女と歩いていた時のこと。
 あの日は少し肌寒くて、隣から小さなくしゃみが聞こえた時に、さっきと同じように。
「……知ってるかと思ったんだけど」
 誰もが知る筈の、古い祈りの言葉。


「God bless you」


「何だいきなり。改宗でもする気か?」
「いや、別に。・・・そう、普通は知ってるよな」
 ありきたりな言葉だ。
 貴方に幸運がありますように。
 お大事に。
 親から子へ子からまたその子供へと、もうずっとずっとくり返し唱えられてきた、まじないの、祈りの言葉だ。
 そう、誰もが知っているはずのあの言葉を。
 何処かへ行ってしまわないように、魂を護る言葉だと
 そう言えば、彼女は初めて知ったと言いながら、興味深そうに聞いて少しだけ笑ってくれた。


 何処から来たんだろう、あの女は。


 あの時見せたほんの僅かな笑みが焼き付いたように離れない。
 一瞬だけ消えた表情。
 その後の僅かな笑みに滲んだ想いがなんだったのか、結局最後まで判らなかった。

 ただ、きっといつまでも残り続ける。






end
作品名:GOD BLESS YOU 作家名:みとなんこ@紺