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【腐向け】Maybe,it will be alright.

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W1の二人に舞い込んできた、深夜のスペシャルドラマの撮影も今日で最後だった。集中して撮影が行われた為、
疲労もあったがやり遂げた感覚がとてもあって、充実していた。合宿の最終日の感覚と似ているかもしれない、など
と思って懐かしくなっていると、ふいに音也はトキヤの視線を感じた。視線の理由が知りたくて、興味のままにトキヤ
の方を向く。
「トキヤ、どうかした?」
台本を持ったままのトキヤは、音也に気づかれると肩を少しびくりとさせて、そのまま台本に視線を写す。
「どうかって・・・・どうもしてませんが」
何事もなかったかのようにマーカーが引いてある自分の脚本の台詞を追うのを再開する。何度も確認して、完璧に
自分のものにした台詞。トキヤに与えられた役は刑事で、年齢も生き方も全く違った。たが、音也はそうじゃなかった。
今まで二人で自分達の番組や、他のドラマで演じてきたのは殆どは善人で、特に音也は自身の明るい性格がウケて
いることもあってか、個人で出演したドラマも明るい役ばかりだった。けれど今回、ある程度軌道に乗ってきた二人を
見込んでか、シリアスな展開のドラマをすることになり、そこで音也が与えられたのが一見明るく何も思い悩んでいな
さそうなのに、内に母親を殺された過去と、その過去が作り出した歪んだ性格を秘めている少年の役だった。最初に
台本を読んで、自身と少し重なる過去を持つ今までやったことのない役に、音也は悩まなかった訳ではなかったが、
降りようと思うことはなかった。どんな役でも完璧にやってみせるトキヤに対して負けたくない、隣にいられるのだと
画面を通して証明したかった。そうして自分を安心させたかった。絶対なんてどこにもない。でも、トキヤの隣に立つ
のは自分が一番相応しいと、信じ続けていたいのは本当だった。自分とは真逆の、作り物の仮面を被り続けていた
トキヤに比べれば、このたった数時間の中だけ多少自分の過去と重ねられるような役をやることなど、大したことは
ない。それくらい出来なければ、きっと気がつかないうちにトキヤは手の届くところに行ってしまうだろう。
「えー、今、何か言おうとしてなかった?」
音也がぐっとトキヤの方に身を寄せて、顔を覗き込むと、驚いて見せつつ少し後ろに下がり、音也から距離を置くよう
な形になった。
「い、いきなり顔を近づけるのはやめなさいと何度も言っているでしょう、いい加減学習したらどうです」
呆れたような顔で、冷静に対処するようにしてみせるが、動揺したのと慣れない恥ずかしさとで、上手く振る舞えない。
落ち着かない心のまま、トキヤは音也をちらと見る。いつもと変わらない、バカっぽい笑顔が目の前にあるだけだった。
本当は何か気がかりだったり、不安だったりしてもこうなものだから、余計にこちらが気になってしまって、勝手な勘繰
りを入れざるを得なくなるというのに。
「っへへ、ごめんごめん。・・・でも、本当に何もない?なんかつらそうな顔してるけど・・・」
心配そうに見られて、トキヤは少し胸が詰まった。どうして人のことばかりそんな風に見つめるのだろう。気にするの
だろう。平気そうなふりばかりしなくていい。何も考えてないことはないだろうと、思っただけを吐露しようとしてトキヤ
は口を開いたけれど、呼吸すらするのが苦しくて、逆に酸素が肺を殺そうとしているかのような、圧迫感に打ちのめさ
れてぎゅっと唇を噛む。そしてまた懲りずにほんの僅かだけ開く。
「・・・・・何かあるのは、・・・・貴方のほ――」
「はーーーい!んじゃ撮影再開しまーーーす!」
頼りなく吐き出した言葉はスタッフのやたら大きな、撮影再開を知らせる声に遮られて消えた。音也は一瞬きょとんとし
てから、意識が引き戻されたように明るく返事をし、声のする方に振り向いて行ってしまった。切なげな光を瞳の奥に淡
くちらつかせながら、何か言いたげに一瞬トキヤの方を見たのが頭から離れてくれそうになかったが、それでも誰も止
まっていてくれる訳はない。仕事だってそうだ。分かり切っていることなのに、音也とこうやって活動するようになってか
ら、彼のこととなると切り換えが上手く出来なくて困る。そのせいか音也の後を追って進める足取りもどこか重いまま
だったが、懸命に振り切ってトキヤはカメラの前に立った。









”普段はカップルのデートスポットとしてもそれなりに有名な、海沿いの通りも真夜中になると閑散としていた。潮の香り
を微かに帯びた冷たい風が身体を冷やす。冬独特の擦りきれそうな乾いた空気でかさついた指先を弄びながら、
刑事、小坂圭は一人待っていた。申し訳程度にぽつり、ぽつりと点いた電灯以外は海の先を見ても灯りはない。煌々
と光るネオンも眠るこの時、この場所で全ては終わる。いや、終わらせなくてはいけない。どの手段を取るかの選択肢
は圭に握られていた。ただ、今日この場所に来るまでに結論は出せていないままで、そのことを考えると一気に苦しく
なった。真っ暗な海の微かに立てる波を眺めながら考えあぐねていると、少し遠いところからよく響く、明るい声が飛ん
できた。
「圭さん、ごめんね。・・・随分待たせちゃった?」
潮風で乱れる髪を押さえながら、圭は振り向く。目立つ赤髪と、人懐っこさを感じさせる瞳の少年、宮根知樹がそこに
はいた。両手をジャケットのポケットに突っ込んだまま、夜の冷気に少しわざとらしく震えてみせつつ、圭の隣に並ぶ。
「はぁ、さっむいなぁ〜・・・昼も寒いけどさ、夜なんかもう冷え込んじゃうっていうか」
「・・・・そうだな。こんな時間に、わざわざ悪いな」
「えーっ、いいっていいって。圭さんの頼みだったらお安いご用だよ。・・・・それで、どうしたの?今日は」
圭はちら、と横目で知樹を見遣る。こちらに呼応するように覗き込んでくる知樹に、一体どんな言葉をかければいいの
かまだ分からない。姿を見たら尚更分からなくなってしまったかもしれない。辿り着くはただ一つ、知樹を犯人として捕
まえ、差し出すことだ。証拠が、そして何より自分で捜査した分だけを身体に刻んだ様々な記憶が、知樹が犯人だと示
しているのに、その瞳に、声に触れてしまうと一瞬で自分の記憶は揺らいでしまっていた。知樹が犯人だと訴えかける
記憶は、同時に知樹と他愛もない話をしたりした記憶でもあったからかもしれない。一番知樹が犯人だと確信している
のも自分ならば、そうじゃないといいと思っているのも自分だなんて、皮肉なものだと思う。今日までずっと、その2つ
の考えで板挟みになっていた。
「・・・・単刀直入に言う。宮根くん、君は・・・・私が今捜査している事件の、犯人なのか」
乾いた空気の中に、圭は小さくけれどはっきり、言葉を吐き出した。手すりを掴む手が、込められた力の大きさに耐え
られなくなって震える。捜査の一環だったとはいえ、その一環からすらはみ出したところでまで知樹と接触し、本来必
要ない情報、感情―――大きく言えば、知樹自身に触れすぎてしまったのがいけなかったのかもしれない。今まで歩
いてきた、先の開けた刑事としての道。所謂出世街道だと他人に羨まれ、妬まれもしたそこからは、外れたところにい