再会のキス
「……にしても、いくら会いたいからって拉致はないだろう。しかも麻酔ガスまで使って。普通じゃない。あんた全然普通じゃないぞ、紫苑」
「拉致だなんて。きみを連れてきてほしいと言っただけだよ、ぼくは。ネズミは強いから怪我しないように気を付けて、とは言ったけど」
「逆だろ」
「まあ、どっちも怪我しなかったんだからよかったじゃないか」
「……何つう言い分だ」
「ごめん、きみに嫌な思いをさせたことは謝るよ。どうすれば償える?」
「今すぐおれを解放して二度と追いかけないとか」
「それはできない」
「即答か」
「きみを見つけたという連絡が入ってからずっと、三年ぶりの対面を果たしたらぼくはどうなってしまうんだろうと思ってた。連絡の一つも寄越さないきみに少なからず怒っていたし、頭がおかしくなるんじゃないかと心配だった。喜びより不安が勝っていたんだ。でも不思議だね、いざきみの顔を見たら愛しさしか出てこない。全てどうでもよくなった」
「……あんたはもうちょっと言葉をオブラートに包む方法を学んだほうがいいな」
「そうかな? きちんと口にしないと伝わらないこと、たくさんあるだろ」
「そんなだから女にモテても気付かないんだ」
「気付く必要なんてないじゃないか。ぼくは他の誰でもなく、ネズミ、きみが傍にいてくれることだけを求めてるのに」
「紫苑、あんた、底抜けのバカだな」
「よく言われるよ、きみに」
「その俺がいなくなったら、どうするんだ」
「地の果てまで追いかけるよ」
「…………本当にやりそうで怖い」
「怖い思いをしたくないなら、いなくならないことだね」