初日の出の色は変わる
今年の大晦日というのは今日で、でもやはり行くあてもすることもない俺は事務所にいる。上司コンビは年が明けてしばらくするまでやってくることはないだろう。というのも俺がそのしばらくの間の留守番と掃除を任されているからだ。掃除なんていうのは今に限らず命じられているが。そんなことはもうどうでもいい。
「年明けねえ…」
寝て起きたら日付が変わっているのと同じように寝て起きたら年が変わっている。それだけだ。
意味なんて特にない。俺が去年の大晦日を覚えているのは“大晦日”だからじゃなくて、ただの一日として覚えてんだ。社長が生きていた、ただのなんでもない一日。そういうのを俺は、百も千も持っている筈なのに、望まなくても端からどんどん薄れていく。
新しい年なんか来なくていいから、俺をあの夜明けに連れて行って欲しい。多分明日からの一年はこの半年がそうであったように、これまでと全く違ったものになるだろう。
弱音なんか吐きたくねえし吐いていられねえしそれでも、思い出さずにはいられない。眩しい光なんておおよそ似合わない俺たちだけど、陽に照らされて目を細める社長の横顔が目に焼き付いて消えない。……消えない。
それも今はまだいい。
来年のこの時、もうあの人の顔が思い浮かばないなんて泣き言言ってるようなことだけはあってくれるなと、祈る。
(051227)
作品名:初日の出の色は変わる 作家名:かさい