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She is SUPERNOVA

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単語解説(最低限)
○騎士(ヘッドライナー、シバレース)
驚異的な身体能力を持つ、太古の戦闘人種の遺伝子が発現した人々。多くは国家、騎士団、傭兵団に属し、巨大人型兵器モーターヘッドに騎乗し戦う。
○ファティマ
生体コンピュータ。特にモーターヘッド騎乗時、騎士をサポートする。脊椎だけのタイプも存在するが、騎士の胚から作られた人型のファティマは、生まれながらにして騎士の力をもつ。人間を超越した存在であるため、星団法で厳しく縛られ、人権は認められない。ほとんどが女性型だが、稀に男性型も存在する。
○マイト
ファティマ、モーターヘッドの製作者。騎士同様、特殊な能力者。
○星団
物語の舞台。四つの恒星系とスタント遊星によって構成されるジョーカー太陽星団。




「このおれが来たからには、もう安心だぜ!」
 きらきらと輝く笑顔は愛らしく、口調が男のものでさえなかったら非の打ち所のない美少女だったのは間違いない。
「マスターはともかく、私がいるので大丈夫ですよ」
 と、そのどちらかといえば小柄な美少女、いっそファティマとでも言われたら信じてしまいそうな少女の斜め後ろに控えた、これはなんというか「美丈夫」という言葉がぴったり当てはまるような黒髪の男がにこりと営業スマイルを浮かべ、安心を促した。彼の肩までしか背がない、しかもその足元はかなり高いヒールを装備していることを鑑みて相当小さいらしい少女は、むっと眉を吊り上げる。金色の瞳は色を増して男を振り仰いだ。
「こら。どういう意味だ」
「いえ。そのままの意味ですが」
 にっこり。
 大抵の女性、どころか男でもどきりとしてしまうような完璧な笑みだった。しかし、向けられる少女には何ら感銘を与えなかったようで、苦虫を噛み潰したような顔をする。
「…あの、あなたたちは…」
 言葉をさしはさむ隙もなかった女性が、躊躇いがちに疑問を口にした。そこで、少女は瞬き。そして、胸を張って名乗った。
「正義の騎士、エドワード・エルリックとそのしもべです!」
「しもべのマスタングです」
 お見知りおきを、と恭しい礼をしてみせる男は、年端も行かない少女に傅くには上等すぎた。しかし下僕然とした態度は板についており、とても演技には見えず、一体どういう関係なのか、と見るものの想像をかきたてるには十分すぎる組み合わせだった。
 とはいえ、少女が腰に下げるのが光剣らしいと気づけば、見えてくるものもある。この豊かな表情、コンタクトレンズが反射しない瞳、ヘッドコンデンサのない頭に光剣ときたら、これは騎士だろう。いや、確かに彼女自身が自分でそう名乗っているのだが。比喩としてのナイトではなく、現実として、種としての「騎士」。そういうことなのかと。
 ただ、問題は男の方だ。さしずめ、少女騎士が名家の出で男はその従者というあたりが妥当なのだろうが、それにしても「しもべ」は少々大げさである。主が騎士なら従う彼はファティマである、という可能性も考えられたが、それにしてはファティマらしいところがない。彼にしても、話に聞くファティマのようにコントロールされた抑揚のない表情、というのとは程遠い。ただ、マスターと呼びかけたことを考えれば、もしかしたら、あるいは、彼はファティマなのかもしれない。ファティマのほとんどが女性型で知られているけれど。
 ファティマ? 妖精とも喩えられるあの、美しい生き物? …男性の?
 田舎の街の、騎士もファティマもおとぎ話レベルでしか知らない女性は困惑に眉を寄せた。
「あのう…?」
「とにかく、ワタシがきたからには安心です!」
 ワタシ、という口調がなんだか固く、物慣れない印象を受ける。つまり言い慣れていないということか。そういえば最初は「おれ」と言っていた。もはや生き物としてのレベルが違う美しさの持主なのだが(なんというか、クオリティというかスペックが違う、素材から)、まったく澄ましていないそのギャップが、ある意味ほほえましく映る不思議な少女だった。
「…ええと…、…騎士さま?」
 なんと呼びかけたものかと思いながら、遠慮がちに呼びかけた女性に、きらきらした金色の瞳が振り向く。
「なんでしょう!」
 嬉しそうだ。
 …ええと、と女性は振り返って考えてみる。
 まず、このあたりは相当な辺境であるために(街の向こうは荒野というありさま)無法者がたまりやすいのだが、どうも最近騎士くずれが流れてきたらしく、街全体が被害に悩まされていた。しかも、そういう連中は何かで呼び合いでもするのか、一人いたと思ったら騎士くずれが増えていく。当然被害は大きくなる。からくりとしては、窃盗団か何かが騎士くずれを用心棒に雇ったか何かなのだろうが、とにかく一般人にとっては危険極まりない、どうしようもない事態に陥っている。
 先ほどもそうした騎士くずれの男にこの女性は襲われかかったのだが、そこに登場したのがこの一風変わった二人組だったのである。そして、彼女の台詞に話は戻る。つまり、自分が来たからもう安心だ、という。
「つまり、…街外れの連中を、どうにかしてくださるということですか…?」
 確かに、襲われた彼女を助けてくれた少女は、騎士くずれなどとは次元が違う強さだった。むしろ、多分強すぎるのだろう、何が起こっているのか分からず、魔法にでもかけられたのかと思ったくらいだ。彼女は剣など一度も使わなかった。また、使わせもしなかった。ただ蹴り飛ばしただけだ――恐らく。恐らくというのは、女性が見たのが、少女が蹴りあげた足を下ろしている所だけだったから。蹴りは早すぎてなんだかわからなかった。そして、蹴られた相手はどこだか、だいぶ先まで飛ばされて伸びているところを、連れの美丈夫に手際よく縛り付けられ放り投げられていた。荒野の、どこかに? 軽く放ったように見えたのに(いや、軽くというのもよく考えたらおかしいのだが、あくまで軽く)、投げられた男はどこまで飛んでいったものやら見当もつかなかった。つまり、美丈夫は異常な程の怪力の持主であるらしい。…こんなに美男子なのに…。
「もちろんです!」
 少女は自信たっぷりだ。しかし、見た目はそれこそ、妖精と謳われるファティマを連想させるものなのである。大丈夫か? と女性が思ったとしても、無理はなかった。
「私がついていますから」
 と、まるでその思考を読んだかのように、男がにっこりと微笑んだ。
「おまえなんか全然お呼びじゃない」
「勿論、マスターのお邪魔はしませんよ」
「わかってるならいい」
 高飛車というか生意気な言動だった。よくもまあ男が怒り出さないものだというような。しかし、男の方はにこにこして聞いているだけだ。可愛いなあ、と、その顔にははっきり書いてある。
「そういうことだから、おねーさん。安心してね」
 お日様のように笑って、少女は高らかに宣言した。
「悪党どもは、木っ端微塵のハンバーグにしてやるよ!」
 女性は、喜んでいいものやら何なやら、と思いながら、小さく答えた。
「…ハンバーグじゃなくてもいいと思うわ」
 スプラッタは女性の趣味ではなかった。
作品名:She is SUPERNOVA 作家名:スサ