【aria二次】その、希望への路は
「あ、私どもは会社からの指示で観光案内をさせていただくだけですので。会社から事前に料金変更の申し出が行われていないのならば、料金の変更は無いものとお考えください」
アテナが、コンダクターと同じような小声で、しれっとホラを吹く。その様子を見ていたアリスの顔に、営業用ではない、本心からの笑みが浮かび上がった。
うろたえるコンダクターの態度に、悪戯心が刺激されなかったワケじゃない。だけど、さっきまでの重い気持ちは吹き飛んでいた。
今日の観光案内は一世一代のクルーズとしてやり遂げてやるのですっ、という闘志が湧き上がる。
「それでは皆様、ゴンドラまでおいでください」
ハリのある声で呼びかけると、ツアー客はうれしげなざわめきを立てながら移動を開始した。追加料金が発生しないと知って、ほっとした表情を浮かべたコンダクターがあわてて先導する。
さりげなく歩み寄ったアリスが、アテナにささやいた。
「今日は、でっかいありがとうございます」
その言葉に、アテナは優しげな笑みで頷き返した。
作品名:【aria二次】その、希望への路は 作家名:立早 文