五年生中心で夏の子供向けホラー映画
このとき当の三郎たちは久々知たちのいる階の真上にいた。次の瞬間、不運なんだか幸運なんだか分からないがとにかく超自然的な力を発揮して、伊作が腐った床板を踏み抜く。階下に落ちる三郎サイド。「雷蔵、兵助――が二人イイイイ!?」と絶叫する三郎。ようやく合流。
状況からしてもう明らかに成り替わりの妖怪なので、三郎サイドも瞬時のそのことを理解する。U1はもう本格的に失敗。みんな自分の正体に気付いてしまったから、「受け入れ」てもらうこともできない。U1マジギレ。本体の醜悪な化け物と融合して、忍たまたちを殺そうと追いかけてくる。
U1の注意がそれたので雷蔵が起きる。「三郎! 今度はいつもの三郎だ!」と寝ぼけている雷蔵。「何言ってんだいそんなことより走るんだよ雷蔵!」と三郎。みんなでU1から逃げる。
その時、どこからともなく子供の笑い声が聞こえてくる。「何あれ? 何あれ?」「追いかけっこだ!」「楽しそう!」「鬼はあいつだ、邪魔しちゃえ! だってあいつ嫌いだもの!」と元忍たまの他のお化けたちが逃げるのを手助けしてくれる。お化けたちは「あー楽しかった!」って言いながらどんどん成仏していく。
それでみんな何とか建物の外に出られそうなとこまで来るんだけど、そこで久々知だけみんなと離れちゃう。「すぐ追いかける! 先に行け!」と1人で逃げていく久々知。竹谷は追いかけようとするんだけど勘ちゃんが止める。「兵助が大丈夫って言うなら大丈夫だ。あいつはい組一の優等生だから」、云々。
久々知とU1、命がけの追いかけっこ。どんどん高いところに追い詰められていって、学園の鐘のところまで逃げる久々知。絶体絶命だけど、久々知は何とかしなきゃ!という一念でU1に話しかける。「おまえ外に出たいと言ったな。出ればいいじゃないか。どうして俺の姿になる必要があるのだ?」。
U1は、「自分はこんなに姿が醜いから、誰かの姿を借りなきゃ日の当たるところには出られない。姿を借りたら本物は消えてしまって、たくさんの人が悲しむと分かっていたけど、この学園ではみんなとても楽しそうにしていて、どうしても仲間に入りたかった。一緒に遊びたかった」うんぬんかんぬん。
一方その頃、竹谷たちは井戸を必死に直そうとしていた。「井戸が壊れて封印が解けたんだから、その井戸を直せばまた封じ込められるはず!」という発想。みんなで手分けして井戸を直そうとするんだけど、あとちょっとで穴がふさがる、というところで変な力が作用して肝心なところに触れない。
久々知とU1はまだ会話している。U1の言葉を聞いた久々知はこういう。「でもさっき俺のことを美しいと言ったけど、それは俺の心が美しいってことなんだろう。姿なんか関係ない。お前、ずっと俺たちを助けてくれたじゃないか。俺は美しいとかはよく分からないけど、あの時、お前は格好良かったよ」。
「外に出たいなら出よう。一緒に行こう。最初は一年坊主が怖がってちびったりするかもしれないけど、すぐ見慣れるさ。特には組の連中は度胸だけは座ってるんだ。大丈夫だよ」とU1に手を差し出す久々知。
するとその時、井戸に働いていた力が弱まって、竹谷の手が最後の穴に届く。「おほ~!」「八左ヱ門、あと一息!」盛り上がる一同。穴が塞がる。一瞬の静寂。次の瞬間、井戸から光の柱が立ちのぼる。
久々知の目の前でU1の姿が消えていく。呆然となる久々知。「だめだ。自分は行けない」とU1。自分はもう、「他人に成り替わる妖怪」になってしまっている。自分が外に出れば忍たまたちの誰かが消えることになる。自分は、久々知に格好いいと言ってもらえただけでもう満足だ。だから行かない、云々。
最後に、もし自分が外に出られたら、自分は久々知の友達になれるか、と問いかけるU1。久々知は「勿論だ。今日みたいに、何度だって、きっと良い友達になれる」と久々知。U1はその答えに満足して消えていく。というより成仏していく。
現実の世界に戻ってくる忍たまたち。夏休みが終わり、授業が始まる。久々知は図書室で井戸に祭壇が作られた頃のことを調べてみる。昔、学園の近くにあるお寺に、とても容姿の醜い子供が捨てられていた。子供は同年代の忍たまたちに混じって遊びたがったけど、生徒でない彼は仲間に入れてもらえなかった。
世を儚んだ彼は、ある日学園の敷地にある、今はもう使われていない井戸に身を投げて死んでしまった。それ以来、学園の生徒が神隠しにあう怪異が続いたため、供養のために井戸の底に祭壇を作り、丁重に祀った、ということが本に書いてある。大体の事情を把握する久々知。
「きっと寂しかったんだろうな」と久々知は竹谷に語る。きっと学園の生徒たちも、彼の容姿が醜いから遊ばなかった訳ではない。だが忍者になる修行をしている忍たまたちと彼とでは、住む世界が違ったのだ。あんな怪物になってしまって、輪廻の輪に戻ることもできず、ずっと苦しんでいたんだろう、云々。
「でもあいつはきっとお前に救われたんだと思うよ」と竹谷。U1は大勢の人を黄泉の国に引きずり込んだ、それ自体は悪いことだから、すぐ人間に転生するのは難しいかもしれない。でも、何かに転生はするんだ。もしかしたらこのカメムシが彼かもしれない。彼は学園の仲間に入りたがっていたから、近くに生まれてくる可能性は高い。そうしたら、生物委員会が責任と愛情をもって世話してやるから大丈夫。虫や動物の命は短いから、何度も何度も生まれ変わって、すぐに罪を償うことができる。そうしたら忍たまになって学園に入ってくるさ、云々。
「そうだな。きっとそうだ」と久々知。残暑の中でセミがジージー鳴いてる声をバックに画面(?)フェードアウト。エンディングへ。
「学園の怪談」 ~完~
作品名:五年生中心で夏の子供向けホラー映画 作家名:はるはる