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Prayer -祈り-

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「そうだ。雇っているのに容赦なしだ。エイハブが丹精を込めてクィーンズ・ガーデン風に仕上げられていたのを思い切り壊したんだからな。木がさ、こう……三角形とか円柱とかにきれい刈り込んで整えている木の枝を折ってさ、本当、大目玉を食らったよ。『このトピアリーの形にするのに、いったい何年かかったと思っているんだ』とか言われて、もうカンカンで頭ごなしに怒られた。あまりの剣幕に、すぐに謝って逃げた」
そのときのことを思い出したのか、ドラコもクスクス笑った。

「仕方がないから、いろいろな場所を探検して、いい遊び場所がないかと探したよ。そしたら、屋敷から離れた場所に先祖が住んでいた古城の跡地があって、その崩れかけた壁の穴を通り抜けると庭が広がっていたんだ。荒れていたけど、誰も知らないシークレットガーデンを発見して喜んだよ。僕はちょくちょく入り込んで、そこで遊んだんだ。一番大きな木の上は自分だけの秘密基地にして、いろんな物を持ち込んだりしてたよなぁ……」
懐かしそうに目を細める。
「しかもそこには先客がいてさ、木のくぼみの穴にリスが居たんだ。出たり入ったりして顔を覗かせて、僕がクラッカーを食べていたら、ねだりによく近寄ってきたよ」
フフフとご機嫌に笑った。

ドラコの話はたわいのないものだったけれど、その情景がたやすく思い浮かび、ハリーは耳を傾ける。
自分には全く関係がない昔話なのに、聞いていると心地よかった。
日差しのせいではなくて、胸がポカポカしてくる。

きっと、昨日までの自分だったら、絶対にドラコの昔話など、どうでもいいと思ったはずだ。
不愉快なただの自慢話にしか聞こえないのに、今は全くちがうように聞こえるのは、どうしてだろう?

──何がちがうのだろう?

ふむとハリーは考えていると、不意にドラコがこちらを向いた。
「ああ、そうだった。君に何かお礼をしなくちゃな。大切なペンダントを見つけてくれたんだから。──何がいい?」
「何がいいって……」
ハリーは面食らったように口ごもる。
「君、本当にそう言ってるの、この僕に?」
「ああ、そうだが」
それがなにか?という表情で首を傾げた。
その態度も視線もあまりにも自然で、貶めるものが何もない。

ハリーはゴホンと咳払いをした。
「えっとさ……、そのペンダントを落として無くしたのは、この僕なんだけど……。だから、お礼なんかとんでもないよ」
バツが悪そうに下を向く。
「そうだったかな?きっかけが何だったか、うっかり忘れていたよ」
「忘れていたって、君……」
信じられないという表情で相手を見た。
ドラコは学年でもハーマイオニーとトップを争うくらいに、とても頭がいいから、その相手がこんな単純なことを忘れるのだろうか?

「僕としたら『大切なペンダントを無くした』ってことで頭がいっぱいで、ほかのことが端に追いやられていたんだ。無くしたものを見つけることだけが一番大切で、重大だったんだ。もし見つからなかったらどうしようと、そればかり思って焦っていた」
そのときの気持ちを思い出したのか、心配げな表情になる。
「だけど、それを君が見つけてくれた。それだけで、僕は嬉しい。とても感謝している」
明るい輝くような声でそう告げた。

「――それに、僕の探し物をいっしょに何時間も手伝ってくれたし、食べ物は差し入れしてくれるし、木から落ちるのも助けてくれたし、だから、……だから、そんなことはみんなチャラだ。プラスマイナスゼロだ。っていうか、僕としたらプラスかな?今日僕は本当の君を知った」
明るくドラコは宣言する。
「君はとてもいいヤツだ」
ニッコリと笑いかけてきた。

ハリーは一瞬息が詰まり、その次に派手に笑い転げた。
「君って単純なんだ」
「えっ、そうかな?単純かなぁ……」
頭を傾げて、ポリポリと掻く。
その仕草が、表情がおかしくて、ハリーは楽しそうに何度も声を出して笑い続けた。

いつまでも上機嫌に笑う相手を横目で見て、ちょっと照れた様子のドラコだったが、それ以上は何も言わなかった。
ハリーの笑い声に耳を傾けているだけだ。
だって、その笑い声を聞くのが心地よかったからだ。
もっと聞いていたなぁと思うほどに──


作品名:Prayer -祈り- 作家名:sabure