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【腐】貴方と君と、ときどきうさぎ その8【臨帝】

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キスをした。
あの人とのキスはほんの一瞬で終わる。
いつも貴方の腕の中で貴方を見上げるのは僕の方で。
それでも忘れることなどない唇の感触。

どうして僕はこんな呪われた体で生まれてきてしまったんだろう。
どうして僕は恋をしてしまったんだろう。

知らなかったんだ、誰かを好きになる気持ちが
こんなにも幸せになるって事。

知ってしまった。
欲が出てしまった。
もっと、深く知りたいと。
もっと、一緒に居たいと。


『さあ、話しをしよう』



男の言葉が脳裏を過る。



「ふう………」
最近体の疲れが異常だ。学校が終われば布団へなだれ込むように
眠ってしまう。気が付いたら朝だ。
「…………」
ラボに行く日、平日は数時間で終わるけど土日となれば丸一日は
使用してしまう。それはそれでかなり痛い。……けれど、
……やめよう、思い出したら目眩がしてきた。ああ、朝日が眩しい。
体を起こすのも億劫で寝たまま布団の脇に置いてあった携帯を手に取ると
チカチカと青いランプが点滅していた。受信フォルダを開いて見れば
それは臨也さんからのメールの知らせ。たったそれだけの事なのに
心は少し温かくなった。
『大丈夫?』
内容を確認して更に嬉しくなる。昨日は夜に外食をする約束をして
いたのだけれど体調が優れないのでと断ってしまった。会いたかったな……
声を聞きたい。ここ最近臨也さんも僕もお互いすれ違いが続いてなかなか
会っていなかった。だからとても楽しみにしていたのに。不甲斐無い。
そんな時だ、携帯が振動しシンプルな着信音が鳴り響いたのは。
『もしもし』
臨也さん…の、声だ。
『ひょっとして寝てた?』
「はい、でも今起きた所だったので」
自分でも掠れた声だってわかる。電話の向こうが
やけに賑やかだ。車が通る音、人の話す声、臨也さん、外に居るのかな…
『今日学校休みだよね、夕方にはそっち行くから』
「大丈夫ですよ、一日寝ていたおかげですっかり良くなりましたから」
僕は腹に力を入れて明るい声を出した。心配はさせたくない。
『嘘を吐かない。今わざと明るい声出したでしょ』
が、人間観察が趣味な彼には通用しなかった。
「ただの風邪ですよ?」
『こういう時は恋人に甘えなさい』
あ、やばい、きゅん、となった。
「……はい」
『本当は今すぐにでも行きたい所なんだけど』
「お仕事もちゃんとして下さいね」
『……うん』
不満そうな声。まるで小さな子供のようにふて腐れている
姿を想像してしまい口元が緩んだ。
『それじゃ、また後で』
「はい、お待ちしています」
ピ、と携帯を切ると僕は再び布団に寝転んだ。
ぼーと電気傘を眺める。
「…今更後には引けない」

そうだ、これは僕が選んで決めた事。
僅かな可能性にもすがりたい。掛けてみたい。
今はだた、それだけ。
ごめんなさい…臨也さん。もう少しなんです。
…後もう少し。終わればきっと、きっと……



***



彼のアパートに着いた頃には日は暮れて綺麗な夕焼け空だった。
合鍵を使って中に入ると帝人君は電気を消して大人しく
布団の中で寝ていた。物音をたてず彼の隣に腰を降ろす。
顔色はあまり良くない。額に手を当てれば熱いし呼吸も荒い。

帝人君の体調に変化が現れたのはここ最近だ。
顔色が悪い日が数日続き、問いただせばただ疲れているだけだ、
風邪を引いているとの一点張り。それは日を重ねるごとに
疲労感が募っているのがわかる。それでも自分といる時は
笑顔を絶やさす心配を掛けまいとする。その行動に腹が
立たないわけじゃない。もっと自分を頼って欲しい、それが本音だというのに。
次第に俺達の間に距離は生まれ仕事の忙しさもあり
なかなか会えない日々が続いた。しばらく様子を見てみようと
考えたのが間違いだったんだ。すぐにでも、問いただしておけばよかった。
そうすれば、ここまで酷くならなかったのかもしれない。
自分自身にこんなにも腹が立つなんて。俺は深く溜め息を吐いた。
それに気が付いた帝人君はゆっくりと目を開いた。
「…いざ、や…さ」
帝人君は体を起こそうとしたので俺はすぐさま寝ていて、と声を掛けた。
「…咽乾かない?ちょっと待って。飲み物買ってきたから」
冷えピタと市販の風邪薬、スポーツドリンクや水。それらの
入ってるポリ袋の中からスポーツドリンクの入ったペットボトルを
取り出して口元に持っていく。
「大丈夫ですよ、起きれます」
そう言って帝人君はゆっくりと上半身を起こすと
一口、二口と口に付けてくれた。ゆっくりと、咽が動く。
「臨也さん…ごめんなさい、せっかく一緒に居られるのに…」
「いいよ、元気になったら色々としてもらうから」
「なんですかそれ」
呆れたように君は言うけれど本気じゃないのはすぐにわかる。
それでもふふ、と笑ってくれるから。俺は何とも言えない気持ちになった。
帝人君にもう一度寝るように促すと彼は素直に応じた。続けて俺も布団の中に潜り込む。
狭い、一人用のせんべい布団だ。どうしたって背中が出しまうのは仕方がない。
俺だけの背中が出ていれば別に問題はない。
「えっあ、あ、あ、あの…」
身じろいで逃げてしまいそうな帝人君の体を抱き寄せて
違和感を感じた。前よりも細くなっている、ただでさえ痩せているのに。
帝人君は頬を俺の胸に摺り寄せてはシャツを握ってきては顔を上げ、ちらりと俺を見た。
「一緒にいてあげる」
「添い寝して、くれるんですか?」
力なく微笑んだ顔は彼の精一杯の甘えで。
「うん、だからさ」




「もう辞めなよ、自分を実験体にするの」




顔色が変わった。俺に向ける瞳は不安と、恐怖と、
けれどどこか諦めのようなものが混ざっているように思えた。






「……いつから気が付いていたんですか」
質問に答えてやるつもりはない。帝人君の顔が青ざめて引きつっている。
恐怖に怯えている顔。当たり前だ。誰の目にも分るほどに怒っているんだ、俺は。
体調が悪い君に酷な事をしているのはわかってる。それでも問わなければならない事だ。
「臨也さ」
「何のためにこんな事を続けている?」
「…」
「金のため?それとも俺を出しに何か脅された?」
帝人君の悪い癖だ。都合の悪い時はほらまたそうやって目を逸らす。
その行動が余計に腹立しい。
「何を言われた」
「……っ」
右腕を掴み、袖を捲れば注射針の痕がいくつも残っていた。
中には傷口が黒く皮膚が変色してしまっている所まである。
掴んでいる腕に力が篭り帝人君は痛そうに顔を歪めたが
離してやる気にはならなかった。
「しばらく様子をみていた俺が馬鹿だった」
帝人君ははその言葉にはっとして俺を見たがまた、目を逸らされてしまった。
代わりに辛そうな顔だ、悲しそうだ。
「…実験、じゃ、ないですよ?僕は協力をしているだけです。
少し検査をして、体を調べられて血を抜かれて、健康診断みたいなものです」
「本気で言ってるわけじゃないよな?」
恐ろしく自分の声が低くなっていくのがわかる。
「…僕のこの体質が、誰かの役に立つのなら…」
「本家の人間は知っているの、この事」
「…いえ、まだ知りません。いずればれてしまうでしょうね。