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【腐】貴方と君と、ときどきうさぎ その8【臨帝】

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そうなれば黙ってはいないでしょうけど、でも、向こうだって手は出せない」
「君の目的は何」
「………………」
窮屈な布団の中で、ゆっくりと時間だけが過ぎていく。
外を走る都電の音が遠くから聞こえてくるだけだ。
帝人君の目的…、恐らく俺が考えている予想は
当たっているだろう。けど、駄目だ。言いだせない。
本当の理由もすべて君の口から聞きたいと願うのは
せめてもの俺の我が侭だとしても、だ。
「…正直、驚きました…あれからまだ数日しか
経っていないのにもう臨也さんに情報を掴まれていたなんて…
帝人君は再び頭を俺の胸に預けてくる。どんな顔をしているのか
見えないしわからない、けれど、どうせ泣き顔に決まってる。
帝人君は泣き虫だから、すぐ泣く。
「今更俺が誰だか言わせるつもり?」
「いいえ…」
ほら、涙声だ。そして、小さな嗚咽。
この子は泣き虫だけどいつも声を押し殺すんだ。
女のように大声を出して泣き喚いたりはしない。
「いざや、さん…」
絞り出したような、声。
「ただ、一緒にいたい、だけなんです…」
震えていた、声も身体も。とても小さな声で、君は言った。
「普通に、手を繋いで、普通に抱き合って、普通にキスをして
普通に、愛し合って…でも、僕にはそれができない、してあげられない」
胸に、痛みが走った。
「……君は」
「本当は、ずっと怖かった」
怖かったんです、と、くぐもった声は続いた。
「とても幸せだった、…毎日が幸せ過ぎて周りが見えなくなるほど
貴方に夢中で、だからこそ…愛想を尽かされてしまわないように必死だった、
んです…キスもできない、こんな、こんな呪われた体な自分に…」
ああ、そうか。
やっぱり、そこに行き着くのか。
「馬鹿だねえ」
「…ぐすっぐす」
泣き声と鼻をすする音。
「馬鹿だよ帝人君」
「…………」
泣いている君は何も言わない。
ただ、大人しく黙って抱しめられてくれるだけ。

俺はね、

「言っただろ?君の事がどうしようもなく好きなんだ。いや、違うな」
帝人君はビクンと体を震わせて俺を見上げた。


「愛してる」


「…ひっく…イケメン、ずるい、です…ひっく…」
「何それ」
嬉しかったのだろう、ボロボロとまた泣きだしているが
表情にはそれがしっかりと出ている。赤い顔を真っ赤にさせて
そっぽを向いてしまってもすぐにわかるよ。
「ねえ、俺は隠し事をされる方がよっぽど嫌だよ」
「…貴方が、それ言っちゃうんですか」
皮肉たっぷりに言われたそれに俺は苦笑した。
「君だけは論外」

化け物は論外。

そんな俺の言葉が君を縛り付けた。
俺は自分から唇を重ねた。湿っていた唇からは涙の味がした。
煙と共に再び現れた腕の中にいる小さな君は体を丸めてぴったりと。
俺に寄り添っている。長い耳が後ろに垂れて、涙が一筋零れた。






─数時間前池袋某所 新羅マンション



「お前の親父ここにいるだろ」
「父さん?確かに今日は泊って─って、ちょっとちょっと!?」
新羅を押しのけ、問答無用で俺はマンションの中に上がり込み
リビングでソファーに腰を降ろし新聞を広げて読んでいたガスマスクに
白衣姿の男の前に姿を現した。
「折原君か」
「やってくれましたね」
「え、え、なに?」
「新羅、お前の親父さんは俺の大事な大事な帝人君に人体実験をしているんだよ」
新羅はきょとんとして、父親に目を向けた。
その場に居合わせていたセルティは驚いて固まっている。
『み、み、み、みか、…じ、じんたいじっけ!??』
「落ち着いてセルティ!」
運び屋は動揺のあまり持っているPDAを落としそうになっていた。
けど今はそんなのどうでもいい。
「あの子に何をしている。事によっては─」
「心配はするな。命の危険を脅かすような非道的な事は何一つしてはいない。
それにこれは合意の上なんだ。我々と竜ヶ峰君とね」
「ならどうして日に日に衰弱しているんだ!!」
大声を張り上げた俺にその場に居た誰もが驚きと興味を示した。
「珍しい、君ほどの男がたかが獣人族の少年一人にここまで感情的になるとは」
『獣…人…?』
「まさか、帝人君が…?」
『新羅何か知っているのか?』
「ああ、うん、セルティのような可憐で美しい妖精がこの世に存在するように
僕達人間にも特殊な体質な一族がいてね、まあ簡単に言えば動物の姿に
変身できる人間がいるって事なんだけど。科学的にはまだ解明されていない事が
ほとんどだし、何より姿を見た者もいないし、昔の伝承しか残っておらず
その存在は伝説扱いになっているレベルなんだけど…本当に?」
「私の口から話すより折原君、君が一番良く理解しているのではないかい?」
むかつく、他人の口からそんな事は言われずとも分りきっている事だ。
怒りにまかせて森厳を睨みつけても動じもしない。新羅は物珍しそうに
俺を見ているし運び屋は運び屋で説明を聞いて固まってる。
「…大方、実験に協力してくれれば完璧な人間になれるとでも
吹き込んだんでしょう。呪われた体から解放できる術を知っているとでも言って」
「そうだ。獣人族なんて滅多にお目にかかれる人種じゃない。
彼らの生態を知るには絶好の機会だったんだ」
「それでネブラのラボにあの子を出入りさせていたわけだ」
俺は証拠として帝人君が自ら研究施設のなかへ入っていく写真を数枚
テーブルの上に投げてやった。
「父さんの事最低だと思っていたけど本当に最低だね!」
『森厳…お前という男は……私だけでは飽き足らず…』
ゆらりと彼女の首から出ている影が動き、森厳の首の周りに巻き付いた。
「わーわー!セルティ待って待って!こんなどうしようもない
人でも俺にとっては血の繋がった唯一無二の父さんなんだ!」
『し、新羅…けど…』
しゅるしゅるとその影は解かれた。
いっその事そのまま影で包んで窒息させてしまえばよかったものを。
「…ま、まあなんにしてもだ。彼の体調に関しては我々のせいではない。これは本心だ」
「よくも抜け抜けと…まだそんな事を言うんですか」
俺は右ポケットに手を突っ込むとナイフを握った。
「日に日に体力が落ちていたのは当然我々だって気が付いていた。
だから本当なら今日行う検査だって中止にしたんだ。体調が良くなるまでは」
「いいえ、今後一切あの子はもう実験には関わらせません。いいですか?
これは警告です。これ以上彼に近づいて見ろ。貴方にとって不利な状況
なんていくらでも作れるんですよ、俺は」
「大した自信だな若造」
「俺は本気です」
俺は素早くナイフを取り出し、森厳の首筋へナイフの先を向けた。
男は驚く様子もなく、動く気もないらしい。
「臨也待って、落ち着いて。父さんも挑発しないでよ!
そんなに帝人君の状態が悪いなら僕でよければ診るからさ」
「…………興味本位じゃないよな?」
「ないって言ったら嘘になるけど、彼はセルティの友人でもあるし
セルティの悲しむ顔なんて見たくないしね」
『新羅…そうだな、うん、まずは帝人の方が心配だ』
これ以上ここでの会話は無駄だ。そう判断した俺は彼らに背を向けて
玄関へと足を向けた。
「臨也?」
「帰る」
今だって一人で寝ている帝人君の方が気掛かりだ。
「騒がしくて悪かったね」
「……」