痛みを知らない奴だけが、他人の傷を見て笑う。
「…それで…なんでしたっけ。世の女性から見た、あなたの良い所…ですっけ。」
「うん、そうそう!俺という存在を、そんな彼女達よりもよく“識っている”帝人ちゃんのもね?」
「…ご期待に添えず申し訳ないんですが、どうせ一緒ですよ。世の女性達と。」
「うん?」
「―――…十中八九、顔でしょう。もしくは…頭の良さ。…あぁ、財力なんかも、もしかしたら魅力的かもしれませんね。」
(………いや…頭…良い、の…か?)
頭の回転は速いし博識だけど、まぁ、賢くはないよな。
狡賢いだけで、基本的に廚二…いや寧ろ情緒的には小学生以下?ってくらい中身成長してないもん、この人。
(でも、僕はこの最低な男の事を気に入っていて、)(…容姿も、だけれど、何よりも)
(心踊る巧みな話術。魅力的な情報。)(僕の大好きな“非日常”を運んでくる…そんな所に、)
(―――惚れちゃってるんだけどね…)
「えっ、誉めてくれてる?ついに帝人ちゃんも、俺に惚れちゃった?照れるなー嬉しー!」
「内面が最低だから、中身を知ったら好きになる要素が無いって遠まわしに言ってるんですけど、通じませんか。流石ですね。」
既に慣れた、胸の(ココロ、の)痛みを握り潰して。
少しでも長く、彼の興味を引く存在で居続けられるように。今日も僕は、彼に向って毒を吐く。
作品名:痛みを知らない奴だけが、他人の傷を見て笑う。 作家名:四谷 由里加