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四谷 由里加
四谷 由里加
novelistID. 31889
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貴方がいないと俺の世界は作れない

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「―――…で?俺にそんな話を長々語ったその心は?」
「銀時、今日は俺の誕生日だ。勿論…覚えてんだろ?」

面を上げた銀時の口元が、ヒクヒク痙攣していた。表情筋は全体的に強張っている。
俺の話の中盤(恐らく銀時が出てきてからのそれ)ぐらいから、銀時は床に崩れ落ちた。それから、机に背を預けたような体制で、立てた膝に肘をつき頭を抱え出したのだ。
…ツッコミもせず、お構いなしに話を進めたのがいけなかったのだろうか。まぁともかく、漸く顔が拝めた。

祭りの夜に再会してから、直接顔を合わせたのは紅桜の時を含めてまだ二度目だった。
しかしこの反応の素早さは戦時中と大して変わらず、あまり中身は変わっていないようだ。そんな銀時に、らしくもなく少し、安堵した。

―――俺は今、わざわざ【万事屋銀ちゃん】とかいうふざけた看板をぶら下げた、銀時の塒にきている。
此処に足を踏み入れた時は酷くガランとしていた。銀時は、部屋中心に据えてある机に腰かけ、月明かりを背負って、剣呑な瞳で正面を(…つまり俺を、)睨み据えていた。

許可した筈の白い獣の姿は見当たらない。
…まぁこの反応は妥当な所だな。クツクツと喉の奥で笑うと、銀時の空気が、怪訝そうに揺れた。
そんな様なんて気にもとめず、勝手に上がり込んで、来客用とみられるソファにドッカリと腰を下ろす。若干鬱陶しそうに目を細めた銀時は、何をしに来たのかと俺に問うた。
そして、冒頭に戻る。

「………だから?一体何の用だよ。」
「ケーキ食わせろ。」

夢の内容を語って聞かせていくにつれ、次第に嫌そうな顔になっていった銀時は、頭を抱えたまま、この発言でついに。

「だが断る!!」

カッと目を見開き、天を仰いで叫んだ。
予想に違わない反応だが、思いの外懐かしく、何故か存外心地の良いものだった為、驚いた。だが表情には出さずに、愉快そうに歪んだ口元のまま、問い返す。

「……、何故だ。」
「何故だじゃねェ!!この流れで、なんで『ケーキ食わせろ』なんだ!!?あんな脅しみたいな電話かけてきやがってぇええぇぇえええ!!!」
「…話の流れと方向性は一緒じゃねェか。」
「はぁああぁッッ!?…何!?なんなのお前!!?晋ちゃんあなたそんなキャラだったの!!?テメェ俺にどんな電話してきやがったか覚えてねェのか!!?」
「『八月十日の夜、テメェん家と身体一つ空けとけ。お前の飼ってるらしい白い獣ってヤツだけは許してやる。だが他に誰かいたら…判ってんだろうなァ、銀時ィ。…オヤサシイお前は誰も巻き込みたくなんかねェ…だろう?』っつったな。」
「そうだ…しかァし!!その流れで!なんでケーキなの!?お前が乗りこんで来るっつーからこれはいよいよ紅桜ン時の決着付けにゃならんのかとハラハラドキドキして危険だからっつって従業員強制退避させた俺の立場は一体!!?あの時の俺の苦労は一体!!!?」
「………ただの早とちりじゃねェか。俺のせいにすんな。」
「んがぁあ…っ!お前、自分がどんな立場でどんなキャラなのか判ってんのか!?ギャグとかネタ担当じゃねェだろうが!!頼むからお前独りぐらいちゃんとシリアスやっといて下さいお願いします!」
「銀時、ケーキ。」
「人の話を聞けぇえぇええぇいッッ!!」

いっそ大袈裟な素振りで、銀時はぜぇはぁぜぇはぁ、肩で息をする。荒い息を吐き、忙しなく酸素を補給しているその姿を一瞥してから、椅子に背を預けた。
懐から煙管入れを取り出すと、刻み煙草を素早く丸めて詰め、火を付ける。ライターなんて邪道な物は使わない。しかし、この季節に囲炉裏は無いので、マッチで。
一度煙で肺の中を満たして、ゆっくり吐き出す。それから、灰皿を寄こせと無言で手を差し出すと、ムスッとした表情で灰皿を寄こした。年季が入ってる割にあまり使われていない所を見ると、こちらも来客用かと見当付けた。コイツは昔から煙草よりも、甘味に金を注ぎ込む変わり者だった。こんな所も相変わらずらしい。

「そんなに叫んでて疲れねェか?」
「暫く見ねェ内に変わっちまったのか…晋ちゃん。あなたこの世で一番やっかいな天然さんという名の新人類に変わっちまったのね……」
「…ヅラと一緒にすんじゃねェよ。」
「ヅラが天然なのは認めるが、アイツよりよっぽどタチ悪い事を自覚しろ厨二病。」

なんだかんだ憎まれ口を叩きながらも、台所に引っ込んで作業を開始する銀時の姿が、昔の光景とダブる。
本当に、コイツは…何も変わっていない。なのに―――…と、先生の姿が見えない事に、寂寥の思いが胸を過る。でもそんなものにはもう、とうの昔に慣れてしまった。
俺の気配の揺らぎに気付いたのかなんなのか、ガチャガチャ作業しながら、溜息交じりに銀時は笑ったようだった。

「…なんだよ。」
「センチメンタルなんだなー、晋ちゃんは。」
「殺すぞ。」
「あっ、そうそう。ケーキ代の領収書、鬼兵隊宛てに切って請求すっからな。」
「…………。」


―――自分の懐に入れた相手に甘く、しかし容赦がない所も…相変わらずだった。