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四谷 由里加
四谷 由里加
novelistID. 31889
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貴方がいないと俺の世界は作れない

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場面が変わる。くるくると、変わる。
絶望に満ちた顔、慟哭する顔、泣き顔、怒りに燃えた顔…―――時には笑顔もあったが、それはどこかが欠けた、空っぽな笑顔だった。
当然、記憶にあるのは自分の表情じゃない。同じ塾生達のそれの方が、圧倒的に記憶に残っている。
一番落ち込んだけれど、一番立ち直るのも早かった銀白色の表情が、中でも一番印象に残っていた。
(それは、表面上だけのモノだという事は、解っていた)(でも、知らないふりをするしかなかった)
(だって俺達は皆、度合いは違えど同じ傷を抱えているのだから。)

それを見て俺は、嗚呼、俺達の本当の笑顔はあの人があの世へ持って行ってしまったのだと、そう思った。あの人は、そんな事望んでなどいないだろうけれど。

―――今でも、その意見は変わっていない。

きっと俺は、あの世界の中で、あの人の塾生の中で。誰よりも一番子供だったのだろう。身体と頭脳は成長したけれど、今現在ですらも情緒はあの頃と殆ど変っていないように思う。
ただ、先生が死んだあの頃から徐々に、俺の表情は削がれていったから、落ち着いて見えるようになった。それだけなのだ。
誰よりも近しかったあの銀白色と、まったくもって気に食わないが、頭でっかちの長髪の野郎だけは、それを正しく理解していたのだろうと思う。
誕生日の願いを聞き入れてくれなかった神を嫌悪し、先生を奪った幕府を恨み、結局すべての元凶である世界の流れを憎んだ。
憎しみを原動力に新たな恨みを己の中で作り出し、俺は自分の中の恨みや憎しみなどといった負の感情を進化させていった。
…そうしないと生きていけなかった。それが俺の生きる糧であり、目的であった。
あの人の居ない世界に、俺は、何の価値も見出せない。
あの人を忘れていないのに、(忘れられる筈がないのに、)のうのうと生きているあの二人を恨んだ事もある。俺と同じモノを抱えているのに、どうして。どうして、何故、あんなに穏やかに日々を過ごす事が出来るのか―――俺には、理解出来なかった。
それは俺が、自分の感情をうまく昇華出来ないからだというのは、解っていたけれど。