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四谷 由里加
四谷 由里加
novelistID. 31889
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Our Eternal Destiny Ⅰ

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「―――よく…此処が判りましたね…、臨也さん。」

微かな物音と気配を感じて、扉に目を向ける。思った通り、そこには、黒と…赤。
美しく、魅力的な―――…僕にとっての最悪の敵が、佇んでいた。

「まぁね。俺は、素敵で無敵な情報屋さんだから。」

明かりを灯していない倉庫内には、当然、光は無い。扉の向こうの微かな月明かり。それだけが、この空間に色を与えていた。
少しずつ、臨也さんは距離を詰めてくる。黒と赤…それ以外の印象を抱かせないその姿は、さながら死神のようだった。―――いいや、僕にとって彼はまさしく、死神そのものだった。
表情は、見えない。でもきっと彼は今も、いつもと同じ笑みを浮かべているのだろう。人を見下したような、けれどどこか愛に満ち溢れた―――神のごとく振舞う微笑みを。
その表情はいつからか、僕の恐怖の対象だった。
正臣に警告された時からだろうか。人を弄ぶ様を見た時からだろうか。それとも。完全に、僕の敵になった時だっただろうか。とにかく、僕は彼が怖かった。それは本能的な恐怖といっても良い。危険だと知っていた、知らされていた。でも、非日常を求める僕はそれをスリルがあるというただの好奇心だけで捉えた。捉えてしまった。
そもそも、それが間違いだったという事に気付いたのは割と最近だ。…思えば、あの時には既に、こうなる事をどこかで予感していたのだろう。
そう…、怖かったのだ。少し前まで。だけど、今は。

不思議と、怖くは無かった。

とうに自分の心の整理を付けていたからかもしれない。…それは、悲しい事に、覚悟というものと全くの同義だった。

「では、素敵で無敵な情報屋さん。一体、私に何の御用ですか?」
「当然。…決着を、つけに。」

外の喧騒はどこか遠く、この場は静まり返っている。自分たち以外に人は居らず、こんな所に来る人間もそうそう居ない。(僕を探している人間でも、ここは簡単には見付けられないだろう。)この廃倉庫は、最後の決戦には最適だった。これほどふさわしい場所はない。(一番ふさわしいのは、きっと池袋の僕の家だけれど、)(あそこはもう、ダメだった。邪魔が入ってしまうから。)
此処は、そう遠くはない昔、かつて黄巾族が塒にしていた場所。罪歌の騒動の後の内輪揉めで、自らのチーム以外にそこが黄巾族の塒だと知っている人間が増えた為、彼らは塒の場所を変えた。
―――思えば、あそこが。あの時が、ひとつの岐路だったように思う。
あの時、正臣が消えてしまわない内に、自分の持つ全てを話してしまえていたら。園原さんとも、きちんと、3人で…話が、出来ていたなら。
こんな風には、ならなかっただろう。

「私が此処で独りこうしている以上、私の負けです。一対一では、貴方には勝てない。私には、逃げられない。」

逃げる気も、ない。
どうにか逃げようと思えば逃げられたに違いないけれど、そんな気は更々なかった。
気力も、体力も、知力も。絞り出すのはもう疲れたのだ。

「最終警告だ。……ダラーズを手放すと言って、帝人くん。」
「―――それは出来ません。もう、私………いいえ、僕には。ダラーズだけしかないんです。」

手放せば、もしかしたら、殺されはしないかもしれない。まぁ、殺されはないってだけで、奴隷のように使われるだろう。(それだって、いつまで持つか知れない)
生き残ったって、僕のこの手には何もない。自分1人が生きる為に、ただ怠惰に息をする。そんな日常なんて、僕にはとても耐えられない。
(―――可笑しいな。自殺願望なんて、なかった筈なのに…)
不思議と、心が凪いでいる。確実に忍び寄ってきている、死への恐怖は感じていない。清々しくはないが、スッキリした気分だった。重かったのかもしれない。僕が好んで背負った、全てが。

「ねー帝人くん。もうさ、全て投げちゃってさぁ……俺と一緒に、逃げない?」
「ふふっ…申し出は嬉しいですけど、臨也さんってば遅いですよ。そんな情熱的なセリフは、もっと早くに言ってもらわないと。こんな事になってからなんて、今更すぎますよ。どう頑張ったって無理じゃないですか。」

(嬉しいです、本当に。…でもね、臨也さん。僕は、もっと早くその言葉が聞きたかった。)
冗談と取れるように軽く言ったけれど、本当にそんな風に思った事を、彼は知らない。知る筈がない。知る術はない。そして、知らなくていい事だと、帝人は思う。
―――己は、彼の前から消える。もうすぐ、死に逝く者なのだから。

「代わりにね、臨也さん。お願いがあるんですけど………聞いてもらえますか?」
「お願い…ねぇ…。でもさ、君、解ってる?君は賢いんだからそれくらい、理解している筈だろう?」
「えぇ。」
「…君を此処まで追い詰めたのは…他でもない、俺なんだよ。」
「―――知っていました。僕の敵が貴方でさえなければ、きっと、僕はこんな所まで来なかった。こんな風にもならなかった。」
「なら、」
「だから。責任を、取って下さい。」

言葉を遮る。何か思う所があるのか、彼の、普段無駄によく回る口は、調子が悪いようだった。好都合だ。自分のペースに持ち込んで、思い通りに相手を動かす。主導権を握らせない。これは、彼の専売特許だけれど、今だけは…僕に、使わせて欲しい。


「貴方が、僕をここまで引き摺り出したんだから。勿論その責任、取ってくれますよね…臨也さん。」


これが、最後だから。


「貴方は、自分の愉しみの為に僕の人生を、僕の周りの人の人生を狂わせた。めちゃくちゃにした。十分、愉しかったでしょう?愉しめたでしょう?だから、お願いします。」



最期、だから。




「僕の周りの人達を、両親を―――裏の世界の人間から、守って下さい。」