こらぼでほすと 拉致2
いや、いろいろと欲しいというか願いなんてものはあるのだが、現実的なものではないから、ニールも口にしない。例えば、アレハレとか黒子猫とか紫子猫とか桃色子猫とか、そういうのが配達されたら嬉しいのだが、それは無理だと解っている。
「刹那を捕獲して届けようか? クリスマスには無理だけど年末なら、僕、捕獲してくるよ? 」
「バカッッ、そんなことすんなっっ。おまえがSフリーダムで飛び回ったら、いろいろと不都合だってーのっっ。」
「そんなの迷彩皮膜被るもんっっ。」
キラだって、ニールが欲しいクリスマスプレゼントの予想としては、そこいらだ。店が休暇に入って準備までの時間になら、捕獲して来られる。だから、そう言ったのだが、ゴチンと拳骨を食らった。
「わざわざ危険な真似を遊びでするな。」
「うーーーママ横暴。」
こしこしと頭を擦ってキラが睨む。それを見て、ニールは苦笑して、キラの頭を撫でる。
「・・・・ありがとな、キラ。でも、それはしないでくれ。刹那は自分の考えで世界の歪みの確認をしているんだ。それを中断させる真似はよくない。」
「意地っ張り。」
「そうかもな。・・・そのうち戻るから放置してやってくれ。」
「・・・わかった。」
なでなでされてキラもこくんと頷く。そう言われたら、それはできない。やったら、確実に拳骨どころかタコ殴りが待っている。
「ニール、洗い場の応援いけるか? 」
そこへ紅が声をかけてくる。はいよ、と、二つ返事で、ニールは厨房へ走る。それを見送って、紅は苦笑する。
「キラ、それは黙ってやったら有効だが、宣言するのはいただけないぞ。」
「だって、楽しみにしてくれればいいと思ったんだ。」
「おまえが動くっていうのは、ニールにはネックだろーぜ。なんかあったら、どうにもできないからな。」
ニールがMSに搭乗できるなら、自分で逢いに行くだろうし、キラのフォローもできる。だが、それができないニールとしては、キラの無茶は止めるしかない。何かあっても、自分は何もできないからだ。秋に刹那が連合のレーダサイトに察知される事態が起こった。あれで、『吉祥富貴』に多大な迷惑をかけたから、できるだけ、そういうことになりそうなことは阻止するだろう。紅は、そこいらを説明すると、キラも、うーと唸りつつ納得はする。
「でも、一番嬉しいと思うんだ。」
「なら、暗号通信で帰ってくるように指示出せ。そのほうが安全だ。」
「それはやってるんだけど、反応が無い。」
キラだって、そちらはやってある。だが、黒子猫からの帰還連絡は入らない。どこかに潜伏してフリーダムを降りているのか、連絡自体が届かない深海にいるのか、とりあえず返信が来ないのだ。
「バカ、そういう場合、『ニールが風邪引いた』だ。それなら、すっ飛んで帰ってくらぁ。」
「あっっ、紅っっ、すごいっっ。そうか、そうだよねっっ。それなら帰ってくるよね。・・・あーん、なんで僕、そういうことに気付かないかなあ。さすが、紅。伊達に、悟空のライバルやってないよね? 」
「おまえ、今、何気に俺のこと、謀略に長けたヤツって評価してなかったか?」
「ううん、腹黒キャラ?って、考えることが凄いって思っただけぇ。」
「こんなもん、正攻法だっっ。もっとエグイことしやがるくせに、おまえのほうが腹黒だ。」
「えへっ、誉められちゃった。」
「誉めてねぇーしっっ。兎に角、そういう方法を使え。」
「了解。紅は食べないの? 」
もぐもぐとサンドウィッチを口にしているキラは、怒鳴るだけで軽食に手をつけない紅に尋ねる。おお、と、紅も気付いて、ばくばくと生春巻きにかじりつく。動きまくるので腹は空く。時間があれば軽食で腹を満たすのは繁忙期の基本だ。
「紅、スープ飲みたい。」
「ちっっ、人使いの荒いヤツだな。ほらよ。熱いから気をつけろ。」
なんだかんだと厳しいことは言うが、紅も世話好きには違いない。キラにスープを運んでいたりはする。
作品名:こらぼでほすと 拉致2 作家名:篠義