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こらぼでほすと 拉致4

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「・・・天下の歌姫様が、よろよろとパーティーに出席して、そこで倒れたら、世界はどういう評価を下すか、わかるか? ラクス。・・・・・世界は、天下の歌姫様は弱って使い物にならないって評価される。そうなったら、おまえが復帰しても、その評価は覆らない。また倒れてしまうだろうから、歌姫の歌も届かないものになった、と、言われるだろう。・・・今、キャンセルするのと、無理して出席するのと、今後の将来的にどちらが不利益か、わかるよな? だいたい、おまえ、俺には過保護にするくせに、自分はどうでもいいっていうのか? そんなのおかんとしては許せないぞ。」
 だから、今はゆっくり休もうな? と、抱き締められる。一人で意固地になっていた心が溶かされてしまうと、どっと身体も重くなる。だが、本当にいいのだろうか、と、心に疑問は残っている。『吉祥富貴』のためには、自分の顔は最大限に世界にアピールしておくものだ。
「ですが、ママ。私くしの仕事は・・・・」
「わかってるよ。おまえさんが、うちの看板だ。だが、それは、おまえさんが身体を犠牲にしてまですることだとは思わない。というか、俺は、おまえさんがダウンするのは怖いよ。・・・な、ラクス。頼むから俺の言うこと聞いてくれないか? 」
「・・・怖いんですか?・・・」
「・・・怖いよ。いつも元気に輝いているおまえさんが弱ってるのなんて、怖いよ。俺は、おまえさんが輝いている姿で、ダウンしてる俺に小言を言うのが嬉しいんだからさ。おまえさんが弱ってると心配で気が気でない。」
 いつもとは立場が逆だ。いつもは、ママがダウンしているのに無理しようとするから、ラクスが小言を言ってベッドに沈めている。そのママが、自分がダウンしていると怖いと言う。それは、ちょっと嬉しかった。それぐらい、ラクス自身のことを気にかけてくれているということだからだ。
「・・・そんなこと考えたこともありませんでした・・・」
「俺は、おまえさんのおかんなんだろ? 心配はするぞ。」
「・・・心配してくださるんですね? ・・・」
「当たり前だ。キラだって、同じこと言うはずだ。」
「・・・キラには知らせないでください。・・・約束したのです。」
 絶対に無理しない、と、約束した。それに、今はラボでセキュリティーシステムの配置を開始している頃だ。そんな時に、自分のことで煩わせるわけにはいかない。
「知らせないから休んでくれるな?・・・ラクス、俺がついてるから寝ような?」
「・・・フェルトのお迎えにはいってくださいませ・・」
「いや、トダカさんが出迎えて、こっちに案内してくれる。だから、フェルトのほうは大丈夫だ。」
「・・フェルトががっかりします・・・それはいけません・・・」
「そんなことぐらいで、がっかりしない。それに、フェルトとも遊ぶんだろ? それなら、早く体調を戻さないとな。あいつ、一週間しかいないんだぞ?」
「・・ええ・・・・ええ・・特区の正月行事をいろいろと・・・」
「うん、そうだろ? だから、今日はもう寝ていような。おまえさんは、コーディネーターなんだから、寝てれば、すぐによくなる。」
「・・・はい・・・一日休めば・・・」
「よし、明日には復活だ。」
「・・はい・・・」
 ママは抱き締めたまま、いろいろな楽しい提案をしてくれる。それがイヤではない。むしろ嬉しくて泣けてきた。今まで、こんなふうに自分自身を慮ってくれる言葉は聞いていない。護衛陣たちやスタッフも、気にしてくれているが、それとは少し意味合いが違うものだ。
「・・・ごめんなさい・・・私のために・・・フェルトのお迎え・・」
「いいから、気にしなさんな。おまえさんの状態を見れば、フェルトも納得する。・・・大丈夫だよ、ラクス。なんにも悪くないから。」
 きっと誰かに聞いて飛んで来てくれたのだろう。いつも、ママは無理をするな、たまには吐き出せ、と、甘えさせてくれる。一人で気張ってきたラクスには、こういう避難場所は今までなかったのだ。なんとなくほっとした気分になる。おかんだからこそ、そう言ってくれる。『吉祥富貴』の活動としては必要なことでも、ラクス自身が弱っているならキャンセルさせる、なんていうのは、ママだけだ。そして、叱られて、それを素直に認められるのは、ラクス自身が、ママニールには、『吉祥富貴』の繋がりなど求めていないからだ。ただのおかんであることを望むから、ニールもおかんとして接してくれている。
「・・・ママ・・・喉が・・」
「はいはい。」
 水でいいな、と、ミニバーからペットボトルを取り出して飲ませてくれる。はふっとラクスも息を吐いた。それからパタパタと洗面室へ行き、温かいタオルを作って顔も拭いてくれた。
「さて、着替えさせてもらおうか? 」
「・・・はい・・・」
「化粧も落とすんだよな。」
「・・・今・・・すっぴんです・・」
「そうか、じゃあ身体拭いてもらって着替えさせてもらおう。」
「・・・ママ・・・してください・・」
「そればかりはご勘弁だ。着替えが終ったら戻って来る。」
 横になってろ、と、ベッドに横にされた。すぐに、ママは出て行ってしまったが、看護士と本宅の者がやってきて清拭と着替えをさせてくれる。もう無理して行こうとは思わない。行かなくて良い、と、断言してもらったら、ラクスも休もうと思えた。いつもは、誰も断言などしてくれない。だから、限界を超えてでもやってきた。

・・・・今、慌てることはない。本気で倒れても立ち向かわねばならないのは、これから先のことでした。・・・・・・

 今が正念場ではない。来年の後半辺りからが本気の正念場だ。そこでなら、ラクスも、ニールがなんといおうと突き進むだろうし、ニールも止めたりしないのかもしれない。だから、今はいいのだ、と、歌姫様も自分を納得させられた。



作品名:こらぼでほすと 拉致4 作家名:篠義