キミとボクの恋戦争
「ちょっとお二人さん、部活サボって何してんのかな~?」
少し唇を掠めたあたりで、甘いムードをぶち壊す我らが部長様の怒りの声が聞こえた。
思わず仰け反ってしまい、丁度真後ろにあったロッカーに思い切りぶつかってしまう。
「しし、しら、白石!?」
「…っち」
「ユウジ焦り過ぎ。財前、舌打ちするんやったら、聞こえんようにやりなさい」
ニコニコと人のいい笑顔をしているように見えて、実は目が全然笑っていない。
これは完璧に怒っとるサインや。
「はぁ…やっと付き合う事になったんは祝ったる、おめでとさん。せやけど、続きは部活終わってからにしてくれへん?ましてや、ここで一発始めようとした時には…わかっとるやろな?」
にこっと女性を魅了させる笑顔で冷たく言い放つ。
縮こまってしまった俺は、訳が分からないまま短く返事をする。
光も不機嫌極まりない表情で、仕方なく了解の返事をしていた。
「わかってんねやったら構へんねん。ほな、はよ着替えてコート来ぃや?五分以内に来んかったら…わかってるやろな」
この部長は何を考えているのか分からなくなる時がある。
でも、きっと約束を破ろうものなら、その先に待ち受けるのは拷問という名の恐怖だと思った。
白石には、小春とは違う意味で敵わへん。もうただただ怖い…!
「わかった!わかったから、はよコート戻りや!部長居らんと部活にならんやろ!?」
「せやな、ほな先行ってんで」
ぱたん、と扉が閉められてほっと一息吐く。
「ほら、光、はよ着替えてコート行くで!白石に何されるか…考えるだけで恐ろしい」
ぶるっと恐怖に身体を震わせ、大慌てでジャージに着替える。
「先輩、ほんなら、部活終わったらちゃんとしましょね?」
「?…!お、おん、わかった」
あかん、治まった熱がまたぶり返してきよった。
それに気付かれないように、先に着替えを済ませた光の背を強めに叩き、扉の外へと押し出した。
(ちゅーか、お前、俺のファーストキス簡単に奪いよって!しかも、…べ、べろまで入れてきよってからに…!最低やなお前ッ)
(せやかて、先輩があんな嬉しい事言うてくれるから。しゃーないっすわ)
(そら俺かて告白紛いの事言うてもうたけど…普通俺の返事待ってからするやろ!…って待てまてコラ!お前は言うてる尻から何をしようとしとんねん!?)
(さあ?ナニ…でしょうね)
(ドヤ顔で何を言うとんねんアホ!)