二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

B.R.C 第一章(2) 奪われた神具

INDEX|5ページ/11ページ|

次のページ前のページ
 

#14.持ち去られた神具【BR】



「ちょっと聞いてくれるかな?」

 沢田は、日番谷の報告を聞き終え、幹部の者達と視線を交わした後、日番谷に向かってそう口を開いた。
 訝しげに眉を寄せて先を促せば、半年前に霊界で起きた騒動に関して、日番谷に伝えられる。
 霊界には霊王の他に、王族と呼ばれる、尸魂界の上級貴族、それこそ四大貴族よりも上の身分に当たる者たちが居る。
 そんな王族から、謀反を起こした者が出たという。

「謀反?」

 今の霊王が即位してからというもの、霊界は霊王の性格を表すかのように穏やかな日々を数百年過ごしている。誰もが霊王を慕っていると思われたが、やはり、一人は「我こそが」と思う欲深い輩という者が居るようだ。
 意外ではあったものの、考えられない事でもなかったため、日番谷の驚きは小さかった。

「主犯は孫条寺(そんじょうじ)家の頭首、克吉(かつよし)。すでに孫条寺の者とそれに力添えをした者は、霊王守護者と俺達で然るべき措置を取ったんだけど……主犯には逃げられてね」

 そして、その共犯者の中に、霊王仕えの者が一人居た。その者によって、霊界が保管していた神具の一つが奪われ、孫条寺克吉に渡ったという。

「奪われた? 神具は、霊王守護者が交代で管理してんだろ?」
「どうも、管理担当がその日はスカルだったらしくて……」
「あー……」

 納得というか、何というか。日番谷は遠い目をした。

「絶対スカルの野郎は霊王守護者から外した方がいいっスよ、十代目」
「うーん……、霊王がいいって言ってるから、俺は何とも……。まぁ、その件は置いておいて」

 渋い顔で言う「嵐」の守護者、獄寺隼人に、沢田は後ろ髪を掻きながら応え、今はそれよりも、と話を戻す。

「その持ち出された神具っていうのが、『王珠(おうじゅ)』でさ。主犯の孫条寺克吉と、その王珠の行方はこちらでもまだ把握出来ていないんだ」

 霊界で保管されている神具の一つ、『王珠』。
 小指の先ほどの十四個の球が連なる数珠。その一つ一つは強大な霊力の結晶。それを身につければ、それこそ世界を草の根も生えない荒野に変えてしまう程の強大な力を手に入れることが出来ると言われている。
 霊界は幹部の指示で王属特務の隊士たちが隅々まで捜索しつくした。霊王や上層部、王族たちの身辺は幹部や霊王守護者が手分けして探りを入れたが、孫条寺自身どころか彼が居たという痕跡すら見当たらなかったのだ。
 現在、捜索の手は現世や尸魂界にも伸びている。
 日番谷は、沢田から聞く霊界の状況と、自分がこの目で見聞きして来た尸魂界の状況とを照らし合わせ、とある可能性に行きあたる。

「……その騒動があったって言うのは、半年前だったよな?」
「今日でちょうど半年だね」

 確信した。
 日番谷の目がすっと細まる。
 日番谷の報告を聞いた時の彼らの様子から考えて、おそらく、彼らも日番谷と同じ結論に辿り着いたはずだ。

「中央四十六室の内情の調査を開始しよう」

 沢田の声に、異論も疑問の声も上がらなかった。

「王属特務として入る訳にはいかないから、潜入調査になるんだけど」

 チラリと沢田の瞳が、「霧」の守護者へと向けられる。
 心得ていたのか、六道はすでに立ち上がっていた。

「それでは、僕はこれで。潜入調査となると、こちらにも準備というものがありますので」
「うん。頼んだよ、骸」
「ヘマして十代目の足を引っ張んじゃねぇぞ」
「クフフ、それは心外ですね。あなたと一緒にしないでいただきたいものです」
「ああ?! んだと、このパイナップル野郎っ!!」
「ちょ……っ、ご、獄寺くんっ!」

 待ちやがれっ、と椅子を蹴倒して立ち上がり、部屋を出ようとする六道に火の点いたダイナマイトを投げつけようとする獄寺を、沢田が慌てて止めに入る。その間に、六道は悠々と部屋を後にした。

「獄寺くんはいつもよく働いてくれるから、助かってるよ」
「じゅ、十代目……っ!! そんな、もったいないお言葉……っ!!」

 宥める沢田に、目を輝かせる獄寺。
 溜息を吐いて、火花を散らして燃える導火線の先を指で摘まみ、じゅっと火を消すのは、そう言えば自分の仕事だったな、と数十年前までの日常を思い出す日番谷だった。

「久しぶりに見たけど、やっぱ熱そうだよな、それ」

 その様子を見て緩い笑みを浮かべながら声をかけて来た「雨」の守護者、山本武に、「別に」と素っ気無く返し、日番谷も部屋を出た。
 戸を閉める前に見回した室内に、何時の間に消えたか「雲」の守護者である雲雀恭弥の姿はすでになかった。
 獄寺と山本が口喧嘩を始め、そこに止めようとして「晴」の守護者笹川了平が入ったものの、獄寺と笹川がさらに熱い口論を始めた。それを山本が宥め、沢田が苦笑いを浮かべて見守り、「雷」の守護者で日番谷の次に年若いランボが巻き添えを食って情けない声を上げる。
 そんな騒がしい声に背を向けて、日番谷は六道の下を目指す。尸魂界に潜入するというのであれば、尸魂界の地理や中央四十六室のことについて話をしておいた方がいいだろう、と思ったからだ。
 王属特務、特に幹部は、滅多に霊界を出ない。六道が尸魂界について、無知とは言わずも詳しいとは思えなかった。
 託した日番谷の情報が役に立ったのかどうかはわからないが、六道はそれから二カ月後、共に連れて出た部下三人と共に、無事霊界へと帰還した。
 その手が持ち帰った情報は、日番谷が思っていた以上に酷いものだった。