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B.R.C 第一章(2) 奪われた神具

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#13.日番谷冬獅郎【BR】



  粗方、王属特務の説明が済んだところで、次に日番谷について話が移る。

「一番気になるのは、隊長はいつから王属特務だったのかってことよね」
「雛森さんとは幼馴染だと聞いていますが……、もしかして、その時にはもう?」

 松本と伊勢が揃って首を傾げる。

「いや、俺が王属特務に行ったのは、霊術院を卒業した後だ」
「日番谷くんって、確か……」

 雛森は、日番谷の霊術院時代を思い起こす。
 雛森や吉良、阿散井が卒業した年に、日番谷は霊術院に入学したはずだ。そして、入学して間もなく類稀なる才を発揮し、天才児だ神童だと騒がれ、あっという間に飛び級し、終いには卒業式を待たずして霊術院を去ったという、とんでもない記録を叩き出した。

「その後って、隊長。確か、隊長は一番隊で総隊長直属の特別隊士として活躍されていたんじゃなかったんですか?」
「私どもはそう聞いております。日番谷隊長が、一番隊所属であったと言われながら隊士として名を連ねていないのは、総隊長直属の隊士として、権力に守られた貴族邸への潜入調査員として活躍をされていたため、その存在は隠されていたのだと」

 松本に答えたのは雀部だった。
 続いて、「僕らもだよ」と声を上げた京楽は、日番谷の隊首試験に立ち合った隊長の一人だ。

「卒業と同時に王属特務に引き抜かれる際に、総隊長の了承を得たから、総隊長ははじめっから俺の事を知ってたんでな。そうやって口裏を合わせてくれって俺が総隊長に協力を申し込んだんだ」
「じゃあ、日番谷隊長の経歴は嘘なのかい?」
「一番隊隊士として記録されている分は嘘だな。その間、俺は王属特務として霊界に居たんだ。一番隊で働けるわけがねぇだろ」

 目を丸くする浮竹に、あっさりと嘘を認める日番谷。そして、そもそも、と呆れたような目線を雛森に向ける。

「お前は変だと思わなかったのかよ。霊術院を卒業してから隊長として就任するまでの十年余りの間で、俺は身長がほとんど変わってねぇんだぞ」
「え、そ、それは……よっぽどシロちゃんの発育が悪いのかと思って……」
「ついでに言えば、お前ら全員変だと思えよ。隊長になってから身長伸びてねぇんだぞ、俺は」 
「えー、それは、隊長がよっぽど発育が悪いのかと思って、皆気を使って気付かないふりをしてあげてたんですよ。ほら、隊長ってばちっさいって言ったら怒るじゃないですか」

 雛森と同じことを繰り返す松本。付け加えたようにちっさいと言えば怒る、と言い出した彼女に、日番谷はぐっと眉根を寄せた。
 むっつりと不機嫌顔になった日番谷に、沢田が一人、「ああ」と納得顔で手を打ち鳴らす。

「日番谷くん、幹部の中で一番背が低いから、時々「小さい」ってからかわれてるんですよ。たぶん、条件反射なんじゃないかな?」
「余計なこと言うな、沢田!」

 尸魂界では護廷十三隊の中でも下から二番目という幼い容姿で史上最年少隊長と称されていた日番谷だが、霊界においても彼は一番小柄で、年少であった。
 「小さい」ということでからかう者はどの世界にも居るらしい。

「でもよ、冬獅郎。何でお前でっかくなったんだ?」

 日番谷から漂う怒りという名の冷気に冷やされる身を、腕を擦る事で慰めながら一護が問う。

「でっかくなったんじゃねぇよ。これが本来の姿だ」

 身長は一六七ほどだろうか。伸びたとは言っても、まだ小柄だ。少年から青年に変わる途中のような、幼さと精悍さの両方を兼ね揃えた容姿は、美青年と呼ぶに相応しい。白銀の髪は腰元まで伸び、サラリと揺れる。

「本来の霊圧を隊長格に相応しいくらいにまで限定霊印で抑えたら、身体まで縮んじゃったんだよね」
「あの時の屈辱は絶対忘れねぇ……」

 一体何があったというのだろうか。拳を握りしめて肩を震わせる日番谷に色んな意味で薄ら寒さを覚える。そんな彼に沢田は、あはは、と苦笑い。

「そうまでして、何故日番谷くんは尸魂界に?」
「ま、所謂ストッパーだな」

 問う藍染に、ゆるりと顔を上げて応えた。

「ストッパー、すか?」

 繰り返す檜佐木に一つ頷く。

「現世と尸魂界で起こった事件は死神が尽力するが、霊界で起こった事件に尽力するのは俺たち王属特務だ。その王属特務の役割に『予防・防衛』っつーのが出来てな」
「尸魂界と霊界は縦に位置する世界だという事は知ってますよね? つまり、『予防・防衛』というのは、危険分子を尸魂界で排除することで霊界を揺るがすような危険から霊界を守ろうって言うものなんです」
「で、それに幹部の中で唯一尸魂界から引っこ抜かれた俺が選ばれたって訳だ」

 ある種潜入調査とも言える。
 そうして紛れ込んでいた日番谷は、尸魂界の死神として霊界へ危害が行かないように働いていたのだが、ついに霊界の力を借りざるを得ないような事件に遭遇した。それが、今回の中央四十六室の件だ。
 中央四十六室を相手にするには、護廷十三隊の隊長という肩書きは少しやっかいだった。

「どうにかして沢田に連絡を入れたかったんだが、何処に中央四十六室の目があるかわかったもんじゃねぇからな。なかなか動けないでいたんだが、瀞霊廷を追放された上に虚圏に追いやられたのを機に、霊界に戻ることにしたんだ」

 虚圏に入れば、例え高度な技術を誇る技術開発局であっても、簡単には霊圧を探知することは出来ない。霊界へ戻るには、またとないチャンスだった。
 王属特務幹部の有する指輪には通信機能が付いており、霊界における技術専門部に繋がるようになっている。日番谷が虚圏から抜け出せたのも彼らの活躍のおかげだ。
 霊界に帰還した日番谷は、すぐに沢田ら王属特務幹部に尸魂界の現状を報告し、中央四十六室への潜入調査を願い出た。しかし、その報告を聞いた彼らは、互いの顔を見合わせた後、日番谷にとある事を告げた。