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彷徨う旅人の行く末に

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―――俺には、誰にも言えない秘密がある。
それは、実の弟を、愛してしまった事だ。
男同士だとか、実の双子の兄弟だとか、そんなことは関係ない。
一人の人間として、心の底から愛おしいと思ってしまったのだから。
陽毬へ向ける想いは自覚していたが、晶馬にまでこんな汚い想いを抱いていると気付いた時は、正直絶望した。
つくづく悲恋の神様に魅入られているのだな、と己の境遇を呪いたくなった事は許してほしい。

自覚してしまってからはなるべく晶馬と距離を置こうと、今まで以上に女を掻き抱いてみた。
だけどそうすればする程、晶馬の影が頭にちらつき、しがみ付いて離れない。
晶馬ならきっと、こんな下品な喘ぎ声なんかじゃなく、甘美な声で啼いてくれる。
晶馬ならきっと、穢れた噛み付く様なキスなんかじゃなく、何時まで経っても初心の切なくて甘い蜜の様なキスをくれる。
晶馬ならきっと、醜い媚びるような嗤いなんかじゃなく、汚しても穢しても綺麗なままの輝いた笑顔でいてくれる。
晶馬なら、きっと。
何度そんな汚らわしい想像で弟をこの手に抱いただろう。

俺は背徳的な想像の中で、弟と何度も何度も繋がった。
そうした後には必ず後悔が押し寄せると分かっていても、そうすることを止められなかった。
夢の中だろうが何だろうが構わない、晶馬をこの手にしたい、という欲求は抑えられない。
所詮は自己満足の世界だ。

否定すればする程、想いと言う名の芽は膨れ上がり、水も肥料も何も施さなくても勝手に育っていく。
別に晶馬に陽毬の代わりをさせたいと思ったわけではないし、ましてや陽毬に対する想いを晶馬に重ねたわけでもない。
陽毬は陽毬で、晶馬は晶馬だ。
大切な妹と弟、どちらもなくてはならない掛け替えのない存在。
だけど、今一番俺に必要なのは、大事な大事な片割れの存在だと気付いたのだ。
この治まらない熱も、満たされない心も、埋められるのは晶馬だけ。

俺は弟の愛を欲している。
喉から手が出るほど、欲しい、欲しくて欲しくて、でも手に入れられなくて、気が狂ってしまいそうだ。
この手に閉じ込め、飽きる程繋がって、お前の存在を、俺の存在を確かめたい。
そうだ、俺の存在は、晶馬が居て初めて成り立つものなのだから。
晶馬が居なければ、この世界に意味など無い。
晶馬があって、俺の世界が存在するのだ。


晶馬、晶馬、しょうま、
いつか、この気持ちが溢れ出したその時には、きっとお前を滅茶苦茶に壊してしまうだろう。
誰の手も届かぬ場所に閉じ込めて、何度もその官能的な身体を貫いて。
そしてお前は、俺だけを見詰めて、俺の為だけに笑って―――俺だけの為に、生きる。
ああ、可哀想な晶馬。
この手に堕ちたら最後、お前は二度と這い上がっては来れないんだろうな。
それでも、そんなお前を憐れみ救おうと、踏み止まろうと思う気持ちより、俺は自分の欲望のままに突き進みたいと思うんだ。


「…ほんっと、最低だってわかってるけど、愛してるんだ、晶馬」

だから。

愛してるって、そう想う事をどうか、許してほしいんだ。
そして、出来る事なら、お前も俺を想って笑ってほしい。

身勝手な兄ちゃんだけど、お前ならきっと、許してくれるだろう?
じゃないと、俺は孤独に押し潰されてしまうんだ、だから―――


情けない言葉は、音楽の世界に舞い戻った弟の耳に届く事はなかった。
作品名:彷徨う旅人の行く末に 作家名:arit