たいばに 兎虎 抱擁
「そうすると、こうなるだろ? 」
「だから、これでいいんです。・・・・・僕、この一年いろいろと考えましたが、あなたと一緒にやりたいことばかり考えていました。僕にとって、あなたと居ることが一番大切で、あなたがいないとダメだと理解しました。結婚してくれとは言いませんから、あなたの傍にいさせてください。」
何をやろうとしても、僕の大切な人との絆が切れないようなことを考えていた。だから、どれも実現できなかったのだ。けっして、僕の大切な人は、そんな提案を受け付けてくれないことはわかっていたからだ。
僕が出した結論に、虎徹さんは、あーあーとがっくりと肩を落とした。そして、僕を抱き締めた。
「それが結論か? 」
「僕には、そうでした。だから、僕も復帰します。」
「どうして、そう残念なんだろうねー俺のバニーちゃんは。こんなのと一緒がいいって・・・・どんだけ残念なんだか。」
「その発言は、僕に失礼です。」
「でも、残念なんだけど? 」
「僕は、また、あなたと一緒に働けることが嬉しくてたまりません。」
「わかったわかった。とりあえずコンビ復活でいい。」
ぽんぽんと僕の背中に回していた手で軽く叩いて、虎徹さんは笑っていた。何が、そんなにおかしいのか、僕にはわからなかったけど、抱き締めてくれる体温が、毎日あるのだと思ったら、僕も頬が緩んでいた。
「愛してます、虎徹さん。」
「どうして、そうなるかなあ。・・・・ほんと、残念。」
「僕には、あなたのおっしゃる意味が解りません。」
「そのうち、解るよ。バニーにもさ。・・・・俺は頑張ったつもりなんだけど、全部パアにしてくれた。」
「何か再就職に問題が? 能力のことなら、僕がフォローをします。」
「うん、それは頼む。あははは・・・・・もういいよ。」
何がいいのか解らなかったが、そのまま、ふたりしてシャワーを浴びるために移動して有耶無耶のうちに、話は流れてしまった。
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せっかく、狭い鳥篭から飛び出そうとしていたのに、なんで戻ってくるかなあ。おまえ、俺しか知らないって・・・・それで満足って・・・・ほんと残念だ。どうせなら人並みの幸せを手にすればいいのにさ。そのために、俺は身を切る想いで手を離したのに。
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虎徹さんはおかしそうに笑っていた。ベッドに沈んでからも、何度も、「残念だ。残念だ。」 を繰り返して僕にキスをした。いつか、あの「残念」の意味を理解したいと思う。でも、今は、僕の大切な人と一緒に働けることで幸せだ。
作品名:たいばに 兎虎 抱擁 作家名:篠義