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シャークさんにスカートをはかせたい遊馬くん

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「大丈夫だって。バレない」
絶対に逃がさない。遊馬はそういう目をしていた。
「なにを馬鹿なことを……」
シャークが遊馬の手を振りほどこうともがいているうちに鉄男と等々力が遊馬にかけよってきた。二人は面白いものを見つけた、とばかりにほくそ笑んでいる。
(もう駄目だ――明日からはまた登校拒否……)
シャークは嘲笑されるのを覚悟して目を固く閉じた。

「遊馬くん、トドのつまりその美少女はだれですか?」
「仲良く手なんかつなぎやがってよー遊馬も隅におけないな!」
(…こいつら本気でいってんのか…?)
てっきり見破られてしまうものだと思っていたシャークは目をまるくする。
鉄男にいたっては決闘で何回か顔を合わせているからすぐに自分がだれなのか気づくと思っていた。
「まさか遊馬にこんなに美人な彼女がいるとは思わなかったぜ。なんで教えてくれなかったんだよ」
鉄男は完全にシャークを遊馬の恋人だと思っている。
「うるせーなぁ。友達だよ」
彼女だと冗談でも言わなかったのは深く追求されることを避けるためである。
「じゃあなんで手つないでるんだよ」
「つないでるんじゃない、掴んでるんだ。こいつ逃げるから」
「?」
「僕の名前は等々力孝といいます。貴女のお名前は?」
等々力がシャークから名前を聞き出そうとする。等々力も突然現れた美少女に興味深々のようだ。
しかし、シャークは声を出すわけにはいかない。声を出せば即座に男であることがわかってしまう。シャークは無言で助けを求めるように遊馬に視線を送った。
「えっと…風邪ひいてて声出せないんだってよ」
「そうなんですか。それは失礼しました」
等々力はシャークに向かって軽く頭を下げて、質問をする対象を遊馬に切り替えた。
「それで名前は?どこの学校に通っているのですか?」
「なまえ、は……ええっと…りょうこ…?」
遊馬は即興で思いついた名を口にした。

瞬間、遊馬は後頭部に衝撃を感じた。遊馬が掴んでいない方の、シャークの手のこぶしがクリティカルヒットしたのである。弾みで手首を掴んでいた力が緩む。シャークはその隙に一目散に駆けていった。
「いってぇ~~!」
遊馬は頭を抱えて地面にしゃがみこんだ。
「遊馬、お前あのこに何かしたのか?」
鉄男は苦笑いを浮かべつつ手を差し出した。遊馬が礼を言いながら鉄男の手を借りて立ち上がる。
「オレ、あいつのこと追っかけなきゃ。鉄男、委員長、またな!――うおおおかっとビングだぜ、オレー!!」
シャークが逃げた方向に向かって走る。
行先はわかっている。遊馬は全力でシャークを追いかけた。


☆☆☆

「姉ちゃん、ただいまー!」
遊馬がリビングに行くと明里が夕食を並べているところだった。
「なんか手伝うことある?」
「ないわよー…ってあんた!口に口紅ついてる」
「え゛えっ!?」
明里に指摘されて、遊馬は慌てて手の甲で口を拭う。見ると、リップの色がついていた。
「……男の子ってノリでなんでもできるものだと思ってたけど、凌牙くんはそういうタイプに見えなかったな。遊馬、凌牙くんと本当に仲が良いのね」
「ハハハ……オレちょっと顔洗ってくる」
遊馬は柔らかい感触を思い出して顔を赤くした。