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すずき さや
すずき さや
novelistID. 2901
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花の名は

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 ほど、自分が読めなかった漢字を世良に見せる。世良は、目をぱちくりさせながら文字を眺めた。間違えたら笑われてしまうのか、と二人の顔を探るような目で世良は見る。
「ひゃくにちべに。じゃないっスよね」
「うん、違うよ」
 堺からあっさりと言われた世良はやっぱりと、沈んだ声を出した。
 続きは帰ったらやろうか、と堺から声をかけられると、世良は落ち込んでいた顔から明るい顔へ変化する。
「じゃあ、先に帰るよ」
 堺はそう言って立ち上がると、世良を伴ってロッカールームを出て行った。
 その背を見送りながら、丹波は堺の暇つぶしに付き合っていたつもりだったのだけど、と思った。
 幸せそうな恋人たちが去り、一人取り残されると、静けさにさみしくなった。誰かと一緒に過ごしたいな、と感じる。
 丹波は、仕方なくため息交じりに立ち上がると、のろのろと自分のバッグを担いで廊下へ出る。
「丹さん、今帰り?」
 背後から赤崎に声をかけられた。
「お前も帰りか?」
「そうっス」
 愛想のかけらもない赤崎がうなずくのを見て、ひとりがさみしい丹波は、俺の車に乗って帰るか、と誘う。
 赤崎はぶっきらぼうだが、どうも、と礼を言ったので嬉しくなった。
 駐車場に向かいながら赤崎へ百日紅とはどう書くか知っているか、と訊ねる。
「知らないし、興味ないっスね」
「じゃあ、紫陽花は?」
「どっちも興味ないっスよ」
 つまらなそうな顔をした赤崎から、花の名に興味はないとはっきり言われる。
 そうか、そうか、と丹波はうなずいた。普通の男はそんなものなのかな、と笑う。もしかすると赤崎は、花の話をする女が傍にいないのかもしれない。
 紫陽花の花言葉が浮気者ならば、百日紅の花言葉は何だろうか。帰ったら調べてみよう。そんなことを思った。
「てか、いきなり花の話とか気持ち悪い」
「お前こそ、花の話題も出せないようじゃ、女にもてないぞ」
「関係ないじゃん」
 てか、俺がモテないとか決めつけないでよ。王子と同じっスよ、と不機嫌になる赤崎を見て、可愛いと思った。
 恋に落ちるというのは簡単なことかもしれない。出会いは身近に転がっている予感がして、笑ってしまう。
 隣で赤崎は、笑ったりしてひどいと、一人怒っている。その顔も声も可愛いと感じた。
「そんなに怒るなよ、相棒」
「いつまで、それを言うっスか」
 赤崎が忘れてしまわないように、ずっとずっと言いたくなった。怒られても懲りずにずっと言いたい。
 良いじゃないか、減るものじゃないし。
 いたずら心が働いて赤崎の手を握ると、驚いていたけれど振りほどかなかった。ちょっといい感じだな、と丹波はますます嬉しくなる。もう一度。相棒、と呼ぶ。
 はいはい、とぶっきらぼうな返事が返ってきた。
【了】
*花言葉は「雄弁」「愛敬」「活動」「世話好き」だそうです。
作品名:花の名は 作家名:すずき さや