始まりの日
燃え盛る赤い焔の中で自分達の家だったものが崩れていく様を、一片たりとも見逃すまいとオレはひたすら凝視していた。
母さんの笑顔だけを記憶に刻み、優しい思い出は全てこの焔に焼き尽くしていく。
近くで幼馴染みが泣き崩れていた。
「もう後戻りできないな」
と隣に立つ弟に呟やきかけると、アルは「うん」とだけ答えた。
家を燃やすことを決めたのはオレの独断だ。
アルは反対しなかった。焼け落ちる家を前に泣き声になったりもしなかったけど、きっと今心の中で泣いている。
泣けない身体にオレがした。だからオレは決して泣いたりなどしてはいけない。
忘れないための儀式はもう済ませた。あいつのくれた銀時計に刻んだ文字が決意の証だ。
これから自分はあの男の元で生きていく。失ったものを取り戻すその日まで。
母さん、あなたを二度死なせて、あなたの思い出を全て消し去って行くオレをどうか許さないで。
罪はオレが一生背負うから。
弟の身体は必ずオレが取り戻すと誓うから。
取り戻せ、全てを。
忘れるな、あの日を。
Don´t forget 3.oct.11―
母さんの笑顔だけを記憶に刻み、優しい思い出は全てこの焔に焼き尽くしていく。
近くで幼馴染みが泣き崩れていた。
「もう後戻りできないな」
と隣に立つ弟に呟やきかけると、アルは「うん」とだけ答えた。
家を燃やすことを決めたのはオレの独断だ。
アルは反対しなかった。焼け落ちる家を前に泣き声になったりもしなかったけど、きっと今心の中で泣いている。
泣けない身体にオレがした。だからオレは決して泣いたりなどしてはいけない。
忘れないための儀式はもう済ませた。あいつのくれた銀時計に刻んだ文字が決意の証だ。
これから自分はあの男の元で生きていく。失ったものを取り戻すその日まで。
母さん、あなたを二度死なせて、あなたの思い出を全て消し去って行くオレをどうか許さないで。
罪はオレが一生背負うから。
弟の身体は必ずオレが取り戻すと誓うから。
取り戻せ、全てを。
忘れるな、あの日を。
Don´t forget 3.oct.11―