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甘ったれと甘やかしと隕石とストレス

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  光で、その場が焼き尽くされた。


      白い閃光。
            熱。
                  衝撃。
              


              ―――― そして、のみこまれる。




         ――――― ※ ※ ―――――





 いつものようにのんきな童顔男がふらりとやってきたのは、まだ良しとしよう。
 たとえそこがこちらの部隊のボス様の自室であろうと、この童顔はどの人間の自室にも、平然と何の予告もなく入り込んでくること多々なので、まあ、それもいい。
 そこに、たまたま仕事の確認でこの自分が居合わせたのは、本当に残念なことであったが、それもまあ、仕事場のようなもんだから、あきらめよう。
 
 が、 ―――――― 。
 
 なぜ、そこからこうなるのかが、やはり理解できなかった。
 


「―― はい。スクアーロ。本当に水でよかった?」
「・・おう・・」
「どうしたんだよ?」
「・・・どうしたって・・・」
「暑いんじゃないの?脱いだら?」
「暑くはねえ」
「うっそ!そんな真っ黒なロングコート着てて?」
「・・・てめえのそのまぬけな格好を真似る気にはなれねえからな」
「まぬけ!?Tシャツにハーフパンツの、この夏らしいチョイスのいったいどこがまぬけ!?」
「・・・おまえ・・。二の腕にブツブツ鳥肌たてて、よくそんなこと言えるなあ・・」
「う〜ん、まあ、たしかにちょっと、涼しいかなあ」
 あははは、とたてる笑いもどこか寒い。
「――涼しいどころじゃねえだろ」
「だってぇ・・・せっかくの夏休み気分を」
「夏は終わってる」
「・・・・・・」
「おれをにらんだってしかたねえだろお」
「あのさあ、現実はともかく、おれは『今』、夏休みなわけ。本当だったらあっつい気候の中で、この島で夏らしいことして過ごすはずだったんだよ。貸切だし、物資は搬送済みだし、たまにはコロネロとラルとスカルも誘ってやるかって、リボーンも珍しく素直に乗り気でさあ・・・」
「春に立てた計画なんだろおが。気が早すぎだあ」
 むっと押し黙った童顔は、遠くを眺め、果汁の入ったグラスをゆすった。
 
 確かに自分の黒ずくめは、この白い砂浜と、それを眺められる場所にわざわざつくられたプールとウッドデッキには不似合いだろう。
 そして、そのプールを持つ別荘は、正しくは貸切ではなくこの男の所有物の一つであるし、さらに言えば、この小さな島自体が、こいつの持ち物だ。
「―― おれのものじゃないよ。組織の財産だよ」
「おなじようなもんだろ」
「・・おたくのボスにも言われたけど、そんなふうに考えてないよ。・・・あ〜あ。せっかくみんなで『夏休み』に来ようと思ってたのになあ・・・」
 『みんな』というのは、おもに童顔のまわりのかわいげのない子どもたちで、『夏休み』というのは、奇跡的に皆のスケジュールに一定の空きがあったところだ。
 まあ、アルコのクソガキどもは、この童顔に合わせてどうにかそこに無理やり穴をあけたのだろうと、銀髪の男は童顔に釣られて海をみる。
「―― 秋休みだって、いいじゃねえかよ」
「・・・・・・」
 涼しい海風が海面をわたってゆくのが見えるようで、顔はそちらへむけたまま言ってみれば、童顔はゆっくりとこちらをむいた。
「・・・――そうだね。せっかくの休みなんだから、夏だって秋だって、いっか・・」
 その『夏の休み』とやらは、とある対立組織との、一筋縄ではいかないごたごたにより、いつの間にか予定期間を過ぎていた。
 あまりに長くじれったい、めんどうな流れになったのに、あのクソガキどもがよくも手をださなかったと、ほめてやってもいいと銀髪は思う。 さすがに、今回は、自分達が手をだせば、もっと面倒なことになるのをわきまえていたのだろう。
「―― ガキどもと、来ればよかったじゃねえか」
 ――― こんな、自分などではなく。
「ええ?だって、夏が終わったらまた忙しいって、みんな言うし・・」
「 ―――― 」そりゃ、てめえに合わせて空けた分の穴を埋めるためだろうとは、あえて口にしない。
 あれだけの力を持つガキを、どこだって放っておきはしないのだ。そのガキのほうから好んで寄ってくるのは、世界中でお前だけだろうとも、言わずにおく。
 傾きだした陽が、空を染めだしている。
 常夏の島というわけではない。今の季節は、この時間になればしっかりと気温も落ちてくる。 テーブルに置かれた二つのグラスには氷が入っているが、それが溶け出す気配もないまま飲み終えてしまう。

「――― ほんとうは、おまえ、・・あのクソボス、誘おうとしたんじゃねえのかあ?」

 思っていたことを、ようやく聞いてみた。
「・・・う〜ん・・・それが、自分でもよくわかんないんだよ・・」
 困ったような微笑みをむけられ、しばし観察。
 長いまつげにふちどられた大きな瞳が、夕日に照らされてこちらをとらえる。
「やあっと、どうにか例のごたごたも片付いて、休んでいいって言われてもさあ、チビたちはみーんなそろって既に仕事はじめてるし、・・・うちも本当はまだ後始末色々しなくちゃいけなくて、右腕君以下どころか、みーんな忙しくて、・・でも、おれに気をつかってくれて、休むように言ってくれたのを、むげにも断れないしさあ・・・。で、気付いたら、足がそっちにむかってた」
「だから、クソボ」
「ごめんね。そっちまで、巻き込んじゃってさ・・・」
「・・・・・・」 ――― さすがに、気付いてたか・・・。
「今まで散々冷やかしに来てた奴が来なくなったから、ようやく気付けたよ。迷惑かけてごめん。・・・あいつにも、ほんとうはちょっと謝ろうかと思ってたんだけど・・・」

 ――― てめえのケツもふけねえくせに、ダラダラ時間かけやがって。無駄につぎこんで消費した金と労力は、組織の資産で、てめえの為にあるもんじゃねえんだ。なさけねえツラさげてそこらへんに謝りまわるようなボスなんざ、誰も求めてねえ。さっさと、どこにでも行け。

 それはそれは、刃物よりも鋭く痛い言葉だった。
「・・・やっぱ・・・、組織の上に立つのは、あいつのほうが向いてるよ。・・・正しすぎて、何も言い返せなかったし、・・・謝ることもできなかった・・・」
「普段のおまえなら、あれぐらいには平気で言い返すだろうよ」
「はは・・・そっかもね。本当なら、謝って、ここに誘ってみようかなって、ちょっとは思ってたかもね。でも、さすがにちょっと反省してるから、あんなこと言われたら、誘えなかったよ。で、たまたまあそこにいたお前に眼がいって、こうして誘ってみたってわけ」
「たまたまで誘われて、その場で直属の上司に半笑いで『そりゃいい。てめえも行ってこい』って命令されたおれの意思はどこにある?」
「え?嫌だった?」
「あのなあ、てめえと違っておれは・・・ ――― まあ、もお、いい」
 あのとき、クソボスに罵られたときと同じ顔になっている童顔に、これ以上グチってもしかたがないだろう。
「・・・おれ、やっぱ、・・・甘いよね・・・」
 『なさけねえツラ』の男のそれは、質問ではなく、確認だった。