no one is here
夢から覚めた俺は廊下で波江と鉢合わせた。波江は会って早々酷いことを言う。そして完璧な読み。俺は波江が不思議な薬を開発して俺にどうしようもない夢を見させたのかと思ったが、そんなことをする意味がどこにもないのと、彼女の弟以外への無関心を知っていたので、すぐに考えを改めた。
「その通り。頭をトマトみたいに踏み潰されたよ」
「それはよかったわね」
波江はするりと俺の横を抜けた。洗面所に向かう前にリビングを覗くと、恐ろしいことに朝食の用意がしてある。スパゲッティーナポリタン。俺はその異常な普通に少し笑って、大人しく顔を洗うことにした。夢の中の自分を思い出そうとして、静ちゃんが言った台詞を何も思い出せないことに気が付いた。しょうがない、夢だから。
作品名:no one is here 作家名:すずきたなか