二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

【BSR】小ネタ【チカダテ】

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
どるん、と重い音を響かせて、一台のバイクが構内に滑り込んできた。
教職員と来客者の為の駐車場の脇に、許可を得た学生だけが使用できるバイク用の駐輪場がある。
政宗も認可を受けた学生の一人で、指定された場所に己のバイクを停めながら響いてくる重低音を拾い聞いていた。
ヘルメットを脱いでぺたりと寝ていた髪を起こすようにふるふると数回頭を振り、小さく吐息する。
その間にも、ど、ど、と余韻を引いてバイクが近付いてくる。エンジン音から、政宗の駆るバイクと同等クラスかそれ以上の排気量を持つ大型バイクだろう。バイク通学を始めて2カ月近くになるが、己の愛車の近くにクルーザータイプのバイクが停められているのを何度か見ていた。
なんとはなし、ほんの少し好奇心が勝って、政宗は手櫛で髪を整えながら排気音の響く方へと顔を向けた。
政宗のひとつきりの眸が追ったその先にあったのは、思っていた通りに見覚えのあるバイク。
そして、そのオーナーはと言うと…
がっしりとした大柄な男で、政宗の視線を受けて立ち止まっている。
あまりに不躾だったかと視線をそらそうとした政宗に、しかし男はニィと笑ってみせた。
その反応に思わず気を取られ、結局政宗は視線をそらせなくなってしまった。
と、
「よぉ、あんた!」
男はエンジンを切ったそれを押しながら人懐こく政宗に声を掛けて傍近くまで寄ってきた。
わずか警戒して眉根を寄せる政宗に、
「そいつ、あんたのバイク?」
男…この駐輪場を使っているのだから学生だろうその人物は喜色さえ浮かべている。
取り急ぎ通路にバイクを停め、ヘルメットを取ると、
「おれ、工学部の長曾我部元親ってンだけどさ」
そう名乗った。
押さえつけられていたのが窮屈だったと言わんばかりに、白銀の派手な髪が奔放に跳ねる。
政宗より頭ひとつは高い長身に派手な頭髪、それだけでも目を惹くというのに。
「……アンタ、」
政宗は元親の左目を覆う滅紫の布地に目を奪われた。
「ん?おう、揃いだな!」
無造作にハンドルにヘルメットを引っ掛けた元親が、変わらず楽しそうに笑いながら言った。
そして「ンな事よりも」と前置いて、
「いいバイクに乗ってんな」
と指定された位置に鎮座する政宗のバイクを指して言う。
気に入りのバイクを褒められて満更でもない政宗はやや得意気に愛車を一瞥して「まァな」と答えた。
「アンタこそ、」
言って、元親の傍らに停められたクルーザーバイクを見遣る。
要所要所をカスタマイズされたそれは陽光を浴びて誇らしげに光っている。オーナーの愛情が分かるというものだ。
「だろぉ?手ぇ掛かって仕方ねぇけど、そこがまた可愛くてよぉ……じゃなかった、」
デレるだけデレて、元親は我に返って緩んだ口元を引き結んだ。そして、
「あんた、新入生?だよな?」
「Ya…,それが?」
「じゃあよぉ、サークルとかもう決めちまった?」
見下ろしてくる隻眼が爛々と輝いていて、思わず気圧された政宗はやや面白くなさそうに柳眉を顰めた。
「Ah…コイツのローンがあるからバイト入れてるし、サークル入るつもりねぇンだけど」
傍らのバイクを指して言う。同じ大型バイクに乗っているならその価格がボディ同様に大型である事は分かるだろう。
とは言え、実際には頭金を出したのは政宗の父親で残ったローンも大した額ではないのだが、そこまで詳細に教える気も必要性もない。
「あー…いや、そんなマメな活動はしてねぇんだけど、」
微苦笑を浮かべて白銀の髪をかき混ぜて、
「月イチでツーリング、一緒に行かね?」
そいつで、と政宗のバイクを指した。他にも懇親会と称した飲み会を時々催す、いわばよろずサークルだと言う。
「ナンだったら今度のツーリング、お試しで一緒にどうよ?」
元親は背中に回していたボディバックから手探りでコンパクトサイズのガイドブックを取り出した。
使い古されたいるからか扱いが乱雑だからか、端々が擦り切れたそれを捲る元親に、
「Just a minute,つまりアンタはオレをそのツーリングサークルに誘ってんのか?」
政宗は確認するように問い質した。ガイドブックから顔を上げた元親がコクンと頷く。
「サークルっつっても会費はツーリングやら飲み会やらの実費だけだし、ゆる~い活動だし…」
「Sorry,さっきも言ったが、サークルに興味ねぇんだ。悪いな」
きっぱりと断って、政宗は校舎に向かった。否、向かおうとした。それを元親が咄嗟に引き留める。
「待て待て待て、じゃあ気が向いた時だけでも!ツーリング一緒に、な?」
いい遊び仲間を見付けたとでも思っているのだろうか、と政宗は苦笑した。
その反応に気を緩めた元親だったが、
「折角だが、ツーリングは親父と行くから間に合ってンだ」
ひらひらとグローブを嵌めたままの政宗の手が眼前で振られた。



*****

自己紹介しただけで政宗の名前さえ聞いてないウッカリ兄貴。
父ちゃんを理由にアッサリ断られるといい。