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【BSR】小ネタ【チカダテ】

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学内の駐輪場で出会ってから元親がしつこくサークルに勧誘し続けた結果、折れたのは政宗だった。
主宰である元親が勧誘当初から言っていた通り、確かに活動内容は緩い。ゆるゆるである。
飲み会があると連絡を受けて出向いてみても、サークルメンバーが全員揃った事は今まで一度もない。
寧ろサークルメンバーでない面子も混じっていて、政宗には未だに誰がメンバーなのか定かではないくらいだ。
ツーリングにしてみても、途中で合流してくる者や途中までしか同行しない者など様々で。
それでも、元親をはじめ気のいい連中ばかりが集まっていて、居心地はそう悪くない。
元から気質が似ていた所為もあるだろうが、いつしかサークル活動と関係なく、政宗と元親は行動を共にする事が多くなっていた。

「Hey,元親」
駐輪場で、愛車のバイクに跨り今にもセルを回そうとしていた元親は、呼ばれた声に制止して首を巡らせた。
「よぉ政宗。これから帰んのか?」
専攻する学部が違う為に、示し合わせて帰るのでもなければ偶然に出会う事はごく稀だ。
因みに、サークル勧誘に勤しんでいた頃は元親が待ち伏せ同然で毎日のようにこの駐輪場に足を運んでいた。
「Sorry,借りてたCD持ってくんの忘れたままだ…まさか今日会うとは思ってもなかった」
挨拶を交わし他愛ない話をしていると、ふと政宗が詫びを述べた。
「はっは、気にすんなって。別に急がねぇしよ」
ヘルメットをかぶり風避けのゴーグルを装着した政宗に、元親がグローブを嵌めた手を振って笑う。
「Hum…アンタ今日は何か予定あんのか?」
「今日?…は特にねぇな」
政宗がキーを差し込んで、ゆっくりと車体を通路に出す。
先に通路に愛車を停めていた元親は、政宗が後ろにつくのを待つようにキーに手を添えた。
「じゃあウチまで取りに来てくんね?礼に晩飯くらいご馳走するぜ」
厭味のように長い脚をひらりとあげて、政宗が愛車のシートを跨いだ。
当人は狙っている訳ではないだろうが、所作がいちいち目を惹く。
「おれは別に構わねぇが…あんた一人暮らしじゃなかったよな?」
「Yes,それが?」
重低音が駐輪場に響く。
「いや…家の人とか、急に押し掛けて迷惑じゃねえかと思ってよ」
「Ha!ほんっとアンタ見掛けによらねぇな」
「どういう意味だオイ」
「くく…褒めてンだよ」
小さく肩を震わせて忍び笑いを漏らす政宗に、
「そうかよ」
元親は拗ねたように口を尖らせて見せた。己より年長であるのに時折見せる子供染みた仕種が、政宗は嫌いではなかった。
「1人くらい食い扶持が増えたところで気にしねぇよ。アンタが嫌だってんなら話は別だが」
「いや、そっちが構わねぇンなら…あ、けどよぉ、コイツ停めるトコあんのかよ?」
当然だがちょっと軒先にというような可愛いシロモノではない。それに下手な場所に停めておいて傷を付けられるような事があっても困る。
「Ha!悪ぃがウチのガレージは広いぜ?」
小生意気に顎を持ち上げて言う政宗に、元親は微苦笑を浮かべて「じゃあ遠慮なく」と答えた。
「That settles it!(決まりだ)じゃあついて来な」
「応よ」
言って、元親は首にぶら下げていたゴーグルをぐいと持ち上げた。



大学を出てからしばらく幹線道路を流し、やや郊外に出たところで逸れる。何度か信号を曲がるに従って周囲の光景が変化してくる。やがて二台の大型バイクは重い音を響かせながら閑静な住宅街を縫うように走っていた。
ややして。
前を走っていた政宗がスピードを落とすのに元親も倣って速度を落とす。
ちらりと振り返りながら、政宗が背の高い木製の塀の前でバイクを停止させた。否、塀だと思ったそれはガレージの扉だった。
元親が茫然と眺める中、政宗がジャケットのポケットから取り出したリモコンを操作すると、わずかな機械音を伴って木製の扉が動き出した。
「こいつぁ…確かにでけぇな」
ヘルメットを脱ぎながらボソリと呟いた元親に、政宗は口の端を緩く持ち上げた。
ガレージの扉が開ききるまで、元親は所在無さげにちらちらと周囲に視線を巡らせる。
見れば辺りは品のいい屋敷がゆったりと配置された、いわゆる高級住宅街。ガレージに続く門扉は和風な構えで。立派な表札には味のある達筆な字で「伊達」とあった。
「Hey,元親」
呼ばれて、顔を前方に戻す。
バイクを仕舞っておく場所を示すように政宗が親指を立てた手でクイっとガレージを指した。
漆黒の車体を押しながらガレージに入る政宗に続くと、
「あれ、親父帰ってんのかな…」
そこに停められていた、ぴかぴかに磨き上げられた有名な高級車を見遣って政宗が呟くように言った。
そして、
「No way!ダビットさんが居ねぇ!…ンだよー、出掛けんなら教えろよなぁ」
不意に声を大きくする。
「…ま、まさむね?」
元親は声に驚いた…というだけでなく、その内容に、わずか頬を引き攣らせた。
「Ah-hum?」
「えと、誰?」
指定された場所にバイクを収め、グローブを外す。既にメットもゴーグルもグローブも取り払った政宗がガレージの奥の扉を潜ろうとするのを慌てて追いながら、元親が問い掛けた。
「誰って…親父?」
「じゃなくて、ナンとかさん」
「あ、」
扉の横にあったスイッチを政宗が操作すると、ガレージの木製の扉が再びゆっくりと動き出した。
「言ってなかったか…?」
隣に並んだ元親を見上げるように隻眼を向けてくるのに、無言で瞬きして答える。
そして寄越された言は…
「オレが小さい時に親父のバイクの事を『ダビットさん』だと思い込んでてよ。それからウチじゃあダビットさんて呼ぶんだよ」
思いもしなかった可愛らしい内容で。
「ぷっっ……ぐへっ」
うっかり吹き出した元親に、容赦のない肘鉄が即座に見舞われる事になった。
「……笑われるとナンかムカつく」
ぷいと顔を背けて前を行く政宗を、元親は脇腹を押さえ背をわずか丸めながら詫びを述べて追うのだった。



*****

バイクに乗らないので色々と嘘書いてるかもしれません、ごめんなさい。
シュッとした男子がハーレーの事を「ダビットさん」呼びしてると面白いよね、という妄想から広がったネタ。

ブログでちょろっと投下したネタを少し小咄っぽく肉付けしてみました。
妄想が留まらなければ…もしかしたらまた小ネタ投下あるかも。ないかも。



2011.10.5