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水底にて君を想う 細波【3】

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 聞きなれた声に、賢木は重い瞼をなんとかこじ開ける。
「賢木!」
 目の前に馴染んだ顔がある。
 こうやって見ると、やはり大人びてきてるんだな、と妙な感慨を覚える賢木。
「…なんで…」
 声が上手く出てこない。
 頭が痛い。
 どうやら、自分のベッドに寝ているようではあるが。
「心配して見に来てみれば、玄関は開いてるし、お前は床に倒れてるし」
 皆本は本当にお前は、と憤慨している様子だ。
 そういえば、鍵をかけた覚えが無い。
 賢木は上手く回らない頭でそんなことを考える。
「とにかく、これ」
 スポーツ飲料が口に突っ込まれる。
 頭には冷却シートが貼られてる。
「あ~わりい」
「謝るぐらいなら、もっと自分を大切にしろ。下手すれば死んでるぞ」
 小言がまだ続きそうな皆本に、もう一度悪い、と謝る。
 皆本はベッドに腰掛、賢木の髪を撫でる。
「……インフルエンザかも知れないな。明日、病院に行こう」
「一晩、寝りゃ、自分で治せるって」
「あのな。そんな状態で能力を使う馬鹿がいるか」
 賢木は皆本の言葉に笑う。
「賢木?」
「いや、何でも」
 呼び捨てにされる名前に安堵しながら、目を閉じた。
 すぐに訪れる闇。
 胸の奥で聞こえる細波が、確かに耳に届いた。