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「あー、もうごめんな、こんなところまで見送ってもらえて」
「いえ……と言うか、他の皆さんには言ってなかったんですか」
「え?」
 駅まで車をだして、オリエンタルタウンに戻る虎徹さんを見送る。そんな中でふと思ったことを声に出せば、虎徹さんは意外だ、といわんばかりの間抜けな声を上げた。
「いや、他の方々ですよ、早朝とは言え、見送りにくるのかと思っていたんですが、どうやら違うんですか?」
 他のヒーロー達も来るのかと思っていたのに、と小さく吐き出せば、虎徹さんは小さく息を吐き出して空を見つめる。
「あー……だって、なんか淋しくなるじゃねーか、一先ずお別れだーみたいな?湿っぽいのは何か嫌なんだよ」
 どこか消え入るような声で決まりが悪そうにそう声を上げるのは虎徹さんだ。
「なのに、僕は巻き込んだ、と」
「なんだよ、そんな顔すんなよ!」
 言われながら、僕は自分の顔が妙に歪んでるんだろうな、と思いつつ他の人とはしんみりしたくないのにと言う彼は僕とだったら良いんですか?なんて呆れたように声を上げば、返ってくる声は相変わらずの笑い声だった。
 早朝のプラットフォームは行き先がオリエンタルタウンなんて田舎行きなのだから、周りには人らしい人も見当たらない。響くのは虎徹さんの笑い声だけだ。
「お前だったら、悲しい顔せずにわらって、またって見送ってくれる気がしたの!アントニオとかあの辺りの年長組みに関しては湿っぽい事やらねーだろうなって思ってたけど、年少組とかさ、なんか淋しいって泣かれたら嫌じゃん……」
 うーと口を尖らせる虎徹さんに僕は肩を竦めると、呆れた、と声を上げた。
「誰か、泣くとでも?」
「もしもの、話!」
「たかだかオジサンの引退で、泣くなんて人居ませんよ、きっと」
 何故か、声が震えてるのを自覚しながらそう声を吐き出せば、虎徹さんが手に持つボストンバックをコンクリートの地面に置いて、バニーと僕の事を呼んだ。
 手を引かれて、ぎゅう、と抱きしめられる。
「なぁに、お前が泣きそうな顔をしてるんだか」
 ぽんぽん、と背中を擦られながら虎徹さんの肩に頭をぐりぐりと押し付ければ、痛い!と悲鳴が上がった。それから顔を両手で固定されると、じっと見つめられた。
「バニーちゃんは大人でしょ!……それに会いたくなったら来いって言っただろ?」
「です、ね」
頭を固定させられながらも僕が頷けば、難しく色々は考えるなよ、と笑う。
「大体、携帯だって番号変えるのめんどくせーし、そのままにしてるからさ、まぁ、なんだ。困ったこととか悩みとかあったら、適当に電話掛けて来いよ」
「……正直、貴方に悩みを相談したところで、マトモに回答が得られる気がしないのは気のせいですかね……」
「まぁ、それはそれ、だ」
 人の居ないプラットフォームで、僕らの笑いが響いた。
 ジリジリジリジリとベルが鳴ったのはその後だ。
「お、そろそろ電車が出るみたいだなぁ……、本当にバニーには何から何までお世話になりましたー」
「まぁ、楽しかったです。今度何か有るときはゲストルームのある様な部屋に引っ越そうかと思います」
「え、何それ」
「雑魚寝も悪くなかったですけど、客と一緒にあんな風に寝るなんての虎徹さん以外にしたら失礼に当たりそうです」
 くす、と笑いつつ虎徹さんを見れば、そうだなーと声が上がった。
「まぁ、俺がお前に無茶苦茶言ったのは否定しない!」
「その通りですね」
 お互いにもう一度顔を見合わせて僕らは笑う。
 足元に置いていた鞄を虎徹さんは掴むと、まあ、お世話になったよと笑い僕を見つめた。
 ジリジリジリとまたベルが鳴り響いた。今度こそ出発の合図だ、と思うと、ほら虎徹さんと僕は声を上げる。
「時間ですよ、乗り遅れたら間抜けですよ。ここからの到着時間は向こうの家族に伝えてるんでしょう?乗り遅れて定刻に着かないなんて事して、楓ちゃん泣かせちゃ駄目ですよ?」
「あー泣くかな、どっちかってっと、呆れられるかも」
 言いつつ、顔を歪めた虎徹さんの表情を見ていた僕は衝動的にその腕を掴んだ。くにゃり、とハの字になった眉が異常なまでに切なく見えた。気が付けば、虎徹さんと僕の顔との距離はゼロ位置にあった。
 え、と驚いた虎徹さんの声が数度聞こえて、今度は僕は警告音の様にジリジリジリと響くベルの音を聞きつつ、虎徹さんの胸をぽん、と押しやる。
《閉まるドアに、ご注意ください。オリエンタルランド行き、出発します》
 虎徹さんの足がもつれる様に荷物を掴んだまま、後ろに下がると、どすんと電車の入り口に彼は尻餅をついた。
 そのまま、電車の扉が僕と虎徹さんを隔てる様に閉まった。
 ガタン、ゴトンと揺れだした目の前の車両が動き出して、僕は思わずプラットフォームに座り込むと、思わず頭を抱えてしまった。
 バーナビー・ブルックスJr.お前は一体虎徹さんに今、何をしたか覚えてるか?
 自問のその声を脳裏で響かせながら、僕が付いたのはため息だけでしかなかった。
作品名:Average value is a top! 作家名:いちき