こらぼでほすと 拉致9
三日まで、寺での栄養補給を担当していた沙・猪夫夫は、のんびりと午睡していた。四日から引き篭もっている。緊急連絡には応じるが、それ以外はスルーだ。だから、携帯端末がチカチカと光っていようと放置されている。
「どうせ、遊びの誘いだろ? 」
「まあ、そんなとこでしょうね。」
ファーと欠伸して八戒が寝返りをうつ。とはいっても、亭主の腕の中だ。三日の夜から、時間制限なしな姫初めなんてものに突入していたので、どちらも全裸に近い状態のままでベッドに転がっている。
「悟浄、フェルトちゃんと顔を合わせてませんけど、いいんですか? 」
「あ、そうか。ちっとばかり顔は見ておきたいな。」
桃色子猫の次の降下予定は未定だ。下手をすると、これから数年逢えないなんていう事態になる。それはそれで寂しいから、悟浄も携帯端末を開いた。案の定、キラからの明日の誘いで、どうやら貸切で屋形船で遊覧するらしい。そういうことなら、ちょいと顔を出すとするか、と、返事をする。午後からなら、ちょうどいい。そろそろ起床時間を元に戻さないと、仕事に遅刻してしまう。いろいろと無制限でいたしていたので 昼夜の時間感覚が、かなりおかしくなっている。
「川下りか・・・まあ、そこなら護衛もしやすいわな。」
「そうですね。」
「けどよ、十日も休暇があって夫夫水入らずが二日って少なくねぇーか? 」
「しょうがありませんよ。寺のほうの補給もしなくちゃいけませんでしたしね。三蔵だけ放置したら、何にもしないでしょ? 」
悟空が本宅へでも出かけてくれるなら、八戒も気にしないが、そうでないと、正月から侘しい食生活になってしまう。寺の女房が、いろいろと冷凍保存はしてくれているが、それだけだと、やはりしょぼい食事になる。それに、それらを準備するのは悟空の仕事だから、やっぱり気になって寺に滞在した。
「三蔵単品だと、白メシにマヨネーズだろうな。あいつ、あんな味音痴のくせして・・・ニールに注文つけてんのは、意味があんのかね? 」
「単なる甘えでしょ? さて、そろそろ食事しますか? 」
「そういや空腹かも? 別の飢えは解消したんだけどさ。」
「あれだけやって餓えてるっておっしゃったら、僕は呆れますよ? 悟浄。」
「溜まってたんだぜ? 年末年始は寺へ滞在してたからさ。独占欲は解消してないんですけどね? 女王様。」
「そういうもんですか? 毎日、独占してるくせに。」
「夫夫水入らずになるのが難しいだろ? そこんとこ問題なんだわ。どっかの元帥は見透かしたように四日に連絡してくるし、どっかの大明神は五日にメールだ。誰とも接触しないで、ふたりっきりっていう状態にはならんのですが? 」
引き篭もったところで、どこからか何かしらの連絡は入る。だから、独占できていないと、宿六は言うのだが、それもどうなんだ? と、女房のほうは苦笑する。
「寺よりマシでしょ? あそこで水入らずは皆無なんだから。」
「そりゃそうだけどさ。うちは水入らずがないとダメな夫夫なんだ。」
「あははは・・・どこの我侭小僧ですか? 悟浄。」
ニヤリと女房は亭主に向き直って、足を絡める。きわどいところへ太ももを摺りつけるサービス付きだ。
「・・こういうこと・・・僕にさせられるのは、あなただけなんですけど? 」
「おや、我侭も言ってみるもんだな。誘ってくださるわけですか? 」
「足りないなら、どうぞ? その代わり、この後の食事は悟浄が作ってくださいね。」
「もちろんでございますとも、女王様。」
明日の午後まで、たっぷりと時間はある。空腹は感じているのだが、それよりも満たしたい欲があれば、そんなものは忘れてしまえる。絡められた足を擦り、亭主が体を入れ替える。
「天蓬のやつ、きっちり春節祭の時に電話してやるぞ。」
あちらの正月は旧暦なので一ヶ月後になる。だから、年明けの挨拶と称して電話してきたのは、単なる姫初めへの妨害だから、やり返すつもりだ。
「まあ、暇なんでしょう。金蝉だって、悟空に連絡してきたじゃないですか。」
あちらの元悟空の保護者たちは、なんだかんだと理由をつけて連絡してくる。年始の挨拶なんてものは、その良い言い訳だ。神仙界は、今のところ平穏だから、暇になれば、そういうことに意識が向くのは仕方ない。だからって、妨害工作されて泣き寝入りなんてものはない。
「久しぶりの無制限だったってーのに、萎えるっつーんだ。」
「まあまあ、やり返すんでしょ? 僕は時間を変えて捲簾さんに電話します。二度の妨害になりますから、あちらも萎えてくださるでしょう。ははははは。」
「倍返ししても懲りないんだろーけどなあ。」
長いこと夫夫をやっている方たちなので、それぐらいでは懲りてくれないだろうが、一種のスキンシップみたいなものだから、やり返すことに八戒も反対はしない。そんなことができるくらい、あちらは平和だということだから、喜ばしいと言えば、喜ばしい。こちらは、これから、子猫たちの組織が再始動するから忙しくなるのだが、まあ、それも悟浄たちには、あまり関係はない。ただ、知り合いの安否は心に留めておくことになる。
「僕のほうはいいですから。」
「おや? 起ちません? 女王様。」
「・・・・もう無理です。」
「まあ、そのまんまでもいいっちゃーいいか。行くぞ? 」
「はいはい。」
沙・猪家夫夫も、付き合いは長くなったから、愛の言葉とか囁く台詞なんてものも省略されてしまう。それでも、この充足する感覚は安堵するものだから、やりすぎるぐらいにやってしまうものらしい。
「・・・やっぱ、いい・・締めてくれ。」
「・・はっはいはい・・こうですか?・・」
「それそれ・・じゃあ、お・か・え・し。」
「・・ちょっっ・・いっいきなり・・」
ギシギシとベッドが軋む音がする。少し煽ると、どちらも動きを止めて舌を絡めあう。そんなふうに、一日だらだらと戯れているのが、沙・猪家夫夫の正月休暇だ。
翌日、トダカ家に年始の挨拶に出向くと、シンとトダカが出迎えた。どうやら、トダカーズラブは通常営業に戻っているらしい。全員で挨拶を交わすと、居間に入る。
「午後から屋形船で川下りですけど、トダカさんも参加されます? 」
「いや、私は遠慮させてもらうよ。どうせ、きみも寺へ帰るんだろ? 娘さん。」
「ええ、昼寝しないと、うちのが五月蝿いので。」
「うるせーはひどくね? ママ。」
「五月蝿いじゃねぇーだろ。ちゃんとクスリ飲んで昼寝すんのが、ねーさんの仕事だろ? だいたい、すっぽかすってのが悪いってーんだよ。」
「そうですよ、ママ。なんなら、俺は監視に戻りますよ? 」
となりに座っている悟空が、まずニールの背中を軽く叩く。さらにお茶を入れてきたシンとレイが、ニールの言葉にツッコミだ。焼いてきたクッキーやらケーキを用意しているフェルトも、こくこくと頷いているし、刹那は、ニールのとなりで腕を捕まえて睨んでいる。
「監視は、私がしておくから、きみたちは出かけなさい。三蔵さんに年始の挨拶もしておかないといけないから、寺へ行くつもりだ。」
「どうせ、遊びの誘いだろ? 」
「まあ、そんなとこでしょうね。」
ファーと欠伸して八戒が寝返りをうつ。とはいっても、亭主の腕の中だ。三日の夜から、時間制限なしな姫初めなんてものに突入していたので、どちらも全裸に近い状態のままでベッドに転がっている。
「悟浄、フェルトちゃんと顔を合わせてませんけど、いいんですか? 」
「あ、そうか。ちっとばかり顔は見ておきたいな。」
桃色子猫の次の降下予定は未定だ。下手をすると、これから数年逢えないなんていう事態になる。それはそれで寂しいから、悟浄も携帯端末を開いた。案の定、キラからの明日の誘いで、どうやら貸切で屋形船で遊覧するらしい。そういうことなら、ちょいと顔を出すとするか、と、返事をする。午後からなら、ちょうどいい。そろそろ起床時間を元に戻さないと、仕事に遅刻してしまう。いろいろと無制限でいたしていたので 昼夜の時間感覚が、かなりおかしくなっている。
「川下りか・・・まあ、そこなら護衛もしやすいわな。」
「そうですね。」
「けどよ、十日も休暇があって夫夫水入らずが二日って少なくねぇーか? 」
「しょうがありませんよ。寺のほうの補給もしなくちゃいけませんでしたしね。三蔵だけ放置したら、何にもしないでしょ? 」
悟空が本宅へでも出かけてくれるなら、八戒も気にしないが、そうでないと、正月から侘しい食生活になってしまう。寺の女房が、いろいろと冷凍保存はしてくれているが、それだけだと、やはりしょぼい食事になる。それに、それらを準備するのは悟空の仕事だから、やっぱり気になって寺に滞在した。
「三蔵単品だと、白メシにマヨネーズだろうな。あいつ、あんな味音痴のくせして・・・ニールに注文つけてんのは、意味があんのかね? 」
「単なる甘えでしょ? さて、そろそろ食事しますか? 」
「そういや空腹かも? 別の飢えは解消したんだけどさ。」
「あれだけやって餓えてるっておっしゃったら、僕は呆れますよ? 悟浄。」
「溜まってたんだぜ? 年末年始は寺へ滞在してたからさ。独占欲は解消してないんですけどね? 女王様。」
「そういうもんですか? 毎日、独占してるくせに。」
「夫夫水入らずになるのが難しいだろ? そこんとこ問題なんだわ。どっかの元帥は見透かしたように四日に連絡してくるし、どっかの大明神は五日にメールだ。誰とも接触しないで、ふたりっきりっていう状態にはならんのですが? 」
引き篭もったところで、どこからか何かしらの連絡は入る。だから、独占できていないと、宿六は言うのだが、それもどうなんだ? と、女房のほうは苦笑する。
「寺よりマシでしょ? あそこで水入らずは皆無なんだから。」
「そりゃそうだけどさ。うちは水入らずがないとダメな夫夫なんだ。」
「あははは・・・どこの我侭小僧ですか? 悟浄。」
ニヤリと女房は亭主に向き直って、足を絡める。きわどいところへ太ももを摺りつけるサービス付きだ。
「・・こういうこと・・・僕にさせられるのは、あなただけなんですけど? 」
「おや、我侭も言ってみるもんだな。誘ってくださるわけですか? 」
「足りないなら、どうぞ? その代わり、この後の食事は悟浄が作ってくださいね。」
「もちろんでございますとも、女王様。」
明日の午後まで、たっぷりと時間はある。空腹は感じているのだが、それよりも満たしたい欲があれば、そんなものは忘れてしまえる。絡められた足を擦り、亭主が体を入れ替える。
「天蓬のやつ、きっちり春節祭の時に電話してやるぞ。」
あちらの正月は旧暦なので一ヶ月後になる。だから、年明けの挨拶と称して電話してきたのは、単なる姫初めへの妨害だから、やり返すつもりだ。
「まあ、暇なんでしょう。金蝉だって、悟空に連絡してきたじゃないですか。」
あちらの元悟空の保護者たちは、なんだかんだと理由をつけて連絡してくる。年始の挨拶なんてものは、その良い言い訳だ。神仙界は、今のところ平穏だから、暇になれば、そういうことに意識が向くのは仕方ない。だからって、妨害工作されて泣き寝入りなんてものはない。
「久しぶりの無制限だったってーのに、萎えるっつーんだ。」
「まあまあ、やり返すんでしょ? 僕は時間を変えて捲簾さんに電話します。二度の妨害になりますから、あちらも萎えてくださるでしょう。ははははは。」
「倍返ししても懲りないんだろーけどなあ。」
長いこと夫夫をやっている方たちなので、それぐらいでは懲りてくれないだろうが、一種のスキンシップみたいなものだから、やり返すことに八戒も反対はしない。そんなことができるくらい、あちらは平和だということだから、喜ばしいと言えば、喜ばしい。こちらは、これから、子猫たちの組織が再始動するから忙しくなるのだが、まあ、それも悟浄たちには、あまり関係はない。ただ、知り合いの安否は心に留めておくことになる。
「僕のほうはいいですから。」
「おや? 起ちません? 女王様。」
「・・・・もう無理です。」
「まあ、そのまんまでもいいっちゃーいいか。行くぞ? 」
「はいはい。」
沙・猪家夫夫も、付き合いは長くなったから、愛の言葉とか囁く台詞なんてものも省略されてしまう。それでも、この充足する感覚は安堵するものだから、やりすぎるぐらいにやってしまうものらしい。
「・・・やっぱ、いい・・締めてくれ。」
「・・はっはいはい・・こうですか?・・」
「それそれ・・じゃあ、お・か・え・し。」
「・・ちょっっ・・いっいきなり・・」
ギシギシとベッドが軋む音がする。少し煽ると、どちらも動きを止めて舌を絡めあう。そんなふうに、一日だらだらと戯れているのが、沙・猪家夫夫の正月休暇だ。
翌日、トダカ家に年始の挨拶に出向くと、シンとトダカが出迎えた。どうやら、トダカーズラブは通常営業に戻っているらしい。全員で挨拶を交わすと、居間に入る。
「午後から屋形船で川下りですけど、トダカさんも参加されます? 」
「いや、私は遠慮させてもらうよ。どうせ、きみも寺へ帰るんだろ? 娘さん。」
「ええ、昼寝しないと、うちのが五月蝿いので。」
「うるせーはひどくね? ママ。」
「五月蝿いじゃねぇーだろ。ちゃんとクスリ飲んで昼寝すんのが、ねーさんの仕事だろ? だいたい、すっぽかすってのが悪いってーんだよ。」
「そうですよ、ママ。なんなら、俺は監視に戻りますよ? 」
となりに座っている悟空が、まずニールの背中を軽く叩く。さらにお茶を入れてきたシンとレイが、ニールの言葉にツッコミだ。焼いてきたクッキーやらケーキを用意しているフェルトも、こくこくと頷いているし、刹那は、ニールのとなりで腕を捕まえて睨んでいる。
「監視は、私がしておくから、きみたちは出かけなさい。三蔵さんに年始の挨拶もしておかないといけないから、寺へ行くつもりだ。」
作品名:こらぼでほすと 拉致9 作家名:篠義