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こらぼでほすと 拉致9

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 トダカも、ひとりだと暇なので寺へ挨拶がてら顔を出すつもりをしていた。掃除も洗濯もトダカーズラブが完璧にしていったので、することがない。各親衛隊との折衝も、この時期はしないから、のんびりしているだけだ。
「どうせ、おまえら、寺へ戻って来るんだろ? 」
「そりゃ戻るさ。フェルトは明日の朝には帰るんだし、せっかくだから騒がないとさ。」
 シンとしては、フェルトが退屈しないようにしてやりたい。これから、いつ帰って来られるのかわからない状況だから、休みぐらいは、パッと騒いで楽しい思い出にしてやりたいと思っていたからだ。そう思っていたのに昨日は、トダカ家のほうで二日酔いでダウンしてしまったから、俄然張り切っている。
「でも、今夜は早めに切り上げて、トダカ家に戻ります。明日、見送りのアッシーはしますから、勝手に出かけないでくださいね、ママ。」
 ただし、親猫ともゆっくりしたいだろうから、今日は早めに寺から退散するつもりだ。キラや歌姫も、そのつもりで連絡が廻っていた。
「ああ、刹那君、きみ、明日は店のほうの手伝いを頼むよ? 」
「了解した。」
「フェルトちゃんにも見せてあげたかったんだが・・・来年のお楽しみにしておいで。きみのママも着物を着るんだよ。」
 一日引き伸ばせば、店の初出勤に連れ出せるのだが、フェルトの予定はタイトなスケジュールで、どうしても引き伸ばせなかった。超加速したフリーダムで真夜中に、アフリカンタワーまで送れば、どうにか間に合うという状態では、さすがに残れ、とは言いがたい。
「うん、次の楽しみにする。・・・トダカさん、これ、あたしがラクスに教えてもらって作ったの。」
 お年玉を貰ったので、そのお礼も兼ねて、フェルトはお菓子を作った。それを差し出すと、トダカも愛想が崩れた。
「ほおう、フェルトちゃんのお手製か。それはそれは。じぃじは嬉しいよ。いただきます。」
 パリッとクッキーを噛んで、もぐもぐと飲み込む。おいしいねーと笑顔で、フェルトに頷くと、桃色子猫も顔を明るくする。
「うおーフェルト、上手いな。」
 シンもケーキをひと齧りして笑う。まあ、手伝っているのが、家事万能なアスランとラクスだから、味は問題ない。ニールが昼寝から起きる頃には、ほぼ出来上がっていた手際の良さだ。
「女の子は、こういうことをしてくれるんだな。」
「とーさん、俺だってカレーとか作ってんじゃんか。」
「ああ、シンやレイの料理もおいしいけど、お菓子っていうのはないだろ? 」
「シン、料理するの? 」
「たまにな。カレーとかチャーハンぐらいだけど。あ、昼飯は、俺がチャーハンしてやるよ、フェルト。結構、美味いんだぜ? 」
「ダメだ、シン。昼は屋形船だ。」
「じゃあ、夜。」
「夜は鍋の予定なんだが? シン。」
「いいじゃんっっ、ちょこっとチャーハンがあってもっっ。ご飯とタマゴと明太子を用意しといてくれ、ねーさん。俺がめっちゃ美味いの作るから。」
「じゃあ、メシの時は飲むなよ? 」
「了解っっ。フェルト、俺が作るの見とけ。あれなら簡単だから、あっちに戻ってもできるからさ。」
「うん。」
 もぐもぐとケーキを消費しつつ、シンが声を張り上げる。『吉祥富貴』の年少組は桃色子猫が可愛くて仕方がない。悟空も、なんだかんだと構っているし、ラクスは言わずもがなな猫可愛がり状態だ。
「シンのチャーハンは、出来不出来があるから、まず、じぃじが味見をしよう。」
「とーさん、それ、ひどいぞっっ。」
「けど、シン。たまに失敗すると、すごく辛いじゃないか。」
「大丈夫、そういうのは悟空に食わせる。こいつなら、なんでもござれだ。」
「おまえもひどいぞ、シン。俺だって辛すぎたらイヤだかんな。」
 わーわーと話は盛り上がる。それを横目にしてニールは立ち上がる。とりあえず、トダカ家のチェックをするつもりだ。
「完璧だよ? 娘さん。」
「まーまー、トダカさん。俺も性分なんで。」
 どこか汚れていたりしないか、一通りチェックしないと、ニールは落ち着かない。そういう性格だから、トダカも止めない。パタパタと扉を開閉する音がするのに苦笑する。
「きみのママは、世話好きだからね。里に帰った時ぐらい、ゆっくりすればいいのに。」
「ニールは止まると死ぬんだって、ハレルヤが言ってた。」
 以前、組織でもニールは、パタパタと動き回っていた。それを評して、ハレルヤは、そう言っていたので、フェルトも笑う。
「それ、わかるなあ。寺でも、なんか動いてんだよな。でも、大丈夫だからな、フェルト。適当に俺らが休ませてるから。」
「うん、悟空、お願いね。」
 寺でも何かと動いているが、そこは適度に、悟空が止めている。年少組も、親猫が動くより先に動くようにしている。ある意味、いい教育ではあるだろう。ニールの先を制するのだから機転が利くようになる。
作品名:こらぼでほすと 拉致9 作家名:篠義