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隣に聞いてみる

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まるでむすっと拗ねたような表情のイギリスに、今度はフランスが動揺を隠せずに困惑した表情を浮かべた。言っていいのか思わず迷ってそのままきゅっと口を結んでしまう。そうなっては今度は口を開くきっかけもなくなって黙ったまま。

「…………。」

「…………。」

もちろん一度聞いた方のイギリスも、相手が答えるものだとばかり思っているのだからそれ以上聞いてこない。静けさが部屋を支配して、時計の針がカチカチと小さく音を鳴らす。
どのくらいたっただろう、多分時間にしては数分ぐらいしか経っていないが、二人には長く感じた。結局どちらも相手から視線を外そうとしない。

「…………。」

「…………。」

「……おい、なんだって言うんだよ。さっさと話せバカっ。」

先に痺れを切らしたのはイギリスの方だった。目を細めてキっと相手を睨みつけ、いらついたように棘のある口調で威嚇している。フランスはやっと彼の言葉ではっとし、目を瞬いて小さく頷く。

「あ、ごめん。えっと……。」

言おうと思った。口を開いた。声を出したと思った。口は動いた。でも、フランスの口からは一切声が出て行きはしなかった。舌と喉がカラカラに渇いていく。
一度口を閉じると、フランスはごくりと生唾を飲み込んで喉を鳴らした。緊張してる。妙に冷や汗が出て何度も瞬きをしてしまう。緊張が伝わったのだろう、イギリスも肩を引き上げて硬くなり緊張しているようだ。それでも彼は、フランスからの言葉を口を挟まずに待ってくれた。よほどフランスがいつもと違うことにイギリスも気づいているに違いない。

「……ねぇ、好き?」

「…………はぁ?」

やっと出た言葉。フランスは『俺のことを』とは言わない。それは来た時から決めてたことだし、来たメールにもそう書いてあったからだ。
そして、イギリスの反応は返答だけ言うならばフランスが想像していた通りだった。けれど、フランスが聞いた途端にイギリスは目に見える程頬を高潮させ、真っ赤になっていたのだ。これには逆にフランスが目を白黒させてしまう。
しばらく赤く染まった顔を可愛いなぁとか眺めてたフランスだが、どうして相手が赤くなったのか、その真意にようやっと気が付いた。自分が言わなかった言葉を、どうやら相手は汲み取ってくれたらしい。
思わずフランスの頬が緩んだ。それにイギリスの顔が更に赤くなっていく。

「あっれー?何好きかとか聞いてないんだけど?」

緊張が崩れて、既に相手をからかう口調でによによ顔を浮かべるフランス。イギリスの顔が耳まで真っ赤に染まりあがった。羞恥と怒りが見てとれる。
あ、怒ったとフランスもすぐ様理解する。だから拳が来る前にもう一度口を開いた。

「イギリス、俺のこと……好き?ちゃんと答えて?」

フランスが緩やかに笑って再び問いかけると、イギリスは握っていた拳の動きを止めてうっと言葉を詰まらせた。揺らぐ視線に、染まった頬。そのまま固まって目の前の相手を凝視している姿をフランスは嬉しそうに見守っている。
それが如何せん気に食わない。のだろう、すぐにイギリスの額に皺が寄った。むすっと口をへの字にして嫌でも答えない気になったらしい。ぷいっとそっぽを向いてしまった。

「ぼーっちゃん、答えてくれないの?」

むくれたままテーブルの方へと顔を戻し、紅茶のポットに手を掛けようとする相手に、フランスはあっれー?と首を傾げてわざと声をかけてみる。声に反応するようにイギリスはちらりとフランスを見た。が、すぐに視線をポットに戻し、紅茶を入れ始めてしまう。
フランスはポットに手をかける相手の手へと自分の手を重ねた。自分よりも暖かい体温に思わずぎょっとしてイギリスは肩を引き上げて驚いてからフランスを見る。
目の見開きぐらいから何やってんだ、お前。という声が聞こえてきそうだ。けれど、フランスは気にした風もなく隣に座る相手へと身体を寄せて距離を詰める。
イギリスは警戒したのかびくりと身を強張らせると若干ソファの上で距離を置こうとする。しかし、広くはないソファである、大した距離にはならず結局フランスに詰められてしまう。

「んだよっ、来んなっ。」

逃げるに逃げれない状態に、イギリスは制するように睨みつけながら声を発した。拒絶の言葉を吐く相手に、フランスはにっこりと形容できそうな笑みを浮かべる。逆に嫌な予感がするイギリスは物凄く眉間に皺を寄せた。

「じゃあ、答えてよ。好き?」

結局再度出てくる質問に、イギリスはギリっと歯噛みして相手に捕らえられたポットを持つ手が震える。もう一度睨みつけてみるも、妥協したり、逃してくれるわけではない相手の視線に、深々と息を吐き自身を落ち着ける。
きゅっと口元を結び、眉根に皺を寄せながらも、イギリスはフランスへしっかり視線を向けて口を開いた。

「…………聞かなくても分かってんだろ、ばか。」

ごく小さく唸るように声が発せられた。それは言葉の中に肯定も否定も含まれていないものだった。だが、恥ずかしそうにすぐにイギリスが視線を外してしまえば話は別、フランスの頬は誰がどう見てもわかるほどに緩みきっていた。
ちらりと横目で彼の表情を視界に入れてしまったイギリスは更に顔を真っ赤にしてしまう。見るんじゃなかったと再び視線を外せば、耳元に暖かい風が当たった。

「――――。」

小さく囁かれた言葉にイギリスは思わず飛びのいた、肩が跳ねるかのように揺れる。驚いた表情で相手へと向き直り何か言おうと口を開く。けれどそれはすぐに暖かい感触で塞がれてしまった。
目を白黒しているうちに唇に何度も暖かい相手のそれが当たってくる。イギリスの頭は勝手にフランスが耳打ちしたことを繰り返し唱えていた。『言ってくれないなら、言わせてあげる。』勝手を言うなと思う、が、フランスが徐々に体重をかけてくる。これは確実にやばい。そうやって頭が信号を出しているのに、身体は動かない。正直涙が出そうだとイギリスは思った。
が、泣いている場合ではない。なんとかフランスを引き離そうと動かない腕に動けと命令を下す。

「っ……言うから離れろ、このバカっ!!」

イギリスの腕がなんとか動き、顔と顔の隙間が出来て息をつきながら必死にフランスに訴えた。もう少しで倒れるくらい押されてはイギリスも黙ってはいられない、動く手をぐいぐい押してフランスに離れとと示している。
フランスは少し状態を起こして、少し不満げに口を尖らせながら彼から身体を離した。そして、彼の緑色の瞳を覗き込む。

「俺のこと……好き?」

再びの問いに、やはりイギリスは絶句する。何か言おうと口を開いてもすぐにまたそれは閉じる。けれど、真正面から海色の深い瞳で見つめられては、正常心を保つこともできず、下唇を噛み締めた。そして、一旦長い睫を瞬かせて目を伏せる。

「…………~っ……すき……。」

目が合わさったと思えば、フランスの耳に掻き消えるような小さな声が入って来て、胸の中に暖かい何かがこみ上げてくる。思わずフランスは感情のままに、目の前にいる恋人へと抱きついた。
作品名:隣に聞いてみる 作家名:イラル